乾燥時の、作品の「ひび」「割れ」に付いて、話を進めます。
② 乾燥時に問題がある場合
作品の「ひび」「割れ」を防ぐには、全体を同じ速度で均一に、乾燥させる事が、理想です。
乾燥度合いが、場所により、大きく違うと、その境や、口縁、底などに、亀裂が出ます。
) 作品が乾燥する順番。
a) 空気に触れている面積が、大きい程、速く乾燥します。
作品の角部、口縁などの周囲部、極端な凸状の部分、取っ手や摘み部分などです。
b) 肉が薄い部分から、先に乾燥する。
極端に、肉厚に差が有ると、その境目に亀裂が出来ます。
c) 土に含まれている、水分の少ないところが、速く乾燥する。
大きな作品を作る際、下部から作るのが、一般的です。
場合によっては、前日に作った、製作途中の作品に、継ぎ足して、作ります。
当然、昨日の土は、水分が少なくなっています。(それ故、上に積む事が可能に成りますが)
d) 作品の上部から、乾燥が始まる。
作品の表面から、水分が蒸発し、内部の水分も表面に、吸い出されますが、
私の経験では、内部の水分は、重力により、下に落ちて行く感じがします。
即ち、板に載せた作品の底は、上から落ちて来た、水分で濡れている感じです。
e) 袋物など、口径が小さな物は、表面より乾燥し、内側(内部)は、中々乾きません。
f) 自然乾燥では、空気中の湿度が、低い程、又気温が高い(特に夏場)程、乾燥は速くなります。
) 乾燥をなるべく、均一にする方法。
a) 上記の様に、乾燥の早い部分に、布(又は、きつく絞った濡れた布)を掛ける。
b) 乾燥の速い部分に、霧吹きで、霧を掛けたり、濡れたスポンジで、水ぶきします。
c) 時々、作品の置く位置を変える。
作品は、上部から乾燥しますので、上下出きる位、乾燥したら、上下逆さにする。
この作業を、数回繰り返します。
又、空気に触れ無い面が有る時は、作品を回転させます。
d) 乾燥の遅い部分を、積極的に乾燥を早める。
内側や底の部分が、中々乾燥しない場合、ドライヤーなどで乾燥させる。
その際、一箇所に、熱風が当たらない様に、ロクロに載せ、回転させながら、乾燥させます。
又、大きな壷などは、内側に白熱球(電球)を入れて、乾かす場合も、あります。
) 効率良く乾燥させる、方法。
乾燥は、自然乾燥が、理想ですが、速く乾燥させる必要が、生じた場合、或る程度強制的に、
乾燥させる事に成ります。
その際、乾燥は、間欠的に行う事で、効率良く乾燥できます。
即ち、「乾燥させては止め、乾燥させては止め」、を繰り返しながら、乾燥させます。
強制的な、連続的乾燥は、表面のみが乾燥し、内部の水分が、表面に移動するのに、
追い付きません。一休みする間に、表面に移動してきます。表面が濡れて来たら、
再度乾燥させます。これを繰り返すことにより、より効率的に、乾燥出来ます。
陶芸の窯焚き(素焼)
追記(2012-11-16)
粘土が乾燥する際、粘土内の水分は以下の様な動きをすると思われます。
1) 粘土の表面から水分が蒸発し、乾燥が進むと内側から、水分が表面に移動します。
これが一般的な考え方です。しかし私の経験では、実際には違っている様に感じます。
2) 粘土の表面を強制的に乾燥させると、表面の一部は蒸発しますが、内部の水分は反対
側に移動します。即ち表を乾かすと、裏側に逃げます。同様に器の外側を強制的に
乾かすと、器の内側に水分が移動します。
3) その為、表側のみを乾燥させても、中々乾燥しません。そこで次に裏側や内側を乾燥
させると、裏側より表側に水分が移動します。即ち乾燥している側に移動する事になります
更に、この現象は粘土内の乾燥度合いを、均一にする働きにもなり、割れやひびの予防
にも成ります。
4) 乾燥時間が10~30秒と短くでも、同様な作用が起こります。それ故、こまめに内外、
裏表を交互に乾燥させれば、乾燥は驚くほど早く成ります。
尚、作品の上下関係でも同じです。上部が乾燥するに従い、水分は下に逃げます。
(勿論、重力も関係しているかも知れませんが)そこで、上下を交互に乾燥させる事に
より、乾燥を早める事ができます。
5) 水分が反対側に逃げる証明として、粘土板を木製の板の上に載せ、表面をドライヤー
などで乾燥させると、粘土の裏側、即ち木製の板が強く濡れる事で確認されます。
更に、水分が移動した濡れた裏面から、何らかの方法(石膏板、吸い取り紙)で水分を
取り除くならば、乾燥が早まる事にもなります。