わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 釉(薬)について8(着色剤)

2018-03-29 15:16:17 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
釉には、透明、乳濁、マット等がありますが、更に色が付いた物が多いです。

多くは金属類が添加されています、その他色の付いた土や、各種の灰類を添加して発色させる

事もあります。但し、一種類とは限らず、複数の金属類が混入されている場合が多いです。

金属類の種類によって発色も変化します。

1) 多くの陶芸材料店では、各種の色の付いた釉が用意されていて、その数は数千種類も

あると言われています。それ故、ご自分で色を調合する事無く、好みの色釉を使う事が

可能です。その際、注意する事は同じ名称の釉であっても、メーカーによって微妙に色が

異なる事です。当然ですが、メーカーの調合(レシピ)は企業秘密ですので、各メーカー

 によって異なります。

 更に、焼成温度や釉の厚みについても微妙な差が生じています。それ故、好みの釉を見出

 す事が出来たならば、やたらにメーカーを変えない方が良いでしょう。

2) 市販の釉用着色剤を使用する。

 陶芸用品のメーカーによっては、自作又は市販の釉に混入させて色釉を作る顔料(着色剤)

 を市販しています。種類も豊富で、呉須(ゴス)系: 古代ゴス、旧ゴス、黒ゴス、焼貫

 ゴス等、その他ブラック、グレー、ブラウン、セピア、ホワイト、カイヘキ、トルコ青、

 ピンク、グリーン、ヒワ、ライラック、ピーコック、オレンジ、バナナ黄、カナリヤ黄、

 エンジ赤、バイオレット、特赤、真紅、釉裏紅顔料などです。多くは粉末状で、50,100,1000g

 単位で売られています。基礎釉に適量添加して、釉に着色します。

3) 独自の色釉を作る事も出来ます。

 透明基礎釉を作った後、各種金属類を混ぜて好みの釉を作る事に成ります。

 マット系の色釉を作るのであれば、マット系の基礎釉に金属類を添加する事になります。

 釉の着色には、以下の金属類、その他の物質があります。

 ① 白色: 酸化錫、錫灰、酸化亜鉛、蝋石、骨灰、水晶石、白絵土など。

 ② 黒色: 酸化鉄(弁柄、砂鉄など)、酸化マンガン、酸化クロム、酸化銅、

  酸化コバルト等。

 ③ 褐色: 酸化鉄、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、

  着色粘土(赤土)来待石、その他各種木灰等。

  注:黒色と同じ物が多いですが、黒色よりも添加量を少なくします。

 ④ 灰色: 酸化イリジウムと酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マンガンの混合物。

 ⑤ 青色: 酸化コバルト、炭酸コバルト、塩化コバルト等。

 ⑥ 緑色: 酸化銅、炭酸銅、酸化クロム等。

 ⑦ 黄色: 酸化チタニウム、酸化ルチール、酸化鉄、重クロム酸カリ、黄土等、各種

  木灰類。

 ⑧ 紫色: 酸化マンガン、酸化銅、金などです。

 ⑨ 赤色: 酸化銅、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルトとマグネシア等。

 ⑩ ピンク: 酸化錫と酸化クロムの混合物。(還元焼成すると出易いです)

 ⑪ その他: 地方の窯では、その土地で見出した土石類を粉末にしたり、各種の木灰をか

  添加して、その土地独自の釉を作っている処も多いです。自然界の物を利用しますので、

  同じ土地の釉でも、窯によって微妙な差が出る事が多いです。 

 上記着色剤を添加しても、添加量や他の金属との兼ね合いで、お望みの色に発色しない事

 も多いです。それ故数回の試行錯誤を繰り返す必要があります。

以下次回に続きます。
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続 釉(薬)について7(媒熔剤と金属元素の色の変化)

2018-03-20 13:25:01 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
色釉を作るには、金属元素又はその酸化物を添加するのが一般的な方法です。

釉を作る際には、熔融剤(媒熔剤)として、アルカリ成分が使われますが、どの種類の物を

使うかによって、発色に違いがあります。又同じ熔融剤を使用しても窯の雰囲気(酸化、

還元)によって発色に違いが出ます。ここでは、ナトリウム(ソーダー)とカリウムの熔融

剤の場合に付いて述べます。

取り上げる金属(酸化物)は、鉄、銅、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、チタン、

ウラニウムです。尚、現在では鉛はほとんど使用する事は有りませんが、参考までに記して

おきます。

1) 鉄(酸化第一、第二酸化鉄=弁柄など)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、褐色掛かった黄色。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、褐色。

  いずれも鉄の成分が多くなるに従い、黒色に近付きます。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、明るい黄色又は赤褐色。

 ④ 酸化焔では、黒、黄褐色。

   還元焔では、褐色掛かった黒、青緑。

2) 銅(酸化銅、炭酸銅など)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、空色に近い青。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、トルコブルー。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、草緑。

 ④ 酸化焔では、緑、青緑、暗い緑。

   還元焔では、赤、紫掛かった褐色。

3) クロム(酸化クロムなど)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、草色に近い緑。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、黄色掛かった緑。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、赤味を帯びた黄色、朱赤。

 ④ 酸化焔では、黄色を帯びた緑、又は青緑。

   還元焔では、青緑。

4) マンガン(酸化マンガンなど)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、暗い黄色。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、紫。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、黒又は紫掛かった褐色。

 ④ 酸化焔では、黄褐色、黒褐色。

   還元焔では、褐色掛かった黒、黄褐色。

5) コバルト(酸化コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、燐酸コバルト、呉須など)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、草色ぽい青。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、緑掛かった青。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、青掛かった藍色(青藍)。

 ④ 酸化焔では、青藍。

   還元焔では、青藍、桃紅色。

6) ニッケル(酸化ニッケルなど)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、褐色。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、褐色。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、黄色掛かった緑。

 ④ 酸化焔では、緑。

   還元焔では、灰色。

7) チタン(酸化チタニウムなど)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、黄色。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、黄色。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、黄色。

 ④ 酸化焔では、橙(だいだい)黄色、茶褐色。

   還元焔では、暗い黄色、茶褐色。

8) ウラニウム(酸化ウラニウム)

 ① 熔融剤にナトリウム(ソーダー)を使用した場合、黄色。

 ② 熔融剤にカリウムを使用した場合、橙黄色。

 ③ 熔融剤に鉛を使用した場合、橙黄色、朱紅。

 ④ 酸化焔では、黄色、黄緑。

   還元焔では、黒色。

 注意事項: 上記はおおよそ(凡そ)の目安です。当然金属類の添加量によって色も

 変化しますし、熔融剤も単一の事は少なく、複数の物が混在しているのが一般的ですので

 上記の通りに発色する保障はありません。あくまで参考程度に頂ければ有り難いです。
 

以下次回に続きます。
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続 釉(薬)について6 (熔ける温度とは)

2018-03-16 21:52:26 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
釉はガラス質と述べましたが、それには三様の状態を呈します。

即ち、透明釉とマット(艶消し)釉、乳濁(白濁)釉です。後者を失透明釉と呼ぶ事もあり

ます。

1) 釉として使用できるのは、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)成分の割合によって

  決まります。(以上が前回の話です。)

 釉として重要な条件の一つとして、熔ける温度が挙げられます。

 釉の主成分であるアルミナ(カリ、正長石)の融点は約1200℃で、シリカ(珪酸)の融点

 は1685℃です。それ故一般の焼成温度1200~1300℃では、熔けない事になります。

 熔け易くする為に、ルカリ成分を添加します。

 釉には、作品の表面を被服する為に、各々最適な温度又は温度範囲があります。

 当然、磁器や、陶器、楽焼の場合では、釉の熔ける温度に違いがあります。

 更に、結晶を成長させる温度や、窯変を起こす為の釉の温度等、釉の温度管理は重要に

 成ります。これらを熔かすには熔融剤(フラックス)が必要になります。

2) 釉を熔かし易くするのは、アルカリ成分です。

 ① アルカリ成分には以下の物質があります。

  ⅰ) 酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、石灰石(炭酸カルシウムCaCo3)

   酸化マグネシウム(MgO)、硼酸(酸化バリウム)、炭酸バリウム(BaCo3)、

   炭酸リシウム(Li2CO3)、酸化ストロンチウム(Sr)等です。

  ⅱ) アルカリ成分は二種以上又はそれ以上の種類を使うと、より強力な熔剤となります

   更に、アルカリは、釉の流動性を増し、顔料の発色を促進する重要な働きも有ります。

  ⅲ) カリは長石釉では最も多く使われます。福島長石(正長石=カリ長石)が多く利用

   される為です。尚、カリはソーダ(ナトリウム)と置換出来ます。但し、その作用はほ

   とんど同じですが、カリはソーダより、熔け易い釉となり、光沢も優れます。

   但し石灰をカリやソーダに置換すると、貫入が増加する傾向があります。

   特にソーダは熱膨張率が最大級の為、素地より釉の膨張が大きく貫入が入り易いです。

  ⅳ) リチウムは最近多く使われています。

   これは釉の光沢と機械的強度を増し、風化に対して強い抵抗性を持つからです。 

  ⅴ) マグネシア源として、マグネサイト、ドロマイト、滑石などがあります。

   ドロマイトはマグネシアと石灰の化合物で、安価な為、貫入防止剤として使用します。

   滑石は「ひび釉」を作るのに利用されます。少量添加すると光沢を増しますが、

   8~20%添加すると、艶消釉になります。

  ⅵ) ストロンチウムは石灰釉よりも発色を良くします。更に石灰やバリウムと置換す

   ると素地との密着度を良くし、引っ掻き強度を増しますので、食器などに利用されて

   います。但し、高価なので、利用する価値があるか効果の確認が必要です。  

② その他の熔融剤

  亜鉛華(酸化亜鉛)、第二酸化鉄(弁柄)も釉を熔け易くする働きが有ります。

  亜鉛華は多量に添加すると、乳濁剤としても用いられます。又結晶釉を作る時にも添加

  します。尚、結晶釉に付いては後日お話する予定です。

③ 釉を熔け易くするには、焼成温度を上昇させるか、寝らし時間を長くすれば良いのですが

  個々の釉の熔ける温度を調整するのは、アルカリ成分の種類と量を調節しているのが

  現状です。
 

以下次回に続きます。
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続 釉(薬)について5(透明、マット、乳濁3)

2018-03-09 15:46:20 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
釉はガラス質と述べましたが、それには三様の状態を呈します。

即ち、透明釉とマット(艶消し)釉、乳濁(白濁)釉です。後者を失透明釉と呼ぶ事もあり

ます。

1) 釉として使用できるのは、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)成分の割合によって

 決まります。

 ④ シリカ(珪酸)成分が多くなると乳濁釉になります。

   Al2O3:SiO2 = 1:10(モル)以上になると、次第に白く濁った釉になります

  ⅰ) シリカは地球上で最も多く存在する物質です。

    (以上までが前回の話です。)

  ⅱ) シリカの役割は、主にガラス質を構成する成分です。

   それ故、釉に大量(釉中に50%以上)に存在させる必要があります。

   このガラス質は、酸やアルカリ、各種のガス及び液体(化学薬品等)に対し強い抵抗

   性を有します。 適度の着色剤を添加する事で、色釉を作る事が出来ます。 

  ⅲ) シリカ成分が増加すると次の様な状態が出現します、

   a) 熔融温度が上昇する。

    珪酸塩は、各温度で完全に交じり合いますが、含有量が増えると熔ける温度が上昇

    します。

   b) 釉の流動性を少なくする。即ち粘性を増します。

    その為、流動性が必要な結晶釉などには、大量に入れる事は出来ません。

   c) 熱膨張率を低くし、釉の硬さと強度を増します。

    珪酸(シリカ)は素地と釉の膨張収縮の差を少なくし、密着を良くします。

    膨張率が大きい事は、縮み率も大きい事を意味します。その為釉に貫入が入り易く

    なり「ヒビ釉」を作るには、シリカ成分を少なくする事に成ります。

  ⅳ) 乳濁釉を作るには、

   釉が乳白化するのは、釉中の細かい結晶が浮遊し、光がそれらに反射、屈折、撹乱し

   散乱発散して起こります。それ故添加物の粒子が細かい程、乳濁します。

   a) シリカ(珪酸、珪石など)を多く入れる事で乳濁釉を作る事が出来ます。

    これは分相と呼ばれる現象で、ガラス成分が変化を起こし、同じガラス質であり

    ながらお互いに熔け合わない状態で、乳濁を起こします。

   b) 乳濁剤(失透剤)を添加する事で、容易に乳濁釉を作る事が出来ます。

    酸化チタンや骨灰、蛍石は少量添加するだけで、釉に熔け込み分相を起こし、乳濁

    します。ジルコンを添加すると、釉に熔け込み冷却と共に、結晶を析出し失透を起

    こします。但し、多量に添加すると、釉に熔けきらず乳濁します。この場合には、

    アルミナ成分が多く成ると、艶消しになりシリカ成分が多くなると乳濁になります    

   c) 灰釉で乳濁釉を作る事ができます。

    長石と藁(わら)灰でも可能ですが、鉄分の少ない(いす灰)も使うとより白い釉

    を作る事が可能に成ります。

    代表的な釉は、藁白、白萩等の乳濁釉がります。尚、艶消し釉には、卯の斑

    (うのふ=鵜、兎などの文字を当てる事もあります。)等があり、籾殻(モミガラ)

    灰を用います。

   d) 志の釉も乳白釉ですが、一般の乳濁釉よりも熔け不足で、無数の細かい気泡が

    表面まで在らわれているのが特徴です。長石(対馬長石など)に鉄分の少ない

    「いす灰等」を添加して作ります。熔け難い長石は長時間焼成する事で熔かす事

    が出来ます。

以下次回に続きます。

    

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質問 32 釉の痘痕(あばた)の解消方法

2018-03-05 17:06:03 | 質問、問い合わせ、相談事
Unknown (tak) 様より以下の質問をお受けしましたので、当方なりの回答を致します。

 市販の松灰70と長石30を混ぜて作った釉薬

 そのままだとうまく焼けたのですが、コバルトを添加したらブツブツが・・・

 いつも困っていたのですが あばた、なのですね

 ほかの釉薬と一緒に焼いていますし、表面のマットな感じは気に入っているので、最高温度は

 変えたくないのですがガスをうまく追い出す方法はありますか

 900度くらいのところを長くしてみているのですが・・・

 
明窓窯より

1) 気泡(ガス)のできる理由。

 クロム、ニッケル、アンチモン等の有色金属酸化物を釉に混入させた場合、気泡が発生する事が

 あります。特に不純物が含まれる時に発生し易いです。

 又、コバルト、マンガン、ニッケル等の酸化金属は、高温で酸素との結合や酸素の放出を頻繁に

 行います。どのタイミングで吸収し、どのタイミングで放出するかは、定かではありません。

 この酸素の放出が気泡の原因です。釉の粘性が大きいと、釉の表面から完全には抜け出せず、

 表面が荒れた状態に成ります。

 又、ピンク、コバルト、クロム等の顔料を釉に添加した時、釉が縮れる場合があります。

 特に、釉に粘性が少ない時で、顔料が十分に水洗いされていない時や、硫化物が含まれる場合は、

 顕著に現れます。

2) 対策としては、釉の粘性を弱め、流動性を持たせるのが、有力な方法と思われます。

 釉に珪酸(シリカ)や石灰(炭酸カルシウム)が多く成ると、粘性が強くなると言われえいます。

 ① 松灰や長石の種類を変えたり、調合割合を変える方法。

  灰類には、種類によって20~50%の石灰が含まれます。市販されている松灰をご利用との

  事ですが、それには天然と合成のがあります。合成の物は品質が一定ですが、天然物ではその

  生育土壌、伐採時期、木の老若、木の部位(幹、枝、葉、根、樹皮等)によって成分が異なり

  ます。その為、焼成された釉の表情にも変化があります。松灰を天然から合成へ、又は合成から

  天然物に変える事で、気泡を減らせるかも知れません。

  一方長石にも正長石(カリ)、ソダー長石(ナトリウム)、灰長石(カルシウム)があります。

  多く使われるのは正長石(福島長石等)ですので、多分正長石を使用していると推察されます。

  正長石には、約65%程度のシリカが含まれています。

  以上の事から、御使用の釉は粘性が強いと思われます。

 ② 添加物を入れる事で粘性を弱める。

  御使用の釉の組成や焼成温度を変更したくないとの事ですので、粘性を弱める為には、何らかの

  物質を添加する必要があります。

  ⅰ) 硼酸を添加する。

    硼酸は珪酸と同じ様に、ガラス質に成ると同時に、釉の粘性を弱める働きをします。

    又、釉を安定化する働きもあります。流動性が求められる結晶釉にも多く使われています。

  ⅱ) 融剤と成るナトリウム、カリウム、バリウム等のアルカリ又はアルカリ土金属を添加する。

   これらを添加する事で、融点(ガラスですので、実際には融点はありませんが)を下げる事が

   出来、気泡の発生を早める事も可能になり、速やかに放出させます。

  ⅲ) 炭酸リシウム(その他、リシウムの酸化物)ははなはだ強い融剤で、わずか1%程度を

   添加する事で、流動性を増し、痘痕やピンホール等の改善に大きな効果を発揮します。

 ③ 「900度くらいのところを長くしてみているのですが・・・」

  私には、この意味が判りません。この行為は、結晶釉の結晶を成長させる時に行う物と思われ

  ます。気泡を釉から放出するには、温度が低過ぎます。

  時間を掛けるのであれば、最高温度で引っ張る事(寝らすと言う)です。引っ張る時間が長け

  れば長い程、釉は平滑になり痘痕は解消します。理想的には30~60分程度以上が必要ですが

  燃費が掛りますので、最適な必要な時間を見付けて下さい。

以上、参考に成れば有り難いです。
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続 釉(薬)について4(透明、マット、乳濁2)

2018-03-02 11:34:21 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
釉はガラス質と述べましたが、それには三様の状態を呈します。

即ち、透明釉とマット(艶消し)釉、乳濁(白濁)釉です。後者を失透明釉と呼ぶ事もあり

ます。

1) 釉として使用できるのは、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)成分の割合によって

 決まります。

 ① 光沢が有り、良く熔ける透明釉。

 ② 釉を調合する場合や、釉のレシピが表示されている場合、注意する事はその単位です。

   体積比、重量比、モル比のいずれかで表示されています。この単位を間違えると、

   当然混合割合が異なってしまいます。(以上までが前回の話です。)

 ③ アルミナ成分が多くなる(シリカ成分が少なくなる)と艶消し(マット釉)になります

  ⅰ) 前回 Al2O3:SiO2 = 1:7~8(モル)ぐらいで良い透明釉になるとお話し

   ましたが、Al2O3:SiO2 = 1:6(モル)以下に成ると、次第にマット状になり

   ます。値が小さい程、マット状態は強くなります。この関係を表す図に(Al2O3ーSiO2

   状態図)があります。ある程度釉に詳しい書物で見る事ができます。

   この状態図から、アルカリ成分の絶対値は0.3モル以上、シリカ成分が絶対値2モル以上

   で、直線又は緩い曲線で、透明釉、マット釉、乳濁釉と3区分されています。図からは

   みだした範囲では。良いに釉に成らないと思われます。

   尚、アルミナはシリカの1/10まで入れる事は可能です。  

  ⅱ) 艶消し(マット)に成るとは、釉中に微結晶が多数存在した状態です。

    結晶が大きな物は結晶釉と成りますが、微結晶が釉中に浮遊している場合、光が乱

    反射され釉中に入り込めず、表面より乱反射し艶消しとなります。

    尚、マットと乳濁釉は、いずれも結晶の生成によって起こる現象ですが、マット釉

    が窯の冷却途中で析出するのに対し、乳濁釉は最初からガラスに溶け込まない原料

    (失透剤)が結晶化した物です。これを分相といいます。詳細は後日述べます。

    艶消し釉は一般に表面が不透明な物ですが、その他透明な物も存在し、微結晶が見

    える物があます。

  ⅲ) 釉の中のアルミナ成分の役割とは?

   a) 釉の熔融温度を上げる作用があります。

    温度が上がり過ぎる場合には、アルカリ成分を多くしたり、硼酸などを添加します。

   b) 釉の粘度を増し、釉の流れを抑える働きがあります。

   アルミナ成分を多量(0.4モル以上)に入れると、粘度が急激に増し、釉中の気泡を除き

   難くなります。

   c) 釉を安定化させる働きがあります。

   アルミナは素地に融着したり、釉の固さや風化、化学的侵食に対し抵抗性を増し、釉を

   安定化させます。更に、焼成温度が変化しても、釉の物理的性質を大きく損なわない事

   です。

  ⅳ) アルミナ成分は、各種長石からも得られますが、カオリンから得る事が多いです。

   カオリンの利点は、施釉した際素地に密着し易い事。粒子が細かく泥漿(でいしょう)

   し易い事です。

 ④ シリカ(珪酸)成分が多くなると乳濁釉になります。

   Al2O3:SiO2 = 1:10(モル)以上になると、次第に白く濁った釉になります。

  ⅰ) シリカは地球上で最も多く存在する物質です。

   主に岩石や粘土類の主成分と成っています。その他藁(わら)灰や籾殻灰等の禾本科の

   植物や木の灰等にも多く含まれています。これらには約80%のシリカが含まれています

   地方によっては「ギヤマン」と呼ばれ珪石にも多くのシリカが含まれます。

   尚、単独では、石英、水晶、珪砂などとして産出しますが、酸化鉄やアルミナ等の不純

   物を含みます。

  ⅱ) シリカの役割は、主にガラス質を構成する成分です。

以下次回に続きます。
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