玄関のチャイムが鳴ったので出てみると、かなり高齢の男女がお二人立っていた。
「先日、ポストに入れておきました嘆願書を受け取りに来ました」とおっしゃるのを聞いて思い出した。
一週間ほど前、確かにポストに嘆願書が入った封筒が入っていた。
嘆願書というのは、75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担2割化に反対するというものだった。
ウチに(私に)は、いつも某野党からチラシや封書が届く。郵便ではなくて個別に届けているようだが、一度も支持した覚えがないのにいつも届くのはどういうわけだと思っていた。
昔、引っ越してきたばかりの時に某野党の後援会の人が挨拶に来たことがあったが、考えてみれば封書が届き始めたのはそれからだったかもしれない。
それにしても今日もツルツル路面で危ないのに、こんな高齢者が取りに来るなんて、、、と気の毒になった。
そして気の毒になったのは、これだけではない。
「嘆願書に署名することを拒否します」と伝えなければいけなかった。
2019年12月に発表された政府の全世代型社会保障検討会議中間報告書では、現在の原則1割の75歳以上高齢者の医療費窓口負担について「負担能力に応じたものへと改革していく」と強調し、一定所得以上の人を対象にした「2割負担」を導入することを盛り込んだ。
今後、団塊世代が75歳以上になり始める2022年までに実施できるよう法制上の措置を講じるという。
色々な意見はあるが、これからますます高齢者が増えていく状況で、高齢者の医療費1割負担を維持していくのは無理なのではないかと思っていた。
ましてやこれ以上の負担を若い世代に負わせるのは忍びない。
払える高齢者は払った方がいい。もちろんその時は、私も払うつもりでいる。
、、、ということをお伝えしたら、お二人は驚いた表情でしばらく声が出ないご様子だった。
もしや、嘆願書に署名する方は多いのだろうかとも思った。
「わかりました」と男性が静かにおっしゃって去っていこうとした時、女性の方が「嘆願書に付いていた用紙に書いてあった電話番号、あれは私の電話なんです。もしも何か困ったことがあったら、電話してください」とおっしゃった。
困ったこととは、例えばどういう時なんだろうか、、、と一瞬考えたが、善意そのものでおっしゃっている、おばあちゃんの言葉がちょっと嬉しかった。
滑って危険な道をお二人で支え合いながら帰って行く後ろ姿にすこし心が痛んだ。