お姑さんがいる高齢者住宅から電話がきた。
「食事が飲み込めなくなっているので、買ってきて欲しいものがあります」とのことだった。
その買ってきて欲しいものとは、食事を飲み込みやすくする為にとろみをつける介護用のパウダーと、薬も飲めないので混ぜて食べられるようにプリンやヨーグルトなど。
そして、お粥に添える海苔の佃煮や練り梅だった。
あれからお姑さんは急激に弱ってきた。
自分の足で歩くことはすでに難しく、食事もあまり摂らなくなった。
だから、もう夜中に起きてトイレを詰まらせるようなこともできない。
人間、こんなに急に弱るものなのかと思う。
父の時も徐々に食事が摂れなくなって、最期の方はとろみのついたミキサー食になったが、それでもこんなに急ではなかった。
食べ物を摂らなくなったらますます弱ってしまうのではないか。
なんとか食べられるようにしないと・・・と話したら夫が言った。
「ばあちゃん(お姑さん)はどう思っているのかわからないが、ばあちゃんの魂は、もうこれでいい、もう生きたくないと思っているんじゃないだろうか。だから本能が食事をするのを拒んでいるんだと思う。まぁ分からんけどな」
本当にそうなのだろうか。私もわからない。
取りあえず急いで買い物をして、頼まれたものを高齢者住宅へ持って行った。
お姑さんは日中デイサービスで見守りをしてもらっているので、部屋に居ないことは知っていた。
でも一応、職員さんに部屋にお姑さんがいるかを聞いてみた。
もしも居たら、少しだけ顔を見て声をかけたい気持ちがしていた。
でも、やっぱりいなかった。
残念なような、ちょっとホッとしたような、そんな複雑な気持ちで高齢者住宅をあとにした。