前に嬉しかった事として、寝たきりで点滴を外せないお姑さんが、食べ物を少し口から食べてくれるようになったと書いたが、今日はその続きを・・・
お姑さんは、口から食事をすこしだけ食べてくれるようになったものの、医師によると「これだけでは栄養がまったく足りないので点滴は続けます」とのことだった。
さらに現在行っている点滴は、両手両足と場所を変えながら針を刺しているのだが、いずれどこからも点滴を入れられない状況になるとのことだった。
そうなった場合、次の方法としては、心臓近くの血管まで針をいれて高カロリーの栄養を送る中心静脈栄養という点滴になるそうだ。
そして最終的には胃ろうをするかどうか、または胃ろうと点滴を組み合わせる方法にするか、いずれにしろ近いうちにその選択しなければならない状況になるので、今のうちに家族は決めておいて下さいと言われた。
ナースステーション内の窓の無い部屋で、ほとんど一日中、体を拘束されて点滴しているお姑さんは本当に痛々しかった。
夫もそれはとても感じていて、もうこれ以上母親につらい想いはさせたくないという気持ちで「点滴が入らなくなったら、口から食べられるだけにできますか?」と医師に聞いた。
すると医師は「それはできません。病院に入院している以上は、点滴を止めて干からびて死んでいくのを、何もせずに見ているわけにはいきません」とおっしゃった。
たしかにその通りかもしれない。
ただ身体の拘束だけでも外せないものだろうか。もう弱っていて自分ではあまり動けないと思うのだが。。。というのは夫と私の願いだった。
それを医師に聞いてみると、「完全に外すことは難しいです」とおっしゃった。
拘束を外してしまうと、目を離した隙に怪我をしたり、最悪命を落としたりするかもしれない。(その時に病院の責任になるということ)
また、(人手不足で)ずっと見ていることはできないとのことだった。
そして医師は苦渋に満ちた顔で「我々も本当は拘束はしたくないのです。ご家族のおっしゃる通り最期まで人間らしい生活を送ってもらいたいと思っているのですが、現実問題としては難しいです」とおっしゃった。
最後に夫が「何かあっても責任を追及したりしませんから、少しの時間でもいいですから拘束を外してください」とお願いして、なんとか看護師さんがそばに居る時だけ拘束を外してもらえることになった。
家に帰ってから、夫はしばらく考え込んでいたが「身体拘束をしない病院に変える」と言って病院を調べ始めた。
しかし、いくつもの病院に問い合わせをしたものの、どこでも「拘束はあります」との返答だった。
私が聞いた病院では「どこの精神科でも拘束はしています。そのような状況では、むしろしていない病院は少ないのではないでしょうか。日本中を探せばいくつかあると思いますが、でもなかなか無いでしょうね」とのことだった。
夫も最後は諦めたようだったが、今の病院は満室のところを無理に入院させてもらったこともあって窓のない部屋にいるが、せめて陽の光の入る窓のある部屋にしたいと転院させることにした。
次の病院はまだ決まっていなかったが、「転院させます」ということを夫が医師に伝えに行く日のこと。
夫が出かける直前まで、私は拘束していない病院を探していた。
「ないだろう」と言って夫はあきらめたが、私は「絶対に見つかる」という根拠のない確信があった。
「じゃ行ってくる」と言って夫が玄関を開けた時、やっとここは!という病院を見つけた。
「あった!ここいいかもしれない」と出かける夫に叫んだが、夫は聞こえなかったようで出かけて行ってしまった。
夫が出かけた後、ゆっくりとその病院を調べてみたのだが、病院のホームページには拘束しませんとは書かれていなかった。
そこで病院へ電話で問い合わせをしてみると、非常に親身になって話を聞いてくれた後に「うちは、よほどのことじゃない限り拘束はしていません。一度見学に来られてはいかがですか?」と言ってくれた。
そこで夫にそれを伝えると、すぐに夫はその病院へ見学に行き、そして入院の手続きまでしてきた。
夫によると、やはり拘束されている患者さんはいなかったそうだ。
先日、お姑さんが新しく移った病院へお見舞いに行ってきた。
病院内はどこも同じなのだが、雰囲気が非常に明るかった。
何が違うのだろうと思ったら、廊下ですれ違う看護師さん達が皆さん「こんにちは」と挨拶をしてくれる。
あっちからもこっちからも「こんにちは~」と声をかけられて、それだけで病院の印象がかなり違った。
さらに病院の中央に広い談話室があり、ほとんどの患者さんはそこで自由にお茶を飲んだりテレビを観たりゲームしたりして過ごしている。
また食事もここでするとか。
お姑さんも車いすで連れてきてもらって食事をしているそうだ。
談話室から自分の部屋に自由に戻れるが、他の所には行けないように鍵がかけられているのは仕方がないとして、前の病院とは全く違った雰囲気だった。
そして、この日のお姑さんの様子は本当に驚くほど回復していた。
もう身体拘束はされておらず、意識状態は家に居た頃に近いほどクリアになっていた。また食事も食べられているそうで、お姑さん曰く、自分で食べているとか。
ただ、やはりそれだけでは足りないので、時々点滴をするそうだ。
そして「看護師さん達がみんな優しくて」と言って涙ぐんでいた。
お姑さんの病状の回復が拘束されなくなったこととは、あまり関係はないのかもしれない。
お姑さんの病状が突然悪化したように突然回復して、また突然悪化してしまうということも、もしかしたらこの先あり得るかもしれない。
でも、もしかしたら人生最後になるかもしれない時間を、少しでも快適に過ごしてほしいと思うのは家族の願いでもある。
できれば良くなって退院できることが一番なのだが、今はお姑さんが拘束なく過ごせるようになったことが本当にうれしい。
ちなみに、この病院は市内にある。
聞いたところによると、市内じゃなくても近郊に拘束しない方針の病院がまだあるそうだ。
探せばある。