バージニア労働者

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夫婦って何

2019年09月28日 | アメリカ生活
今日はちょっと真面目な話。


前回登場したアレンさんのこと。


実は私もハニバニも、アレンさんがあまり好きではない。
ケイエス、何を唐突に?!て思う人もいらっしゃるかも知れないけど、事実。
あの仏のようなハニバニでさえ、「アレンは良い人じゃない」と言い切るほど。


前回の記事の中で私が、

アレンさんに関してはちょっと訳ありで、あんまり言えないんだ。
この話はまたの機会で。


と言っていた「あんまり言えない」というくだり、あれはみなさんにシェアできないという意味ではなく、
ご本人にあれこれ言えない状況という意味です。


実はアレンさん、こないだ重病が発覚し、余命があとわずかと宣告されました。


先月のある夕方、救急車がサイレンを鳴らしながら走っていて、
そのサイレンの音がどんどん近づいているなと思ったら、まさかのお向かいさん宅。
びっくりしてハニバニと窓にへばりついて様子を見ていました。


救急車からはタンカーが運び出され、ハニバニと「アレンさんかな、奥さんかな。どっちだろ。」と話していました。
彼らは大きな家に二人きりで住んでいます。
アレンさんは70歳ぐらいで、奥さんはアレンさんよりも20歳ぐらい若いヨーロッパ出身の女性。
もしかしたらアレンさん、階段から落ちて骨折しているのかも...と思っていました。


暫くして、ほぼ紙みたいに真っ白な顔色をしたアレンさんを乗せたタンカーを運ぶレスキュー隊が出てきたけど、
アレンさんは上半身を起こして手を動かしながら話をしていたので、
とりあえず意識がないということではないなと悟り、二人ともちょっと安心しました。


それからアレンさんを乗せた救急車と、それに続く奥さんの車が出て行きました。


次の日、ハニバニが外で何かをしていると奥さんが戻ってきたので
前日の様子を見ていたハニバニが心配になって奥さんに話しかけに行くと、
奥さんは、「今まで話せる人が傍にいなかった」と言って、急に泣き出しました。


奥さんの話では、前日に救急車を呼んだのは、アレンさんが急に立てなくなったから。
アレンさんは数カ月前に体調を崩して病院に行ったところ、アレンさんの末期ガンを宣告され、
余命もあと半年もないと言われたそう。
(とても珍しいガンで、聞いたことのない名前で結局覚えられなかった)


泣きじゃくる奥さんを見ながらハニバニはとても複雑な気分になりました。
アレンさんとはもう10年以上も「お向かいさん」だけれど、
いつもアレンさんの奥さんを罵倒し続ける声が響いていました。
私も聞いたことあるけど、最初はただの夫婦喧嘩かな?と思っていたけど
それはいつも一方的にアレンさんが奥さんを罵倒するばかりの声だった。
聞けば聞くほどこちらがストレスを感じてしまう。
「あれはちょっと酷すぎる」と、ハニバニが苛立ちを隠せないほど。
「暴力がなければいいのだけど」と、祈るしかなかった。


過去に一度、外で洗車をしていた私たちに奥さんが駆け寄ってきて
「話を聞いて欲しい」と、当時まだお互いの名前も知らないような状況の中、言ってきたのです。
夫が出張先で浮気を繰り返していて、どうすればいいのかわからないし、
他に話す人がいない
と言われて、何を言えばいいのか途方に暮れたことがありました。


そういうことが今まであって、あまり良い扱いを受けていないはずなのに、
涙を流しながら病気の夫を気遣い、最期まで寄り添い続けるのってすごいことだよねと、
ハニバニが奥さんからアレンさんの病気を知らされた日に、私に教えてくれました。


私なら、一方的に罵倒され始めたころから愛は確実に冷め始めるだろうし、
そんな扱いをする男と一緒に居たくないし、
まして愛がもう無くなった相手の健康状態を思いやるとか出来ないだろうなと思う。


今日もお向かいから、GPSが見つからないと
奥さんを罵倒する声が聞こえました。


傍から見ると、アレンさんは奥さんに酷いことしかしていなかったのかも知れないけど、
アレンさんの本当の良さっていうのは、奥さんにしかわからないのかも。
きっとそうなのかも知れない。


夫婦って何なんだろう。
全くの他人のはずなのにね。





そんないきさつで、郵便受けを破壊されても、「ごめん」の言葉が無くても
ハニバニはアレンさんに取り立ててあれこれ言いたくなかったのでした。


私たちにできるのは、アレンさんの残された日々が穏やかであることを祈るだけ。


あの日ハニバニが、「僕たちで良ければいつでも話は聞きますから」と
アレンさんの奥さんに言ってくれたこと、嬉しかった。







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