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去年の9月、夫婦って何と言うタイトルで、お向かいに住む夫婦の話をしました。
今日は、その「夫婦って何」の続編。
というか、はっきり言って、完結編です。
アレンさん、実は2月に亡くなっていました。
みんな知らなかったのです。
アレンさんの訃報を知ったのは、隣に住むシーラから聞いたから。
3月中頃でした。
彼女は病院で仕事をしていていろんな書類を扱うのだけど
その日、ちょっと前に死亡された患者さんの書類を見ていて、
「この名前は...」と思ったらやっぱりアレンさんでした。
ここでは記事にしませんでしたが、なんと今年の元旦に
救急車で運ばれるアレンさんを見かけました。
それから暫くして家に戻られて、それからまた暫くして
アレンさんのご家族がどこか別の州からこられてて、
「ああ、お見舞いかな」と思っていたけど、
あれが2月の最初ぐらいだったので、もしかしたら
お別れに来てらしたのだなとおもいます。
去年の9月に、余命は半年もないだろう言われたアレンさん、
本当にそれに従ったかのように逝ってしまった。
それからずっと奥さんの姿を見ることがなく、
ちょっと家に寄ってみようかと言っていた矢先の
Social Distancingの命令で、むやみに押し掛けるのも危険だと判断し、
奥さんを外で見かけたら声をかけようと思っていました。
数日前のこと。
いつものようにウォーキングへ出かけようと外に出たら
ちょうど奥さんが買い物から戻ってこられたので
距離を保ちながら駆け寄ってお悔やみを言いました。
奥さんはとても疲れた様子だったけど、元気な犬が3匹いて、その世話でなんとか気力を保っている感じでした。
少しずつ、アレンさんの最期のことを話してくれました。
アレンさんは容態が悪くなる前の日も、奥さんが言うことに対して反抗的で
ケンカ腰な口調はいつもと変わらない感じだったそうです。
私とハニバニはそれを聞いて、少し苦笑いをしました。
ハニバニが「ご結婚されて何年目だったの?」と聞くと、すこし照れた顔をされて
『今年で20年だったのに』と言った瞬間、涙がボロボロと奥さんの目から落ちました。
「僕はアレンさんのこと好きでしたよ。」と、他の人がまず言えそうにないことをハニバニが言うと奥さんは、
『私はあの人のことが大好きだったの。』と泣き崩れました。
本当なら駆け寄って、抱きしめてあげたかった。
コロナのせいで、それが出来ない。
もし私たちが菌保持者だったら、奥さんに多大な迷惑になるし、
奥さんの命まで危険な状況に晒してしまう。
まして奥さんには傍に家族がいないんだった。
(奥さんはルーマニア出身)
そして奥さんが菌保持者ではないとも限らない。
アメリカでは、ここまで神経質にならないといけないほど
厳しい状況にあるのです。
今アメリカは、愛する人が入院しても、そしてその愛する人が亡くなっても傍にいることが許されない状態。
治る見込みのない重篤な人は一人で亡くなってゆき、お葬式すらさせてもらえないのが現状です。
人が集合することが禁止されているので、家族の一人が亡くなって、車に乗ったまま棺を見送った人もいるそうです。
ちょっと信じがたいでしょう?
これが今のアメリカ。
奥さんが心配そうに見つめる3匹の犬に気が付いて涙を拭いて、
ハニバニが「僕たちに何か出来ることがあったら」と言って電話番号を渡すと、
「向かいなのでドアを叩くわ」と言った後で「あ。それも今はダメね」と少しふふふと笑って、
私たちはウォーキングへ出かけた。
それにしても、奥さんは本当にアレンさんを愛していたんだねーと、
ハニバニと歩きながらしみじみ話した。
あんなに罵倒されて、お別れ間際も酷いことを言われたはずなのに。
それはきっと、私が食べられないラム肉をハニバニは美味しいと言うように
その人しかわからない、感じ取れないものがきっとあるんだろう。
夫婦って何。
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