健康に強い関心を持っている人がいる。この年齢だから仕方ないのかも知れないが、テレビや雑誌の健康情報にとても敏感だ。塩分は控えめに、濃い味付けのものは避けて薄味のものを、高血圧の人は特に注意が必要と言う。薄味では美味しくないと聞けば、唐辛子とかワサビとか、辛いものを添えればいいと述べる。辛いものが苦手な私は食べられない。
「朝は何を食べますか?」と聞くから、「牛乳にパンに、果物にヨーグルト」と答えると、「最悪の朝食です」と言う。「朝はごはんに味噌汁、焼き魚に漬物が一番です」。パンや牛乳やヨーグルトは身体に悪い。「バナナも食べています」と言うと、バナナもダメだと言う。バナナは健康によいとテレビで報じたために、スーパーマーケットで品切れが生じたことがあったのに。
ブルーベリーとかキウィーとかマンゴーなどもダメなのだろうか。ハムやソーセージはもちろん卵もよくないのはなぜなのだろう。私は肉が好きだけれど、「肉を食べるなら、野菜を食べてからにしなさい」と言う。無意識に美味しいものから食べていたけれど、繊維質の多い野菜をたっぷり食べて、それから肉類のたんぱく質を食べた方がよいという指摘だ。食べる順番まで考えなくてはいけないの?と思ってしまった。
結論が先になるけれど、好きなものを好きなように食べて、早死にしようが、病気になろうが、それこそ自業自得で、受け入れなくてはならない。私の井戸掘り仲間はみんな酒飲みで、「酒を控えて、1日長生きしようが1年長生きしようが、どれほどの意味があるか。うまいものを食べ、美味しい酒を飲み、愉快に過ごせずに、長生きしても価値はない」と豪語する。私はよき友に恵まれている。
「そういう身勝手な生き方の人は必ず天罰が下る」とか、「本人はそれでもよいけれど、長患いになれば大変なのは家族なのだから、少しは健康に気をつけて長生きして欲しい」などと言われる。既に70歳を越したのだから、何時お迎えが来てもよいと考えているのだ。いや、元気に生きて早めにお迎えが来ることを望んでいる。そのために、健康によくないと言われることでもやっていると考えられる。
健康のことをいろいろ考えるのは歳を重ねてきた証拠だ。若い人はそんなことに関心がない。「くよくよと思うより、おおらかに暮らせ」。先輩の生き方を大切にしたい。