「火神」第68号
(いてふ集)
賞状の筒
永田満徳
間断なき金槌の音迎へ梅雨
シャワー浴び罵詈雑言を流しけり
推敲や時折うなる冷蔵庫
とんぼうの骸は風となりにけり
鰓呼吸したき残暑の夜なりけり
野分あと雲は途方にくれてゐる
鞄より賞状の筒豊の秋
どんぐりの落ちしばかりの光りかな
縄文の匂ひして栗焼かれけり
海見ゆる尾根行きにけり
「火神」第68号
(いてふ集)
賞状の筒
永田満徳
間断なき金槌の音迎へ梅雨
シャワー浴び罵詈雑言を流しけり
推敲や時折うなる冷蔵庫
とんぼうの骸は風となりにけり
鰓呼吸したき残暑の夜なりけり
野分あと雲は途方にくれてゐる
鞄より賞状の筒豊の秋
どんぐりの落ちしばかりの光りかな
縄文の匂ひして栗焼かれけり
海見ゆる尾根行きにけり
月刊誌「俳句界」4月号!
〜俳句大学 Haiku Column 「今月の秀句」2020・4〜
◆俳句総合誌『俳句界』4月号が発行されました。
◆俳句大学 〔Haiku Column〕の「今月の秀句」から選句・選評した句を掲載しています。また、「俳句界」2019年1月号から毎月連載しています。
◆ 向瀬美音氏は日本語訳の改善に着手している。五七五の17音の和訳は、HAIKUをただ端に日本の俳句の五七五の17音にしただけではなく、原句のHAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきたい。
◆例えば、ある日本の国際俳句大会で「飢えた難民の/前に口元に差し出す/マイクロフォン一本」の俳句が大会賞を受賞しているように、三行書きにしただけで散文的な国際俳句が標準になっていることに危惧を覚えて、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2017年7月にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加する機関紙「HAIKU」を発行しました。12月20日発行の2号では91人が参加しました。また、5月31日発行の3号では96人が参加し、320ページを数えます。さらに、12月26日発行の4号では112人が参加し、500ページを数えます。そして5号では150人が参加して、550ページを越えて、8月1日に出版しました。また、2020年3月25日には「国際歳時記」の第1段として【春】を出版しました。
◆最近では華文二行俳句のコンテストを行い、華文圏に広がりを見せて、遂に、2018年11月1日にニ行俳句の合同句集『華文俳句選』が発行されました。
◆総合俳句雑誌「俳句界」2118年12月号(文學の森)の特集に「〔Haiku Column〕の取り組み」について」が3頁に渡って書いています。
◆『俳句界』2020年3月号の特別レポートにおいて、熊本大学で行われたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。
◆どうぞご理解ご支援をお願いします。
Avril aout de 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haikus du mois de Haiku Colum de Haiku Universite〜
◆Le Avril de aout de HAIKUKAI俳句界 vient d'etre publie.
◆il contient les meilleurs haikus du mois selectionnes par M. Nagata.
◆Selon ce plan nous allons continuer a publier des haikus en deux lignes avec kire et toriawase.
The April issue of 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haiku Colum of Haiku University [Monthly best Haikus]〜
◆the April issue of HAIKUKAI俳句界 has just been published.
◆It contains the best haikus of the month selected by M. Nagata.
◆according to the plan, we will continue to publish 2 lines haikus with kire and toriawase.
【今月の秀句(monthly excellent Haikus)】 永田満徳選評・向瀬美音選訳
|
(Facebook「Haiku Column」より)
※
マリン ラダ
春なれや吾子の机に色鉛筆
〔永田満徳評〕
机の上に並べられた色とりどりの鉛筆の中でひときわ明るい黄色や赤の暖色系の「色鉛筆」。それを見ていると、いかにも春らしさを覚えた瞬間を言い留めていて、共感が持てる。
Marin Rada
creioane colorate -
primăvara pe masa copiilor
crayons de couleur -
printemps sur la table des enfants
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
Sur la table, de nombreux crayons colorés sont alignés, en particulier jaune ou rouge. En regardant ces crayons colorés, nous nous rendons compte que le printemps est arrivé.
Nous apprécions bien cette joie.
※
クレール ガー ディアン
野遊や林檎酒の瓶耀ひて
〔永田満徳評〕
暖かくなり、野山に出て遊ぶのに、「林檎酒」を携えているところが面白い。「耀ひて」という措辞に、春日に照らされた「野遊」の楽しさ、喜びがよく表現されている。
Claire Gardien
reflets de miel sur nos peaux pâles
la bouteille de cidre du pique-nique
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
Il est intéressant de parler du cidre pour la joie de jouer dehors. En utilisant [reflets de miel] ce haïku décrit bien la joie du pique-nique avec le soleil du printemps.
※
エルベ ル ガル
春闌くやそぞろ心に旅行など
〔永田満徳評〕
春先はまだ肌寒く、「旅行」に出る気になれない。しかし、春も深まり、「春闌く」頃は「心」もうきうきしてきて、どこかを旅しようかと思案したくなるもので、春闌の頃の雰囲気がよく捉えられている。
Hervé Le Gall
désir de voyage
le plus beau est maintenant
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
Au début du printemps, il fait encore froid et nous ne voulons pas voyager. Mais le printemps est en pleine floraison, nous sommes heureux de penser au voyage. Ce haïku décrit bien le printemps complet.
【今月の季語(Kigo of this month)】 永田満徳選評・向瀬美音選訳 |
(Facebook「Haiku Column」より)
麗か うららか uraraka / beautiful, lovely, cheerful / beau, clair, serein
※
ファビオラ マラー
麗らかや髪に空の色のリボン
Fabiola Marlah
beau matin
aux cheveux son ruban bleu ciel
ナジャ ナジャ
麗らかや一日二回の古時計
Naeja Naeja
vielle horloge
juste deux fois par jour
風光る かぜひかる kazehikaru / shining wind / vent éblouissant
※
ラチルダ ジェルビ
※
風光る手に手を取つて行く老人
Rachida Jerbi
printemps éblouissant
les vieux d’à cõté se promènent main dans la main
※
タンポポ 亜仁寿
二人乗りのママチャリの母子風光る
タンポポ 亜仁寿
mother and child on the two seater of ladies' bicycle
glowing wind
薄氷 うすらい usurai / thin ice / glace fine
※
アンゲラ ギオルダーノ
より青き空のかけらよ薄氷
Angela Giordano
ghiaccio sottile nel fossato -
più azzurro il suo pezzo di cielo
※
コリナ クレイスティン
君の答へに嘘のありけり薄氷
Corina Cristian
gheață subțire
minciuni în răspunsurile tale
バレンタインデー ばれんたいんでー barentainde- / Valentine’s Day / la Saint-Valentin
※
エリック デスピエール
バレンタインデー隣で同じ夢見たり
Eric Despierre
Matin de Saint Valentin
Côte à côte les memes rêves
※
シルビー テロラレズ
ランドセルに手紙一通バレンタインデー
Sylvie Theraulaz
une lettre dans son cartable -
Saint-Valentin
予備(もし入るならば)
日脚伸ぶ ひあしのぶ hiashinobu / day getting longer / le jour s’allonge
※
シウ ホング
幾たびも囁く名あり日脚伸ぶ
Siu Hong
day getting longer
whispering your name over and over
※
カメル メスレム
日脚伸ぶ水平線にヨット浮く
Kamel Meslem
Le jour s'allonge
par dessus les vagues douces les voiles à l'horizon