俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜 季語で一句 62 〜
◆2025年『くまがわ春秋』1月号(第106号)が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R7.1月号)
時雨(しぐれ) 「冬―天文」
辻井市郞
上千本しぐれてはるる下千本
【永田満徳評】
「上千本」「下千本」とは奈良県の吉野山のこと。下千本、中千本、上千本、奥千本はそれぞれの桜の見頃。標高の低い順に下千本から徐々に花を咲かせる桜の名所である土地の特色をよく描いている。
【季語の説明】
「時雨」は冬の初め、晴れていても急に雨雲が生じて、しばらく雨が降ったかと思うとすぐに止み、また降り出すということがある。本来は京都で見られる現象で、「北山時雨」などとも使われていたが、しだいに都会でも冬の通り雨を時雨と呼ぶようになった。時雨は降る様子から定めなさ、はかなさが本意とされてきた。
雪(ゆき) 「冬―天文」
藤澤迪夫
降る雪の騒吸うて黙吐きにけり
【永田満徳評】
「雪」は空気の振動を吸収してしまうので、音が遠くまで響きにくくなり、静かに感じる。「騒」と「黙」という対義語を使い、「吸う」と「吐き」と擬人化して、「雪」の音に対する物理的関係をうまく表現している。【季語の説明】
「雪」は大気中の水蒸気から生成される氷の結晶が空から落下してくる。やや高い温度では集まり、雪片をつくり、水分を含む湿った雪になる。直径1cmほどの小さなものを「粉雪」、綿状に集まったものを「牡丹雪、ぼたん雪、ぼた雪」と呼ぶなど、気温や湿度によって違う雪の性状はいくつかの呼び分けがある。
橇(そり) 「冬―生活」
辻井市郞
運命を犬橇に託して北極点
【永田満徳評】
「犬橇(のそ)」と言えば、映画『南極物語』で話題になった「犬橇」の犬のモデルになったタロとジロのことを思い起こす。「北極点」という極寒の地の過酷な運命に抗して生きる「犬橇」の犬たちの活躍をよく捉えている。
【季語の説明】
「橇」は雪や氷の上をすべらせて、人を乗せたり、荷物などの運搬をしたりするのに用いる。古くから雪国の主要な交通手段であった。普通、馬に曳かせるが、犬に曳かせるものもある。寒さに強く、持久力に優れている犬に牽かせる「犬橇」は身動きがとりにくい雪道での交通手段・荷物運搬にも活動の場を広げてきた。
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