読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ローレンス・クラウスの『宇宙が始まる前には何があったのか?』

2014年02月19日 | 読書

◇『宇宙が始まる前には何があったのか?』
  原題:A UNIVERSE FROM NOTHING (WHY THERE IS SOMETHING RATHER THAN NOTHING  
    著者:ローレンス・クラウス(Lawrence M.Krauss)
    訳者: 青木 薫    2013.11 文芸春秋社 刊

      


 いつもいつもインターテイメントだけでは脳がやわになると最近話題の宇宙物理学の本に取り組
だ。
 読んでみれば、内容的にはなじみのない、飛んでもない知識領域の話で、著者はかなり噛み砕い
説明してくれてはいるものの、やはり難解で、何度か読み返す羽目になった。しかし確かにサスペ
スやハードボイルドにはない、今まで動かしていなかった脳の知的領域を刺激してくれる内容で、
2
週間以上かかったが、それなりの満足感を得た。
かつて車椅子の物理学者スティーヴン・ウィリアム・ホーキングの『ホーキング、宇宙を語る』を読ん
でいたく感銘を受けた記憶があるが、久々の脳の刺激と掃除である。

 
 何しろ話がでかい。銀河系以外に観測可能な宇宙には4千億以上の銀河がある。そしてこれらの
星団はどんどん離れつつあり離れれば離れるほど加速しているのだとい
う。ということは2兆年後
には銀河系以外見えなくなるのだという。ま、私はそんなには生きないけどね。

物質と反物質の僅かな揺らぎが今の我々の宇宙をそしてわれわれ人類も作った。それは無から有
が生まれるということである。わかります? こんな話は素粒子物理学の学者諸君の間では当たり前
に話され理解し合っているのだろうが、私ら素人には大雑把過ぎて理解の外。そんなこと究明して何
になるのといった感じではあるが、分からないことを究明することは大事なんだそうだ。「
自然を支配す
るプロセスについての知識を得ること、しかも未来を予測できるような―出来ればわれわれ自身の未
来に影響を及ぼせるような―知識を得ることが大事なのだ」と彼は言っている。

 ところで我らが住む宇宙の年齢はビッグバン以来の137億2千万歳なのだそうだ。
そして宇宙は平坦であるということ。えっ?なにそれ。平坦な先に何があるの。
 なんとんなく大昔まだ地球が丸いということを信じられなかった頃、海の果てには大きな崖があって
最後にはそこで全てが終わるという話に近いで、もしかすると何かが発見されてまた話が変わるの
かもしれない。

暗黒エネルギー、宇宙定数、宇宙マイクロ波背景放射、最終散乱面など耳慣れない術語が続くが、
完全に理解はできなくても、たまにはこのように宇宙規模の壮大な話にうつつを抜かすのもよい。

(ちなみに原題:A UNIVERSE FROM NOTHINGについている不定冠詞 Aはなんでだろう。
 宇宙はひとつ絶対的的なもので不定冠詞を付けるのはおかしいのではないかと不審に思った。
 ところが読み進むに従って宇宙は一つではないかもしれない―マルチバース(多宇宙)―という
 概念があるということで疑問が解けた次第)

                                              (以上この項終わり)

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