読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

『自閉症スペクトラム症ASDのおともだち』を読む

2019年05月29日 | 読書

◇あの子の発達障害がわかる本『自閉症スペクトラム症ASDのおともだち

               監修:内山登紀夫 2019.3 ミネルバ書房 刊

  

 「自閉症スペクトラム症」を知る本を読んだ。
 
2005年に「発達障害者支援法」が、2016年に「障害者差別解消法」が施行されて、
発達障害の人を支えていく制度的枠組みができたが、まだまだ社会一般に発達障害
についての理解は進んでいない。ただ多くの人との比較で、からだの認知システム
や物ごとを受け止める感覚が違って
いるというだけで差別され、人知れず苦し
でいる人たちは少なくないと思う。学校でも「合理的配慮」をすることになっ
ているとはいえ十分な体制がとられていないと思う。
 学校やコミュニティでASD(自閉スペクトラム症)にとどまらず、アスペル
ガー症候群(高機能自閉症)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)
などの人たちに
対する理解とサポートが進めば、彼らの世界はもっと平穏となり、
隠れた能力が発揮できるようになるに違いない。

 この本ではASDの実態とこれら障害を持つ人たちが、外部環境をどう感じ、受
け止めているのかを平易に答えてくれている。

(また監修者はいろんな発達障害を考える本を多数出版している。) 

 ASDの人たちは次のような特徴を示す。我々も強弱はともかく自分自身に思い
当たるところがいくつもある。
①感覚が鋭い。敏感。好き嫌いがはっきりしている。
②過剰な集中力。集中力にむらがある。集中していると他が見えなくなる。
③行動が切り替えられない。行動の順序など自分なりのルールがある。
④行動の段取りを考えるのが苦手。
⑤耳から聞き取り理解することが苦手。
⑥長いストーリーを追うことが苦手。
⑦いつもとちがうことが苦手で同じパターンで行動するのが得意。
⑧みんなと一緒に行動したり話し合ったりすることが苦手。ルールが覚えられない。
 自分の意見は譲れない。
⑨人の気持ちを想像することが苦手で空気が読めない。迷惑をかけているという
 自覚がない。
⑩匂いに敏感。味、舌触りに敏感。
⑪独り言を言う。飛んだり回ったりする。

私は先ごろASDと思われる少年を取り上げた小説『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
を読んだ。
 
障害を持った彼らがどんな風に他の人たちをとらえているか、人と接したとき
にどんな受け止め方をしているのかよく
わかって感動した。 

 この本の優れているところは、ASDの特徴やASDの子らがどう感じているのか、
どう対処すればよいのかなど基本的なことのほか、
①ASDの人によくある行動シーン
②周りの人たちのよく見られる反応
③ASDの人の心の裡の声
④ASDの人のとらえ方を知ってみんなが感じたこと
⑤どうすればASDの人たちとうまくやっていけるのか等々
至極丁寧に整理され,子供らや教師などにわかりやすく説明されていることだ。

 ASDは心の病気ではない。生まれつき脳に障害があっただけ。この基本認識
を持てば、人はみな違うもの。それを認め合うことが大事ということがわかる。
「多様性」とはそういうものではないのか。発達障害者も、他の知的障害舎も
身体障害者も、求めてそうなった人はいない。生まれたときは一緒、ただ少し
ずつ違っているだけ。そんなことを深く考えさせる本でした。
                          (以上この項終わり)

 

 

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