◇ 『魔眼の匣』
著者:今村昌弘 2019.2 東京創元社 刊
『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。
もちろん主人公は神紅大学ミステリー愛好会会長葉村譲と唯一の会員剣崎比留子。
(最も会員は2名しかいない)前会長の明智恭介は前作の「娑可安湖集団感染テロ事件」
で亡くなっている。
葉村と剣崎は名コンビであるが、葉村は剣崎比留子の推理力には遠く及ばない。
葉村と剣崎の二人は、前作の事件で影の策動団体と目されたM機関がかつて支署のひ
とつで超能力の研究を行っていたらしいとの情報誌記事があり、W県〇郡の好見村に向
けて旅立つ。
二人は村に向かうバスで一組の高校生カップル(十色と茎村)に出会う。十色冴子は
超能力者。出来事の直前に情景が脳裏に浮かび、それを絵に表現する異能を持つ。茎村
はその擁護者。
そこに情報誌の記者臼井、道に迷ったイケメンのサラリーマン王寺、車のガス欠で
ガソリンを探す親子連れ師々田厳雄・純それに好見村の旧住民の一人朱鷺野が加わる。
橋終点からの山道のはずれに地上1階地下1階、2階建ての建物が現れた。これがM機
関の研究施設だったところ。
現在はサキミという研究被験者だった一人の老婆と介助者の神服泰子が住んでいる。
サキミは未来を見通す預言者。「今月の終わり2日間にこの村で男女4人の死者が出
る」と予言しているという。
そんな中、この建物「魔眼の匣(はこ)」に行き着く唯一の橋が何者かによって焼か
れ、この建物はクローズドサークルと化す。取り残された9人のうちだれが死ぬのか。
また誰が犯人なのか。
剣崎らはサキミからテロ事件へのM機関の関与を聞き出すのが目的だったのであるが
予告殺人の渦中に入ることになった。
予知能力者とクローズドサークルを組み合わせた傑作。デリケートな時間差を操る犯
行。剣崎比留子の推理が冴えわたる。
(以上この項終わり)