読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

キャサリン・コールター『略奪』

2021年03月09日 | 読書

略奪』(原題:THE FINAL CUT)

著者:キャサリン・コールター(Catherine Coulter & Elison)

訳者:水川 玲     2014.9 双海書房 刊
  
 
 この作品の根っこにあるのは、伝説のダイヤモンド(793カラット)にまつわ
る神話的魔力である。
 英雄神クリシュナに始まりインドのシング一族に語り伝えられたダイヤモンドの
魔力(不老不死と世界征服)を再現させるために第4代目の子孫はイギリス王家に
伝わる伝説のダイヤモンドの片割れを奪還しようと希代の盗人に依頼する。これに
立ち向かうのがロンドン警視庁の警部とアメリカFBIの捜査官。
 三つ巴の戦い、騙し合いが痛快なエンタメ小説である。訳者は本格ロマンチック
サスペンスであるという。

   アメリカNY州メトロポリタン美術館に貸し出されたイギリス王太后の王冠のダ
イヤモンド コ・イ・ヌールが盗まれた。ロンドン警視庁のエースニコラス(ニッ
ク)・ドラモンドは急遽ニューヨークへ飛ぶ。
 何しろ輸送担当員として王冠と共にNYに渡った相棒で恋人でもあるイレイン・
ヨーク警部補殺害の悲報が届いたからだ。

 多くの状況と証拠がイレインが盗難の犯人を物語っていてFBIのマイクらとニッ
クは困惑する。調べが進むと1年前にメトロポリタン美術館に採用され現在はキュ
レーター(美術館管理専門職)となっているというビクトリア・ブラウニングが
実は「フォックス」と異名をとる美術品窃盗犯であるという結論になり、後を追
うがまんまと逃げられた。

    フオックス(キツネ)は大物の美術品収集家サリーム・ライナハンに「金はい
くらかかってもかまわない」と言われ、2500万ドルで請け負った。メトロポリタ
ン美術館に職員として1年前から入り込んで、美術品の展示管理部門のキュレータ
ーの地位に就いたのである。じっくりと練ったプランで果実を得る時に至った。
 
  ニコラスとFBIのマイク捜査官はフォックス(キツネ)の巧妙な逃亡ルート
を追う。これまで盗みはすれども人殺しまではしなかったキツネが、イレイン
とその護衛役と思われるロシア人の男性をなぜ殺したのか。後ろにいる王冠の
ダイヤモンド窃盗依頼人は誰なのか。

 抗争の舞台はジュネーブからパリへと目まぐるしく変わる。キツネを育て盗
みの師匠であったマルベイニーがラナイハンと組んでいた。父祖以来の伝説の
3個のダイヤは合体し伝説の魔力を発揮し白血病を病むラナイハンのがん細胞
が消えた。彼は不死の身体を得てこの世の神となったことを知った。
 なんとも荒唐無稽な結末で、リアルの世界とのあまりの大きな懸隔に唖然と
するばかり。

                        (以上この項終わり)
 
 

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