読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

くそったれ、美しきパリの12か月

2008年01月07日 | 読書

ドキュメンタリー風フィクション
 「A Year in the MERDE 」スティーブン・クラーク著村井智之訳(ソニー・マガジンズ)

 最初図書館で本の背表紙の「くそったれ・・・」を見て、なんと品のない、タイトル
 にするにはあまりにどぎつすぎるではないかと思ったが、読み進むと満更「糞
 (といっても犬の糞)」に縁がない話でもなく、「くそ(merde)」対してそれなりの
 恨みがあるようなので、まあ仕方ないかと思った。
 パリの日常生活・ビジネス世界の様子が良くわかる。
 作中の主人公は27歳の英国人の若者。フランスに英国の本格的な紅茶カフェ
 を展開しようという会社にヘッドハンティングされてパリにやってきた。作者は自身は
 50歳のジャーナリストで、この話もフランスにおける10年間の滞在体験がベースに
 なっている。当初200部を自費出版したところ口コミで評判になり、フランスの新
 聞の書評デ取り上げられたことから一気にブレーク。いまや世界15カ国で
 ベストセラーになっているとのこと。(わが国では2006.1初版刊行)
 フィクションなのでそれなりにストーリーはあるのだがこの本のおもしろさは、なんと
 言ってもその語り口のおもしろさであろう。エスプリ(フランス語)の効いた風刺は
 英国紳士の必須要件とされているが、英国人特有の冷めた目でかなりきつ
 いことをグサッという面白さが随所にあって、思わずにやりとしてしまう。また
 キリスト教が主力のお国柄なのに、フランス人はかくも男女関係がルーズなのかと
 耳を疑ってしまう場面が、これでもかと出てくる。先ごろわずか5日間ではあ
 ったがパリの街をうろついて、幸いストにも遭わず、犬の糞もお目にかかった
 ものの滑って転ぶ羽目にも遭わなかったので、これほど悲憤慷慨はしない
 ですんだ。
 「へえ、そうだったんだ。」という話もいくつも出てくる。古来英仏は犬猿の仲
 で知られているが、隣り合っているだけに安心しきって悪口を言い合ってい
 るふうがある。

      
 

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