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◆中川博司 委員 先般、海外調査の報告を議員各位にもさせていただきましたけれども、農政林務委員会から推挙されて、ベトナム、カンボジアの海外調査に行かせていただきましたので、それに関連した質問と併せて一般質問に関連したものを少しお聞きさせていただきたいと思います。
一つは、市場開拓についてです。ベトナムは非常にハードルが高いところです。カンボジアはほとんどのものが輸入できているんですが、ブドウと桃は、今、農林水産省でかなり協議が進んでいると、この1年以内に結論を出すということをおっしゃっていました。そこで長野県としては、今後、協議が進むということを前提にして考えれば、どこと協議をしながら、どのような動き方をしていかなければならないのかと考えているかということについて、御回答ください。
◎片井基典 農産物マーケティング室長 委員長の報告書を見せていただきまして、ベトナムの可能性は、以前より大分進展したなということは感じさせていただきました。
現状、長野県、日本からベトナムへの輸出は、委員長がおっしゃられるとおり、大変厳しいような状況でございます。果物でいうと、リンゴ、梨が輸入できます。実績的にはあまりないわけでございますけれども、今後はブドウ、桃も条件が設定されるというような見込みとも聞いております。
私どもも国に対して、ベトナム側でブドウ、桃の輸入を解禁していただきたいと、そんな要請を6月、11月もさせていただきました。特にブドウにつきましては、重点品目ということでありますので、仮に解禁となった際には、大変期待しているところでございます。
現状、国の動きとしましては、ベトナム側で病害虫のリスク評価結果というものが出されたということです。簡単に申し上げますと、ベトナム側として日本からの輸入の際、日本側での栽培上、特に注意したい、留意したい、病害虫が選定されたということでございます。具体的に数種類とは聞いておりますけれども、そのリスク評価を受けまして、日本側として産地として病害虫対策にどう対応していくのか、産地として負担が大きいのかどうなのか、それを国側では協議し、ベトナム側と協議をしていくと、そういう段階になっているということです。
今後、植物検疫の条件が設定されるということでございますが、私どもとしましては、どんな条件かはなかなか計り知れないわけでございます。ですが、既存の長野県の栽培方法でクリアできる条件であれば、特にブドウについては大変期待できるものとも思っておりますので、ベトナム側のニーズ、どういった商品が好まれるのか、そういったものをしっかり把握しながら、遅れを取らないような対応をしていきたいと考えております。また、そういった情報を産地の皆さんに情報提供しながら進めていきたいと考えております。
◆中川博司 委員 次に人材確保の課題についてです。
6月定例会の一般質問でもやりましたけれども、例えば川上村でいうと、インドネシアの人が今は一番多くて724人、ベトナムの方が336人、次いでフィリピンが80人です。ほかを合計して1,237人が川上村には働いていますが、川上村の人口は4,647人ですので、実に27%に当たるんですね。南牧村が18%、群馬県の昭和村が7%ですので、これはいずれも高原野菜の産地なんです。
川上村役場の農政担当者のお話も聞いてきましたけれども、本当に外国のこうした実習生の人がいなければ川上村の農業は成り立たないのだと、こういう現状にあるということも言われていました。農家の方も外国の方に来てもらえるように選ばれる努力を行っていますし、法律に基づく住居環境の整備も行っています。過去にはベトナムの方が多かったわけですけれども、そのときには役場にベトナムの方をコーディネーターとして雇って、様々な相談にも乗っていたそうです。現在はインドネシアの方が多いということで、受入れ機関が川上村にあるということです。
私もベトナムに視察に行ってきて、お話を聞いてきたのは、ベトナムの人材は高度化してきていて、農業分野における技能実習生が今後少なくなっていくのではないか。また、インドネシアも今後少なくなっていくということが言われている中で、特にカンボジア政府が送り出しに極めて積極的です。ただし、視察した送り出し機関に聞くと、過去の労働環境が悪かったというイメージがまだ残っているそうで、そこら辺を払拭していく必要があるということも言われました。ちなみに、10月に日本の全国農業会議所が主催をして、プノンペンで現地説明会を行っていますけれども、これに長野県が参加しているのかどうか、分かったら教えてください。
いずれにしても、労働環境が改善されているというメッセージが必要なことと、それから、カンボジア側からの日本側の受入れ機関が長野県内にないということがあるものですから、なかなか成立しないんですね。したがって、産業労働部、それから、国際交流課などとカンボジアからの労働者の受入れについて、対策会議、連絡会などを行っていく必要があると思いますので、その点についての所感をお願いします。
◎佐々木直人 農村振興課長 人材確保の関係で2点お尋ねをいただきました。
まず1点目、10月の全国農業会議所が開催した現地説明会、これですけれども、長野県は参加しておりません。また、長野県から参加した農業経営体があるかどうかということにつきましては、すみません、把握はしてございません。
次に2点目の対策会議等をやっていく必要があるんではないかという御質問でございます。まず委員のお話にあった受入れ機関なんですけれども、こちらで確認しましたところ、長野県内にカンボジアの公用語で相談対応が可能な機関が県内には13か所ございます。実は今年に入りまして県の産業労働部労働雇用課、企画振興部の国際交流課、さらには県民文化部県民政策課と情報交換を開催するようになってまいりまして、御指摘のとおり、各部局の連携は大変重要だと考えております。
登録支援機関との意見交換の中では、長野県は宿舎等の設備が整っておりまして、さらに作業現場に近い位置に宿舎があるというようなことがございますので、他県と比べると、そういった条件としては優位なところにあるかなと聞いているところでございます。
いずれにしましても、そういった好条件というようなものをどのように相手国に伝えていくかということも含めまして、引き続き関係各課と連携しながら、受入れ環境の整備等を検討してまいりたいと考えております。
◆中川博司 委員 ぜひよろしくお願いします。併せて言うと、私どもが行った後に、韓国は政府がカンボジアに職業訓練学校をつくるとか、かなり力が入っていて、政府に対しても長野県から要望していかなければいけない課題もあるなと思っています。
次に有機農業の課題について、昨日から委員の皆さんからも取り上げていただいているところです。ゼロカーボンの施策として、国はみどりの食料システム戦略の中で、2050年に有機農業の耕地を100万ヘクタール、耕地の25%にする目標を立てています。昨日の答弁で、現在、長野県は615ヘクタールということだったわけですけれども、長野県でいえば25%というのはどのぐらいの面積になるのかということが1点。
それから、615ヘクタールの中には農薬、化学肥料を半減する特別栽培は入っているのかということが2点目。
そして、これは提案なんですが、みどり戦略は農薬を50%低減、化学肥料を30%低減が目標ですので、特別栽培の拡大を図りながら、化学肥料をそこから20%低減する技術を指導していくほうが極めて現実的ではないかということを提言します。その点についても、もし感想等があれば、お願いします。
◎村山一善 農業技術課長 有機農業の推進に関して、2点御質問いただきました。
まず1点目の国の有機農業の目標25%を加味したとき、長野県でいえばということでございます。耕地面積が今10万4,000ヘクタール、それを基にしますと、25%といいますと2万6,000ヘクタールになります。ですので、委員のお話にあった、令和4年になりますけれども、615ヘクタールだと、まだ2.4%というような状況でございます。
次に二つ目として、615ヘクタールの内訳に農薬、化学肥料を半減する特別栽培が入っているのかということでございますが、これは入っておりません。実際、御提言がありましたみどり戦略に国が掲げている農薬50%低減、さらには化学肥料30%低減というものも踏まえて、化学肥料をさらにプラス20の50%にということ、まさに県としても有機農業に一気に持っていくには、ハードルが非常に高いところもございます。段階的に例えば3割、5割というようなことで、順次ステップアップを図っていければと考えております。まさにできるところからしっかりとステップアップしていくという形で、しっかり支援をしていければと考えております。
◆中川博司 委員 農林水産省が来年1月16日にオーガニックビレッジ全国集会をオンラインで開催するということです。オーガニックビレッジ宣言をしている長野県内の自治体の話を聞き取りすると、なかなか全て使いにくいというお話を聞きます。県としてはその点でどのような対応をされているのかということと、今後さらに手を挙げてくれるところが結構あるのではないかなと思うんですが、そこら辺をどのように集約されているかというお話をお聞かせください。
それから、ロット大中小の話は先ほど片井室長からお話があったので省きますが、認証制度の話です。この秋から県独自の認証制度をやるというお話が以前にありましたが、その点はどうなっているのかお話しください。
◎村山一善 農業技術課長 有機の関係で2点御質問をいただきました。
まずオーガニックビレッジ宣言の関係でございます。オーガニックビレッジ宣言をした市町村については、いろいろな取組に国が支援するということでございます。3年間の支援になるんですが、取組内容を実際にどうしていくかということで市町村も迷っておられるところがあります。これについては、県として農業農村支援センターが宣言した市町村に寄り添いながら、一体的にどういうふうに有機、ないしはそういった環境に優しい農法を広めていくかということで、いろいろアドバイスをしながら一体的に進めているところでございます。さらにオーガニックビレッジ宣言をした市町村を一同に集めていろいろな交流会とか、意見交換の場を設けて、それぞれの宣言した市町村が相乗的に向上していけるような形で取組を進めているところでございます。
さらに今後のオーガニックビレッジ宣言をする市町村の状況ですけれども、県では長野県食と農業農村振興計画の目標として、令和9年に10市町村という目標を持って取組を進めているところでございます。本年度新たに2市が宣言をして、今年で6市町村になります。数市町村が興味を示して、相談もありますので、当面は計画に掲げる10市町村を目指して着実に進めていく。さらには先ほどお話ししました実際の取組の内容が充実するように、しっかり支援をしていければということでございます。
もう一点については、県の新たな認証制度の取組状況でございます。先ほども説明しましたけれども、有機農業に持っていくにはいろいろ段階的なところが必要だということで、これまでの信州の環境にやさしい農産物認証制度については、50%以上を削減する部分を認証してきたんですが、新たに100-100認証ということで、化学農薬、化学肥料を100%削減するものを県が認証できればということで検討を進めてきたところでございます。
実は当初はこの秋にということで取組を進めていまして、令和5年からこれまで、先ほどのオーガニックビレッジ宣言をした市町村へのヒアリング、さらにはその後、全市町村にこういった認証についての御意見も伺う中で、いろいろ枠組みを決めてきたところでございます。その上で今年に入って実際に有機農業者、さらには有機の専門家の方々の意見をお聞きして、その制度の最終的な構築をということで進めてきたところでございます。
有機農業企画委員の皆様から有機JASとのすみ分けですか、それを一般的に示したときに、混乱というのですか、どこに違いがあるとか、そういったことをしっかり明確にすべきだとか、この認証のニーズは実際にどういうところにあって、誰向けのどういった目的でとか、そういった細かいところまでしっかりと整理をした中で進めていくべきだということ。あと、この認証とは別に生産者と引き取る二者で合意が得られるような、二者認証という部分もしっかりと県として進めていくべきではないかということで、県としてガイドラインをつくったらどうかという意見をいただいておりまして、新たな認証と並行して、併せて検討しているところでございます。
当面、今お話ししました二者認証のガイドラインについては、今年度中にしっかりと策定をしていければということ。あと、新たな認証については、来年度試行的に実施してみたいというような市町村もおります。制度の枠組みを固めながら、実際の運用の中でしっかり進めていけるかという部分も確認しながら進めていければということで考えております。当初の予定より若干遅れておりまして、大変申し訳ございません。
◆中川博司 委員 ちなみに、飯田市は30%、50%で認証制度を始めるというような話も聞いているところです。有機JAS認定をされている皆さんからの戸惑いというのも私は分からないわけではない。ただ、一般質問でも申し上げましたけれども、今の615ヘクタールを2万6,000ヘクタールにするわけですから、みどりの食料システム戦略をダイナミックに進めていくにはやはり底辺を大きく広げていくということが必要なので、その点でこの認証制度が必要だということをぜひ御理解いただければありがたいなというふうに思います。
あわせて、昨年、あふの環2030プロジェクトのサステナアワード2023で、消費者庁長官賞を北アルプスオーガニックプロジェクトが受賞しました。それから、先頃、小布施町のくりのみ園が環境省の第12回グッドライフアワードで実行委員会特別賞を受賞しています。環境省マターなので、農水省の方は御存じないかもしれませんが、ここは先ほど丸山委員が質問した農福連携なんですね。農福連携で就労支援事業として平飼いの鶏を飼っています。日々生まれる鶏のふんを利用して循環型農業もやっているということが認められて表彰されています。国の食料・農業・農村基本法の環境への負荷の低減の観点から、みどりの食料システム戦略をさらに前に進めていく必要があるということは共通の認識だと思いますので、ぜひ部長の見解をお伺いしておきたいと思います。
◎小林茂樹 農政部長 今、総括的な御質問をいただいたわけでございます。
有機農業の推進というのは、私も実を言うと有機農業の初代の担当者でございましたので、思い入れがございます。有機農業を進めるということは、慣行農業との違いとか、そういったものを理解いただく中で進めなければいけないということで、多くの方の理解が必要と考えてございます。
私も、始めた当初からこういった農福連携も含めた施設の方々が関心を示して取組をされておる事実を承知してございます。今後はダイナミックに展開していくには、多くの取組事例を面的な広がりを持って進めなければいけないと思っておりますので、県といたしましても、ほかの部局とも連携を図りながら推進を図ってまいりたいと考えておるところでございます。よろしくお願いいたします。
◆中川博司 委員 ぜひよろしくお願いします。
最後に、これも一般質問に関連するんですが、ワンヘルスの推進について、農政部マターのところで一つだけ聞きます。ワンヘルスに関係して、薬剤耐性菌について一般質問をさせてもらいましたが、日本においては、2016年に薬剤耐性(AMR)対策アクションプランがつくられて、これまで対策を進めてきているところです。
これまでの研究の結果、抗菌薬の使用量が多い家畜において、高い頻度で薬剤耐性菌を保有するということが明らかになっています。薬剤耐性菌は、動物を治療する際に抗菌薬の効果が低くなってしまうという動物衛生上の問題だけではなくて、人へ伝播するという可能性が指摘されています。動物から環境、そして、人への薬剤耐性菌の伝播経路の一つとして、家畜のふん尿を由来とする堆肥があります。抗菌薬の多くは生体内で代謝されず、ふん尿として排出されてしまいます。ふん尿内でつくられた薬剤耐性菌も、土壌から野菜などを通じて人へ伝播することが懸念をされているので、長野県内の畜産業における抗菌薬の使用状況とふん尿由来の堆肥の検査といったものが行われているかどうか、お聞かせください。
◎青沼健治 園芸畜産課長 ワンヘルスに係る薬剤耐性菌の関係でございます。
抗菌薬自体は、非常に安定的な畜産の経営のために疾病の治療に用いられております。また、疾病予防にも用いられている状況でございまして、県内の使用量自体は、農政部としては把握してございませんが、全国的には販売量が大体600トン弱の横ばい傾向という状況にございます。県内の利用は、主に養豚の飼料添加ですとか、乳用牛の乳房炎、これで使われておりまして、頭数換算で割り返してみれば、2トンぐらいが長野県で使用されている量ではないかというように把握してございます。
それからもう一点、堆肥の検査の関係です。堆肥につきましては、特殊肥料という形で県に届出をいただいております。その中では窒素・リン酸・カリウムですとか、生産工程、また、水分含有量等々の項目がございますが、こういった抗生物質の含量については検査をしていない状況でございます。
◆中川博司 委員 ワンヘルスの課題として、ぜひ農政部でもこれを前向きに受け止めてもらいたいと思います。私は知らなかったんですが、12月8日の日本農業新聞の中で、イエバエの幼虫やミミズを活用して家畜ふん尿を堆肥化すると薬剤耐性菌が少なくなるという研究結果があるそうなんですね。ぜひ研究をしていただければと思います。