こんにちは「中川ひろじ」です。

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憲法ゼミニュースNO6

2017-05-08 22:19:48 | 憲法ノート

3月13日、松本市勤労会館2F第4会議室で第6回憲法ゼミが行われ、17人が出席しました。

 

■第4章 国会 第52条~64条 

・レポーター、参加者の問題提起

第52条 通常国会は、毎年一回召集される

Q.なぜ「招集する」から「される」に変えたのか?

A.天皇が招集して、国会は召集されることを明確にするため。新憲法は天皇の権限を上げる形にしたい。

 

第52条2 通常国会の会期は、法律で定める。

Q.国会法で決められていることを、わざわざ憲法に規定する必要があるのか?

 

第53条 内閣は 国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。Q.なぜ20日以内と期限を決めた理由は。

A.現行憲法だと臨時会について四分の一以上の要求があっても、「決めようと思っていたら次の国会が来た」と開き直れる。国会の権能を強めるので、「いい改憲」といえるのではないか。

 

第54条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。(新設)

Q.総理大臣の権限が強化されるのではいか。

 

第55条 両議院は、各々その議員の資格に関し争いがあるときは、これについて審査し、議決する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

Q.裁判ではなく審査で行うことの意味は。

A.裁判だと、裁判の形態をとらなければならない。原告被告がいて、権利が侵されたと主張する人がいて、聞く人がいて、懲戒する人がいるという手続きが大事。それを審査にするということだから手続き的にはダウンしている。

 

第56条 2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない。

Q.現行は「議事を開き議決することはできない」だが。

A.議事は三分の一いなくても開けるということは問題。

 

第63条 2 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。

Q.答弁に不都合があれば、職務を理由に出席しないことも考えられる。

 

第64条の2 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。

②政党の政治活動の自由は、保障する。

③前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。

Q.なぜ新設されたのか?

 

・成澤孝人先生のコメント

 国会の権限の縮小ということは、草案を作った人たちが立憲主義を軽んじているということが良く出ている。この人たちだけではなく、実は政治改革の考え方が国会の権限縮小ということを前提としている。選挙で政党を選んで、その内閣が政治をやる政党本位だというあの政治改革の論理が憲法に書こうとしている。日本の憲法は国会の権限をきちんと書いている。立憲主義の歴史を押さえている。政治改革を一生懸命やった人たちは、国会の権限については蔑ろでした。イギリスをまねた。イギリスは「二大政党制で、マニュフェストで、小選挙区制で、国民はどちらの政党を選ぶのか」というのが、いいように見えた。

イギリスは、今は変わっている。イギリスでは解散もできなくなった。日本がイギリスの二大政党制をまねて政治改革をした結果、一強になった。イギリスでは逆に国会の権限が拡大しつつある。それがEU離脱の方にむかったということもあるが。間違った立憲主義を憲法に書こうとしている。イギリスの場合には憲法がないので法律で変えられる。今、イギリスの首相には解散権がなく国会にあるが、これは法律でつくった。解散制限法と呼ばれている。しかし憲法で総理大臣が決定すると決めてしまうと、解散制限法みたいな法律は違憲になる。現行憲法は解散については、実務は内閣が閣議決定をしている。小泉の郵政解散の時に島村農林水産大臣が解散に反対して、小泉が島村を罷免した。「ちょっと郵政解散おかしい」と言えた。自民党改憲草案だと言えなくなる。解散は首相の専権だというが、イギリスにおいてもどこにも書いてないが、王様の権限である。王様の権限を内閣の助言と承認で使うはずだが、ロイドジョージは、内閣に言わないで自分で王様のところに行って解散したことがある。その国王大権としての解散権を法律で剝奪した。日本の憲法は天皇が何も権限を持っていないはずなので、7条の国事行為は形式的権限。イギリスの王様が持っていた解散権を天皇派は持っていない。解釈上は内閣にも解散権はないという考え方が憲法学の中にはある。正確に言うと69条の場合には出てくる。不信任案が可決されたとき以外に内閣の解散権はないという考え方がある。

多数派は、7条説は天皇の解散権を前提としないと出てこないのでおかしい。議院内閣制には内閣の解散権が含まれているという考え方が通説となっている。

 イギリスでは保守党と自由民主党の連立政権があった。その時に少数政党に解散権があったのでは困るということで法改正が行われた。ところが日本では「解散したら議院じゃなくなるぞ」と自分の政党の議員も黙らせてしまう。与党の党首の権限が極めて強くなる、それを憲法に書こうとしている。バランスをおかしくする。与党には国会議員としての立場と政党としての立場がある。55年体制では国会議員としての矜持があったが、政治改革で政党のリーダー本位に変わった。

 ある識者がいっていることに、この政党本位のやり方だと参議院が邪魔になる。イギリスの貴族院は権限がない。日本の参議院は法律を阻止できるので強い権限がある。イギリス的な二大政党制、マニュフェスト、政権選択、首相のリーダーシップということになると参議院が邪魔になるから、参議院の権限を下げようと言っている。でも、それは自民党の改憲案にはない。自民党の改憲案は改憲したいというだけの改憲案ではあるが、リベラルな人も含めて参議院の権利を減らそうという人はいる。

63条2項は非常に問題。国会の権限は、国民に対して政府をコントロールするという大きな意味があったはず。55年体制においてはその建前が与党側でも尊重されていた。しかし政治改革の流れの中で、無視されそれを憲法に書くということになっている。イギリスは、こんなにずさんではない。コントロールもしようとしている。

 64条の2項、政党については憲法学で議論がされてきた。日本の憲法に政党が書かれていないことはいいことだ。政党を書くということは、これが政党だということを法律で書くことになる。ドイツは政党条項っていうのがあって、ドイツ共産党とネオナチは違憲無効で解散させられた。ドイツは民主主義が機能している。日本でそれやると、まじめな政党が結社禁止になってしまうかもしれない。政党ということを憲法に書かないということが大事であると、憲法学者の多くは考えてきた。政党は普通の結社でいい。イギリスも、アメリカも同様。法律に合わない政党は無くしてしまうということになる。

 

■第5章 内閣 第65条~75条

・レポーター、参加者の問題提起

第65条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き内閣に属する。

Q.「この憲法に特別の定めのある場合」とは何か?

 

第66条 2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない。

Q.「文民でなければならない」から「現役の軍人であってはならない」に変更されているのはなぜか?

 

第67条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する。

Q.「国会の議決で」が削除された理由は?

 

第72条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う

2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。

内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。

Q.内閣の承認がなくても総理大臣が重大な決定をすることができるのではないか。

 

第73条 5 予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。

6  法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。

Q.国会の立法権を否定することになるのでは。

A.法律が政令に委任する委任立法というものがある。国会の機能を下げることになるが、福祉国家のためにはしょうがないという考え方がある。現行憲法は「罰則を設けることができない」となっている。今の憲法だと罰則でなければ包括的に委任していいという余地がある。国会のコントロールが増える「いい改憲」。いい改革は憲法を変えなくても法律でできる。罰則は典型的な権利の制限である。

 

・成澤孝人先生のコメント

 内閣には法律提出権がないという議論がある。イギリスには内閣に法律提出権はない。イギリスにおいては庶民の代表が王様に呼ばれて国会を構成している。王様の代わりに行政を行っている。日本の場合は内閣が法律案を提出しても違憲ではないということが通説になっている。それを書いて解釈の争いを止めさせたいのではないか。議員立法を無くすことはできない。内閣を中心に行っていきたいということ。内閣の機能強化、内閣総理大臣の機能強化になる。問題は72条。総理大臣を内閣の上に意識した規定。

 総理大臣中心の議員内閣制は、国会の機能が下がっていく。現代国家の特徴で行政権が強くなっていく。日本の憲法は、権力分立を前提として国会を中心として内閣をコントロールする、国会の方が内閣より優位しているのが議員内閣制のシステム。議員内閣制は政党を媒介して国会議員の過半数をバックにして行政が強くなる。大統領制よりも内閣の機能を強化できる。そうするとコントロールできる主体が司法権しかいなくなってしまう。90年代政治改革は、国会をすっとばして内閣を国民が選ぶという議論が横行してしまった。自民党案は、それを憲法に書くということ。

 狭義の意味での首相公選制は議院内閣制よりも首相の権限を弱くするということがある。国会が内閣を支えるので議院内閣制は首相の権限が強い。首相公選制は、首相を選んで、国会議員も選んでガチンコ勝負をさせる、国会議員が首相を支えるというインセンティブを持たなくなる。にもかかわらず首相が解散権をもつことになるので、統治の仕組みとしては不安定になる。

 政治改革と日本国憲法は対立している。

 (文責:中川博司)

 

 

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20170508 第486回「月曜の声」

2017-05-08 21:36:16 | 活動日誌

20170508 社民党松本総支部第486回「月曜の声」〜中川ひろじ代表

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