リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

全ての授業が・・・

2005年07月01日 02時24分20秒 | 日記
今日のボブ(クロゥフォード・ヤング)のレッスンをもって、全ての授業は終わりました。
ボブからは去年ラウテン・デュオのクラス(といっても生徒は実質私のみ。ときどきドリスって女の子が来るときがありましたが)を受けたんですが、今年は15世紀の声楽作品のリュート編曲をテーマに1年間勉強しました。当初は2週間に1回という予定でしたが、何かボブも乗って来て、コンサートツアー等で授業ができないとき以外は毎週やりました。
今週の始めに、昨年の10月からの編曲に使った資料や編曲した作品を整理しました。図書館に行って簡易製本したんですが、2cmくらいの分厚い本になりました。沢山編曲したんですねぇ、しみじみ・・・でも結構しんどかったです。

やり方はこんな感じです。
Aという1460年頃の3声の声楽曲があったとします。この曲は1490年頃にリュート奏者Xによってリュートソロ用に編曲されたBという作品が残っています。で、このBを見ないで、21世紀のリュート奏者N(私です(笑))がAをリュートソロ用に編曲した作品Cを作ります。そしてCとBの比較です。編曲は声楽とリュートという形のものも沢山作りました。実際に歌手のアグニエシュカにほぼ毎回来てもらって、あわせもやりましたし、コンサートでも演奏してみました。あと作品AとBの比較表を作って、リュートソロ編曲ではテナーの旋律がどう扱われているかとか、ムジカ・フィクタをどう行ったかなどの検討もしました。基本的なスタンスは15世紀リュート奏者と同じですから、すごくエキサイティングだったです。

お陰でルネサンス初期の音楽(ノイジードラー、カピローラ、スピナッチーノなど)の理解が深まりました。彼らの声楽編曲は「元歌」を知らなかったし、ディミニューションのやり方も少しイギリスのもの何かとは異なっていて耳になじまなかったんですよね。でも15世紀の声楽作品を元に彼らの行ったのと同じ方法を追体験してみるとすごく彼らの音楽がよくわかるようになりました。来年の夏にはモーリスの新しい楽器が出来てくる頃だし、来年の夏からはルネサンス・リュート奏者に転向もありかな。(笑)