リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

モーツアルトは癒しの音楽?

2006年07月12日 11時10分39秒 | 音楽系
最近モーツアルトの音楽に癒し効果がある、というのをいろんなところで聞きます。今年はモーツアルト生誕250年ということで、急にそういう話が増えてきた感じです。以前もそういう話を聞いたことがありましたが、ま、モーツアルト贔屓による一種の信仰みたいなものって感じにもとれました。

でもなんか最近はちょっと悪乗り気味で、どっかの大学の先生がまことしやかに、モーツアルトの音楽にみられるゆらぎがどうのこうので、モーツアルトの音楽には強い癒し効果が見られる、なんていうものんだから、知らない人はだまされてしまう。大学の先生ってちゃんとした社会的に地位にある人なんだから、はっきりわからないことを断定して(=いい加減なことを言って(笑))人をだまし金儲けするもんじゃないですよね。

ごく常識的に考えたら、モーツアルトと言えど音楽様式の歴史の中で存在してるわけだから、モーツアルトのみが癒し効果が強い、って訳がないですよね。(件の先生は、「モーツアルトのみだなんて言ってましぇーん」といって逃げるかも)モーツアルトの音楽の中にも癒し効果はなくエキサイトさせるものもあるでしょうし、様式的に近いハイドンの曲に癒し効果がある曲も見いだせるかもしれません。

バッハの音楽やリュートのための音楽なんかもっと癒し効果があるかも。でも、いくらヴァイスの曲に癒し効果があるといっても、「癒しの音楽=リュート音楽」では世間になかなかアピールしません。その点「癒し=モーツアルト」というのは世間的にわかりやすいですよね。

音楽に反応するには、その人の音楽的受容力が大きく関係しているようで、その受容力は、音楽そのものの好き嫌い、基盤となる文化などが関係していると思います。だから演歌にもっとも癒しを感じる人もいれば、バッハでもっとも癒される人、武満でもっとも癒される人もいるわけです。モーツアルトの音楽の波形を見せてこの揺らぎがあるから癒し効果があるんだ、なんていうのは、昔の縁日のがまの油(傷によく効くという)の売り口上と何ら変わりません。ま、そのつもりで聞いて楽しくだまされ軽く腹を立てるというのもいいもんでしょうけどね。(笑)

キリ年(生誕200年とか、250年など)商売は、そういつもできるもんではないので業界も必死です。モーツアルトツアーも結構はやっているそうだし、地元ウィーンもなんとか儲けようと必死みたいです。モーツアルト250年が終わると次は何になるのかな。バッハ生誕350年2035年、うーんまだ生きているか結構微妙な年ですねぇ。ヴァイスは最近では1687年生まれ説が定着しているようなので、生誕350年は2037年、さらに微妙です。(笑)ま、せいぜい長生きして、キリ年商売で悪乗りましょう。