リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ハート形の手稿本

2008年04月20日 09時59分44秒 | 音楽系
最近届いたアメリカのリュート協会の会報2月号にギーゼケムの「至高の徳に満ちあふれたり」(De tous biens plaine )という曲の楽譜が出ていました。この曲はバーゼルのクロゥフォード・ヤング(彼のセカンドネームがロバートなので、ボブと呼んでました)のところでレッスンを受けていたときに、自分でもハイネ・ヴァン・ギーゼゲムのオリジナルからナカガワ版を作ったことがありました。

会報掲載の曲はスイスのフリブールにある手稿本(15世紀)からのものですが、この手稿本はハートの形をした特殊なものです。ページを広げるとハートになるので、閉じた状態だとハートの半分、ちょっと本棚には収まりにくい形ですね。(笑)

この手稿本はボブ他がスイスのアマデウス出版から2003年に出版しました。興味のある方は入手されるといいと思います。カラーでとてもきれいにハート形の手稿本が印刷されています。ちなみに2003年出版の本自体はハート形ではありません。(Fruehe Lautentabulaturen im Faksimile, Crawford Young and Martin Kirnbauer:ISBN3-905049-91-0)



掲載曲はナカガワ版Aと比べるとほぼ同じです。(装飾的な旋律が少ないタイプ)両曲は制作年的には500年以上の隔たりがあるんですけど、元ネタが同じだとリュート弾きは同じような発想をするもんです。(笑)でもムジカフィクタの扱いが微妙に異なるところもあります。あとオリジナルのテナーの旋律をどうやってリュートで弾いていくかについても結構扱いが異なります。ナカガワ版はとにかくテナー旋律を出さないといけないということで結構難しい指使いをしているところもあるんですが、手稿本のセッティングでは、意外とあっさりメロディのラインを切ってしまい、弾きやすくしています。(ナカガワ版は私のHPに掲載されていますので、興味のある方はご覧になってください。なおナカガワ版は3種類あります)

手稿本があるフリブールというところはスイスのフランス語とドイツ語の境目にあるところで、ベルンから鉄道でローザンヌの方面に向かう途中にある古い街です。ここはドイツ語ではフライブルクといい、南ドイツにあるフライブルクと同じ名前になります。ベルンから来ると鉄道のアナウンスはここからドイツ語からフランス語に切り替わります。