リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュート音楽のひととき5

2008年04月15日 13時03分57秒 | 音楽系
第5回目になるリュート音楽のひとときも無事終了しました。珍しく雨も雪も降らず嵐にもならずよい天候に恵まれました。(笑)そのせいか、ふだんより来場の方も多く、ミューズサロンがほぼ一杯になりました。ご来場の皆様どうもありがとうございました。

今回はテオルボとバロック・リュートをテーマに、ピチニーニ、ド・ヴィゼー、ヴァイスの作品を楽しんでいただきました。テオルボは昨年の夏に買ったばかりの楽器ですが、通奏低音用として使っていまして、ソロ用にはあまり使っていませんでした。ソロだけを弾いたのは今回が初めてでした。

テオルボのソロ作品はあまり多くありませんし、作曲家もごく限られていますが、なかなか個性的な作品が多いです。中でもド・ヴィゼーの作品はフランス・バロック音楽中期から後期にかけての貴重なレパートリーです。イタリアのピチニーニや今回は演奏しなかったカプスベルガーの作品などと共に大切にしていきたいレパートリーです。

コンサートの後半はヴァイスのソナタヘ長調全曲を演奏しました。私が使ったのはドレスデン写本にあるヴァージョンですが、同じ曲がロンドン写本にもあり、これには「名だたる海賊」という副題がついています。ロンドン写本にある曲は1717年とか1719年とかいう年代が楽譜に記されていますが、概ねその頃に成立した作品が多いと思われます。ドレスデン写本の曲はいくつかロンドン写本の曲と共通していますが、ドレスデン写本だけにあるものがあり、それらは非常に大規模な作品であることが多いです。

中には40分を超えるような大曲もあり、曲の構成も後世のソナタ形式の萌芽といってもいいような形式もあります。これらの曲には作曲年と思われる年は書かれていませんが、テレマンの忠実な音楽の師(1728-1729)に応募した曲が含まれていたり、1739年のヴァイスのバッハ家訪問の際に演奏したと考えられる曲(BWV1025)の原曲(ソナタイ長調)が含まれていることから、ヴァイスの熟年の作が多いと思われます。今回のソナタヘ長調はそれら熟年作品群より少し前の作品のようですが、後期の作品群につながる大規模な構成の曲で、当時の新しいスタイルを指向している優れた作品です。

この曲の録音はあまりなく(ロバート・バルトは録音してたかな?)ひょっとしてまだだれも録音していない?すごくいい曲ですがあまり耳にすることは少ないだろうということで取り上げてみました。

「ひととき」シリーズは次回から何回かヴァイス連続演奏会シリーズにはいる予定です。ヴァイスの全作品を!というのはちょっとしんどすぎますので、何回か続けてお休み、また再開というようなマイペースですすんで行きたいと考えています。次回はいつにするのかは未定ですが、11月か12月頃を考えています。