リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

昔と今(1)

2019年09月18日 14時19分57秒 | 日々のこと
現在ロバート・ダウランドのVarietie of lute-lessons の理論編翻訳に取り組んでいますが、底本にしているのが、ショット社からファクシミリとして出版されているものです。この翻訳シリーズの最初の方にも書きましたが、10代の終わり頃ササヤ書店で購入したものです。

当時ファクシミリはほとんど出版されておらず、貴重な一冊だったわけです。では他はどうしたかというと、直接博物館や図書館に手紙を出して、マイクロフィルムコピーを購入していました。

一番始めに照会したのは大英博物館(途中から楽譜の管理は大英図書館に移管)でした。住所がわからないので、(今ならググればすぐわかりますが)なんと宛先は、British Museum England だけでした。これで普通に届きました。それ以降は向こうから送ってくるものに住所が書かれているので、それを宛先に書きました。

大英博物館には、リュート関係の所蔵目録を送ってもらい、それを見てマイクロフィルムコピー注文していました。

あとふたつ当時でもできる方法がありました。ひとつは学術的な曲集を買ってその巻末に書かれているソースリストに従って注文する方法。もうひとつは、リュート関連の歴史的楽譜資料一覧である、エルンスト・ポールマン著の「リュート・テオルボ・キタローネ」を見て、当該楽譜が所蔵されている図書館なり博物館に照会するという方法。

これで現在使っている楽譜の8割くらいは集め、現在も使っています。これをやったのが20代の始めですから、そのときに実に一生分に近い楽譜を集めたわけです。(笑)

もう50年近い前ですが、意外と何でも手に入ったでしょ?手に入るか入らないかという点で言えば、ネット時代の今とそう変わりません。場合によっては今の方が面倒くさいときもあります。最近大英図書館のサイトを見てアカウントを作ったんですが、なかなか面倒くさかったです。昔の、「British Museum England」の方がはるかに簡単です。

でも楽譜をPDFでいただける昨今は、昔に比べると驚異的ともいえる程便利かつ経済的になりました。これは大進歩です。

今ならPDFの楽譜をクラウドに上げて、iPadで読めばあっという間に閲覧できますが、昔は、マイクロフィルムから現像して、水洗いして、乾燥して、製本してという過程が必要でした。閲覧だけでしたらマイクロフィルムリーダーでできましたが、大学の図書館レベルのところにしかそれはありませんでした。あとものすごくお金があれば、ゼロックスコピーという手はありましたが、一般庶民ができることではありませんでした。

オランダの貴族の流れをくむリュート奏者は、ゴーディエのマイクロフィルムをゼロックスコピーでロール状にしてあるものを持っていましたが、それを見せてもらったときに少し目眩がしたものでした。