リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

外国語の日本語表記(1)

2019年09月28日 11時47分15秒 | 日々のこと
伊勢湾台風から60年が経過しましたが、名古屋市も大変な被害を受けました。その被害からの復興を込めて建築されたのが、名古屋駅前の大名古屋ビルヂングだそうです。

2016年に建て替えられましたが、看板はオリジナルと同じ大名古屋「ビルヂング」のままです。当時はまだ英語の [di] とか [ti] の発音を日本語でどう表記するかは揺れていたのだと思います。英語の building の[di]音に一番近い感じの日本語音は何か、と考えて見いだされたのが「ヂ」でした。ですので、ビルヂング。PTA も「ピーチーエー」と言っていました。

多分ネイティブの英語を聞いて一番近い音を表す文字を選んだのでしょう。実際、ディとヂとでどちらが[di]
に近いかというとヂの方です。英語の[d][t]の子音の発音は、破裂を伴った息の音である気息音が特徴です。これは日本語にないものですが、ヂとかツは英語ほどは強くないですが、気息音の一種です。

ですから、昔はゴルフ場を○○カンツリー倶楽部なんて言っていました。クリスマスツリーもそうですね。ところがカンツリー倶楽部はカントリークラブになりましたが、なぜかクリスマストリーにはなっていません。不思議な話です。

四日市市の国道23号線を走っていると「ヂンダ倉庫」と書かれた大きな建物が見えます。その倉庫の社長は多分仁田さんか陣田さんなのでしょう。ふつうにカタカナで書くと「ジンダ倉庫」ですが、看板として見ると濁点が見落とされるかも知れず、そうなるとシンダ=死んだ!?となるので「ヂンダ」にしたのでしょう。一種の験担ぎみたいなものかも知れません。同じ「ヂ」でも大名古屋ビルヂングとは異なる由来なのでしょう。

昨日某ギター専門誌をパラパラめくっていましたら、コンサートの宣伝で、○○ドゥエットの夕べというのがありました。多くはデュエットと書く方が多いようですが少し混乱があるのかも。ドイツの文豪Götheも昔はゴエテとかギョエテとか色んな書き方があったようで、「ギョエテとはオレのことかとゲーテいい」という狂歌もあったとか。

外国語の音をどうカタカナやひらがなで表記するのはとても悩ましい問題です。テレマンとかフォンタナなんかはアクセントに伴って伸びる音があるので、本当はテーレマン、フォンターナの方が近いです。ホルボーンとかメルボルンもホルボン、メルボンの方が原音に近いです。でももう既に定着しているので、テーレマン作曲のソナタなんとかなんていうと少しペダンティックな臭いが鼻につきます。

まぁこういうのは結果的に不統一感があっても、自然と定着したものを使うのが一番いいようです。不統一になってしまった結果を見て、これって変だよねー、でもまぁいいかってところが一番平和でしょう。