さてリュート界では次のような信仰をお持ちの方がここ何年かで登場しています。少数だとはいえ、他のジャンルのアマチュアにはない傾向だと言えます。
信仰例:
リュートはガット弦を張ってこそリュートと言える。合成樹脂弦を張るのは邪道だ。ガット弦の深い音、これは到底合成樹脂弦では達成しえない。(とおっしゃる割には高音弦はケバケバのまま使用しているので、音はボコボコ、バス弦は音はあまり出ずボッソンボッソンの音、音程も悪い、でもこういうのこそがリュートなんだと信じ込んでいる)そして信仰が深すぎるあまり、ナイロン弦を使っている某演奏家のCDをガット弦を使っていると信じ込んで人に宣伝したり、場合によっては、合成樹脂弦を使っている人を見下したりする。合成樹脂弦の選択の可能性に関しては全く聞く耳を持たない。
確かにトレブルガット弦の音はすばらしいです。この点にかんしては異論はありません。温かみ、深みがありふくよかでタッチに対するレスポンスも合成樹脂弦よりよろしい。でもまずその前に、まずはきちんときれいなタッチで弾けるようにしたいものです。合成樹脂弦も種類と楽器とのマッチングと弾き方によってはかなりいい音は出せ捨てがたいものです。
さて、本シリーズの冒頭にも書きましたように、弦の「戦国時代」を迎えているリュート界では、プロはどんな弦を使っているのでしょうか。名前は伏せて知っている限り書いてみましょう。
Aプロ:ここ40年くらい変わらずピラミッド製巻き弦とナイロンの組み合わせ。低音の巻き弦による音のにごりは驚異的な技術によりカバーしている。最近楽器によってはフロロカーボンを多用している。
Bプロ:以前バス弦にギンプ弦を使って、ヴァイスを録音。楽器は古い時代のものを修復したもの。でも満足していなかったのか、次のヴァイスのCDでは現代製の楽器に金属巻き弦とナイロン弦を張った楽器を使用。そしてその次のまたヴァイスのCDでは、古い時代の修復楽器とガット弦、ただしバス弦は金属巻き弦にある種のワックスを塗って音が超丸くなるようにしたものを使用。
Cプロ:昔のバロックリュート奏者と同じようにブリッジの近くで弾くべきだと考えていて、そうするといい音がなるような楽器を製作家に作らせたいと語っているが、実際は合成樹脂弦と金属巻き弦を使っている。
Dプロ:合成樹脂弦、金属巻き弦を使ってバッハなどの録音が沢山あるが、近年はフロロカーボンをバス弦に使い、最近ではそれをローデドナイルガットに替えてコンサートをしている。
Eプロ:今も昔も合成樹脂弦と金属巻き弦を使う。コンアートツアーが多いので、これしか選択肢はないとおっしゃる。ただ近隣で行うコンサートではガット弦を使うこともありFプロによくアドヴァイスをもらうとか。
Fプロ:30年くらい前までは右手の爪を使い合成樹脂弦と金属巻き弦を使っていたが、修復楽器入手後はガット弦に変更。バス弦は最初はギンプ弦を使っていたが、「それは失敗だった」(本人談)ので現在はピストイ弦を使う。コンサートでもガット弦を使う。
Gプロ:レッスンなどではガット弦を薦めるが、テオルボなどで通奏低音をするときは合成樹脂弦のお世話になる。ある意味ガット弦の難しさをよく知っている。
Hプロ:理系の才能もある人だが、最近の録音ではガット弦を使ってバッハを録音している。
Iプロ:バスにフロロカーボン弦を張ったドイツテオルボでCDを録音、それ以前は合成樹脂弦、金属巻き弦でライブをしている。
といったところでしょうか。なかなか多彩です。合成樹脂弦もナイロン、ナイルガット、フロロカーボン、ローデドナイルガットがあり、同じナイロンでもデュポン社と東レ社とは音が異なります。40年近く前に細いフロロカーボンを高音弦用に使い出したのが多様化の走りだと思います。
ガット弦も中高音用は実用的になったとはいえ、1コース用に関してあと一歩の実用性がほしいところです。バス弦に関してはまだまだトマス・メイスが言っているような弦には届いてはいないと思います。合成樹脂弦もとても多彩です。それぞれ実際に試して一番気に入ったのを選ぶのが一番いいでしょうけど、なかなかそうも行かないかもしれません。決定打はまだないという認識の元で、いくつか代表的なパターン(バロック・リュートの場合)を示してみますので、自分の好みに合わせて選んでみるといいかもしれません。
次回最終回に続く
信仰例:
リュートはガット弦を張ってこそリュートと言える。合成樹脂弦を張るのは邪道だ。ガット弦の深い音、これは到底合成樹脂弦では達成しえない。(とおっしゃる割には高音弦はケバケバのまま使用しているので、音はボコボコ、バス弦は音はあまり出ずボッソンボッソンの音、音程も悪い、でもこういうのこそがリュートなんだと信じ込んでいる)そして信仰が深すぎるあまり、ナイロン弦を使っている某演奏家のCDをガット弦を使っていると信じ込んで人に宣伝したり、場合によっては、合成樹脂弦を使っている人を見下したりする。合成樹脂弦の選択の可能性に関しては全く聞く耳を持たない。
確かにトレブルガット弦の音はすばらしいです。この点にかんしては異論はありません。温かみ、深みがありふくよかでタッチに対するレスポンスも合成樹脂弦よりよろしい。でもまずその前に、まずはきちんときれいなタッチで弾けるようにしたいものです。合成樹脂弦も種類と楽器とのマッチングと弾き方によってはかなりいい音は出せ捨てがたいものです。
さて、本シリーズの冒頭にも書きましたように、弦の「戦国時代」を迎えているリュート界では、プロはどんな弦を使っているのでしょうか。名前は伏せて知っている限り書いてみましょう。
Aプロ:ここ40年くらい変わらずピラミッド製巻き弦とナイロンの組み合わせ。低音の巻き弦による音のにごりは驚異的な技術によりカバーしている。最近楽器によってはフロロカーボンを多用している。
Bプロ:以前バス弦にギンプ弦を使って、ヴァイスを録音。楽器は古い時代のものを修復したもの。でも満足していなかったのか、次のヴァイスのCDでは現代製の楽器に金属巻き弦とナイロン弦を張った楽器を使用。そしてその次のまたヴァイスのCDでは、古い時代の修復楽器とガット弦、ただしバス弦は金属巻き弦にある種のワックスを塗って音が超丸くなるようにしたものを使用。
Cプロ:昔のバロックリュート奏者と同じようにブリッジの近くで弾くべきだと考えていて、そうするといい音がなるような楽器を製作家に作らせたいと語っているが、実際は合成樹脂弦と金属巻き弦を使っている。
Dプロ:合成樹脂弦、金属巻き弦を使ってバッハなどの録音が沢山あるが、近年はフロロカーボンをバス弦に使い、最近ではそれをローデドナイルガットに替えてコンサートをしている。
Eプロ:今も昔も合成樹脂弦と金属巻き弦を使う。コンアートツアーが多いので、これしか選択肢はないとおっしゃる。ただ近隣で行うコンサートではガット弦を使うこともありFプロによくアドヴァイスをもらうとか。
Fプロ:30年くらい前までは右手の爪を使い合成樹脂弦と金属巻き弦を使っていたが、修復楽器入手後はガット弦に変更。バス弦は最初はギンプ弦を使っていたが、「それは失敗だった」(本人談)ので現在はピストイ弦を使う。コンサートでもガット弦を使う。
Gプロ:レッスンなどではガット弦を薦めるが、テオルボなどで通奏低音をするときは合成樹脂弦のお世話になる。ある意味ガット弦の難しさをよく知っている。
Hプロ:理系の才能もある人だが、最近の録音ではガット弦を使ってバッハを録音している。
Iプロ:バスにフロロカーボン弦を張ったドイツテオルボでCDを録音、それ以前は合成樹脂弦、金属巻き弦でライブをしている。
といったところでしょうか。なかなか多彩です。合成樹脂弦もナイロン、ナイルガット、フロロカーボン、ローデドナイルガットがあり、同じナイロンでもデュポン社と東レ社とは音が異なります。40年近く前に細いフロロカーボンを高音弦用に使い出したのが多様化の走りだと思います。
ガット弦も中高音用は実用的になったとはいえ、1コース用に関してあと一歩の実用性がほしいところです。バス弦に関してはまだまだトマス・メイスが言っているような弦には届いてはいないと思います。合成樹脂弦もとても多彩です。それぞれ実際に試して一番気に入ったのを選ぶのが一番いいでしょうけど、なかなかそうも行かないかもしれません。決定打はまだないという認識の元で、いくつか代表的なパターン(バロック・リュートの場合)を示してみますので、自分の好みに合わせて選んでみるといいかもしれません。
次回最終回に続く