リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ドレスデン手稿本改訂時の案内文

2023年04月18日 14時12分42秒 | 音楽系
旧ホームページ仕舞いをやっていましたら、懐かしい記述が出てきました。ヴァイスのドレスデン手稿本加筆修正版の改訂版を出したときの案内文です。

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このドレスデン手稿本の加筆修正版を作ろうと思ったのは、1970年代の後半です。まだ東ドイツが存在していたころのザクセン地方図書館に手紙を書き、マイクロフィルムを購入しました。当時西ヨーロッパ諸国の図書館などに照会してマイクロフィルムを購入するのはさほど困難ではなかったのですが、「共産圏」に照会するのはいくつかの困難を伴いました。東ドイツのある図書館からマイクロフィルムを購入したとき、代価としてお金ではなく、ジョン・ケージの著書を要求されたり、また別の博物館へは、送金したお金が結局届かなかったこともありました。そういう中ではドレスデンは比較的スムーズにマイクロフィルムが購入できた方だと思います。
初版の50部はB4縦片面印刷ハードカバーでした。印刷も謄写印刷で全て自分で行いました。印刷は順番にしていったわけではなく、加筆修正が不要なページから始め、加筆修正をしながら少しずつ印刷していったことを覚えています。50枚ずつ印刷することはさほど大変ではありませんでしたが、160数種類もあると管理が大変だったことを覚えています。8年がかりで全て印刷し終えたあと、1冊分ずつ「拾う」作業が次に来ます。当時勤めていた中学校の生徒10人くらいを夏休みに呼び出し、彼らに「拾う」のを手伝ってもらいました。タイトルや目次などを含むと172種類にもなる原稿を4教室の机の上に置き、順に拾っていく作業です。カップラーメンをおごってやったとはいえ、こんなわけのわからない作業を彼らは喜々としてやってくれました。今ならまず考えられないことでしょうし、PTAなんかで問題になるかも知れません。おおらかな時代だったと思います。「はじめに」には書きませんでしたが、彼らにも感謝しなければなりません。製本は自分でする技術がないので専門の業者に頼みました。この初版本以降に注文を受けた分に関しては、謄写印刷ではなくコピーを使っています。サイズも使いやすいように縮小してA4サイズにしました。
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そうです、初版本はなかなか苦労しました。このドレスデン手稿本の加筆修正版の初版50部は完売し、そのあと出した改訂版も50部くらいは出したと思います。この手のものとしてはまぁまぁでしょう。

原版は40年を超えるものも混じっていますので、紙が相当傷んでいます。もうキンコーズに頼んでコピー・製本は無理かもしれません。そこでデジタル化して原典と同じ見開き配列、サイズもA4横組み版を作ってみようかと考えています。

現在Scribdなどで修正が入っているドレスデン写本が手に入ります。私も使うときがあるのですが、解像度が低いのと修正が間違っている部分があり少し問題があります。私の修正版のデジタル版を作って販売してもどうせコピーされまくるでしょうから、いっそフリーにしようかとも考えています。(紙の初版本もコピーされまくっていましたから)もっとも制作に相当時間がかかるでしょうから、出すとしても先のことになりますが。