石破首相とトランプ次期大統領が電話で会談をしたそうです。会談時間は5分。石破さんは英語ができないので通訳を介していると思いますが、そうなると5分のうちの半分、すなわち2分30秒が正味の会談時間ということになります。2分30秒ではさすがにまとまったことは言えないでしょう。ひとことふたこと挨拶と当選おめでとうを言った程度でしょう。
最近あまり海外の演奏家が公開レッスン(おおげさにマスタークラスなんていっていますが)をすることはなくなりましたが、今までの例ではレッスンを受ける方はほぼ100%通訳を介していました。以前私がプロデュースしたホプキンソン・スミスの公開レッスン(於名古屋)も私が通訳を務めましたが、サシでレッスンを受けた方はひとりもいませんでした。通訳なしで受けようとした方もいましたが、却って時間がかかりかつ不正確になったので途中で私が介入したこともありました。
石破・トランプの5分会談と同じように、公開レッスンが60分だとするとレッスンの中身は30分程度のものになります。よく外国のナントカさん、ナントカさんと何人か名前をあげて公開レッスンを受けたことをプロフィルに書いているプロの方がいますが、日本で通訳付きで受けた場合はレッスン実時間はレッスン時間の半分です。外国で通訳なしで受けた場合もことばが不自由なら先生のおっしゃっていることあまりわからず身につくことは少ないでしょう。
そもそも公開レッスンというのは基本的に1回完結なのでレッスンする方も丸く60分くらいで収まるようにするものです。従って厳しい課題が与えられるということもないわけで、そういった類いのレッスンを何回受けたところで大した収穫はありません。まぁアマチュアの人がちょっとでも直接大先生の薫陶を受けてみたいというのなら大いに意味があるかも知れませんが。やはり一定期間学校に入り特定の先生に継続的にレッスンをしてもらって初めて力がつくものです。これは日本にいて日本人の先生から指導を受ける場合も同じです。まぁ当たり前と言えば当たり前ですけど。
音楽はことばではないので外国語の勉強は不要だと思われがちですが、そういう考えでスコラに入って(いまはどうか知りませんがスコラは語学の基準はありません)とても苦労した人を何人も知っています。というわけでプロもアマもそして政治家も語学をしっかりと磨きましょう!
よく、言葉は身振り手振りでなんとかなるものさ、とにかくあれやこれや悩まず飛び込むことだよ、アメリカ人ならわかってもらえるさ、などという勢いに任せた精神論でアドバイスする人がいます。ですが、私も経験済ですが、たしかに、身振りで通用すること「も」あるが、本当の彼らの使う言葉、表現、時にスラング、隠語、などなど理解できずして理解はないなと思ったことです。私も一応、航空留学を若い時分にしましたが、その経験からも、やはり語学の基礎を踏まえた上で、現地の生活の中で経験値を積み上げ、聴き理解し話す場数を増やす努力をする以外にありませんでした。
アメリカ人の管制官は日本人だから手加減もしてくれません。命かけて飛んでるんですからこっちも必死です。理解できず飛べば、即、生死に直結です。
音楽で留学される方もやはり通訳無しで現地の専門家から教授されるためには、先生の仰るとおりだと強く思います。
とかく演奏者のプロフィールに大家に師事、大家のマスターコースを修了という経歴を見ますが、本質的にきちっと習えたかどうかは、これも先生のご指摘のとおりだと思います。
今回の首相とトランプさんとの5分間では、社交辞令で終わりでしょう。相手も短命政権で長く続かないだろうと見切っていますから、安倍政権時のような関係性も築けもしないでしょう。
それにしても日本に来る外国人のほうがよっぽど日本語を上手くしゃべれてるなと思うことは私だけでないでしょうね。
なんで日本人は語学が苦手なんでしょうねえ。取得するだけの必死さも特段必要もないし、困らないし、興味もないし、学校の授業であるから仕方ないし、最近の若者の声が聴こえてきそうです。
要は、必死さを伴うような必要性が無ければ真剣になれないとも思えるんですがねえ。井の中の蛙で満足し、日本国内だけで転勤もしたくない、偉くなりたくない、留学もしたくない、スマホで繋がってれば安心、そんな内向き志向の若者が増加してるともいわれますが、せめて公用語である英語くらい日常会話できる力は持っておくべきだと思いますね。日本人が海千山千の世界の連中相手にこれから本当の厳しさに向き合い、試されていくことを知るべきだと強く思いますね。