リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

音楽ホール問題(2)

2024年11月09日 12時34分02秒 | 音楽系

バロック音楽の旅で使わせて頂いている2004年開業の桑名市中央町にある「時のホール」は多目的ホールということになっていますが、実は天井が二階吹き抜けで建物全体の空調も備えている歴とした音楽ホールです。ここは今のところ健在で、先頃館内のPA・プロジェクタ他の設備を一新したばかりです。なんかの勘違いか、実は音楽好きだった設計者の「悪巧み」で実質音楽ホールになってしまったわけですが、逆に会議なんかでは音が響きすぎてよくないという「悪評」を聞きます。そろばん大会なんかもやるそうですが、さぞかしうるさいでしょうね。(笑)このホールは図書館や民間カフェとの併設の第三セクター方式の経営ですが、まぁ閉鎖と言うことはないでしょう。

ここ何年か私もリサイタルなどで使わさせていただいている名古屋のHITOMIホールは大人気ですし、2017年に開業したHalle Runde も堅実に運営が光ります。Halle Rundeはかつて名古屋の丸の内にあったスタジオルンデの創始者鈴木詢氏の高い志を引き継いだホールです。ホール天井が志くらい高いとさらによかったのですが・・・

こうしてみると日本経済が縮小したからホールが減っているという単純な図式ではなさそうで、いわばまだら模様といった感じです。大規模な設備が必要なバレーやオペラはホールが減って苦しくなるところもありそうですが、バロック音楽界隈ではあまり影響はないとも言えます。(近江楽堂さんにはがんばってほしいところです)

地方における本格的ホールの嚆矢とも言える宮城県加美郡加美町のバッハホールはいまも健在みたいです。一度行ってみたいですがちょっと遠いですねぇ。このホールは当時の中新田町町長の思いつきでできたそうですが、こういったトップダウンによる決断とその後の堅実な運営があったからこそ存続しているのだと思います。

愛知県丹羽郡扶桑町のロビーコンサートはその名の通り専用のホールではなく扶桑文化会館のロビーで行われるコンサートですが、30年以上の歴史を誇ります。プロアマ混在のコンサートではありますがこれだけ継続できているのは一にも二にも運営の方法です。ここではきちんと専従の学芸員がいるのです。博物館の学芸員は普通でしょうけど、舞台芸術の学芸員は珍しいです。初代の学芸員であるHさんとひょんなことで知り合い、20数年前に一度出演させてもらったことがありますが、さすがに舞台芸術のプロ(アメリカできちんと学んだそうです)だけに深い見識を感じました。H氏が退任後も別の方がその精神を受け継いで活動されているようです。