前回のマーラーは、グザヴィエ・フランソワ・ロト指揮のケルン・ギュルツェニヒ・オーケストラで聴いてみました。このオケはいわゆるHIPオケで、楽器は基本的にモダン仕様の楽器を使いますが、古楽演奏の知見を取り入れた奏法、解釈をします。
さて最後の4曲目は藤井風のアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」(2022)から「きらり」です。藤井の声はバリトンでアンサンブルも全体に低めの音をとっています。このアルバムには実はひとつ大きな問題があります。それはベースの音が上手く抜けておらず音程がはっきりわかりづらいということです。
プレーヤーは当然ベースラインをわかって演奏しているのでこれは録音エンジニアの問題だと思います。XaiomiとTechnicsでは音程がはっきりわかりません。Xiaomiではもともとトーンが低い楽曲は苦手なので音がペラペラかつバスの音程がぼやけています。Technicsでは反対にバスは豊穣ですがやはりほとんどの箇所でバスのラインをたどることはできません。
さすがにShureでは大体音程をたどることができ、これならバスのラインの耳コピがなんとかできそうです。ちなみにDALIのFAZON MIKROというスピーカーで聴いてみましたら、Shureで聴いたくらいの明瞭さで聴くことができました。(PC→TEAC AI-301DA→DALIで、「上の下」くらいの組み合わせです))
この録音の根本的な問題は多分録音エンジニアが音楽が分かっていない、別の言い方をすると全ての楽器を音程、ハーモニー、リズムをきちんと聴き取ることができていないのが原因ではないかと思います。比較のために Bruno Mars の Leave the door open で3つのイヤホンとDALIのスピーカー聴き比べてみましたが、いずれもバスは明瞭に聞き取れ各楽器のバランスもとてもよろしい。この曲を録音したエンジニアはちゃんとしていると言えます。
信号で車が止まっているとときどきウィンドウがしまっているのに「ドッドッドッ」と音が漏れ聞こえる車があります。あれって、車内では音楽的には意味不明(きちんと音程が聞こえない)のバスが大音量で鳴っているということですよね。
件の楽曲のエンジニアは自身も「ドッドッドッ」のリスナーと大差なく、そういった「ドッドッドッ」リスナーを相手に録音をしているのだとしたらレベルの低い話です。