地方分権で、実質増税になり、区民の中間所得層から上の給与所得者は手取りが減りました。
増税で、特に税収が増えた大田区(東京23区)では、社会保障のためのはずでしたが、優先順位の低い箱モノや開発や土地購入で、安心を得られた状況になっていません。
それどころか、税金を余らせ、国債を買うようになっています。
優先順位の低い公共事業に税金を使っても、なお、税金が余る。
それだけ、私たちの税負担が大きくなったということです。
税収が増えた都市部の自治体では、同様のことが起きているかもしれません。
_______________________________________
1 三位一体改革の増税により負担が増え、手取りが減った大田区民は、社会保障で安心を得られたか、
2 それでは大田区は増収分を何に使ったのか、
https://youtu.be/p5iToHfLSzM
令和4年第2回大田区議会定例会(第2日) 一般質問 奈須 利江議員(フェア民)
な民主主義 奈須りえです。
「富めるものと富まざる者の格差と分断を生んできた」と構造改革を批判して総裁選に勝ち、内閣総理大臣になった岸田総理ですが、構造改革の是正は行われず、新自由主義政策は一向に止みません。
当時の発言を確認したら、「規制緩和、構造改革の新自由主義的政策はわが国経済の体質強化、成長をもたらした。」と行われた構造改革をまず評価していました。格差を批判して見せたのも、新しい資本主義のためで、更なる格差を招くのではないかと心配です。
そこで、かつての日本の構造のどこに問題があり、どういう構造から、どういう構造に変えたか示す資料があるか内閣府にききましたが、無いと言われました。
2002年経済財政諮問会議が出した「構造改革と経済財政の中期展望」でも、
経済が低迷していて、戦後の経済発展を支えてきた企業システムや政府の仕組みでは時代の変化に対応できない。むしろ経済の重荷となっている。
少子化・高齢化、中国等の追い上げに伴う競争力の低下といった状況下で、国民の間には閉塞感が広がっている。
だから構造を変えなくてはならない、
とそれまでのシステムをとにかく壊さなければならない、と言っている文書しかみつかりませんでした。
私は、日本の良いところは、かつて1億総中流といわれていたように、比較的公平・平等な社会だったところにあると思っています。
議員になってから、日本はその自然や風土に
・一次産業従事者
・公務員
・給与所得者
・個人事業主
・中小企業大企業の経営者
などが、それぞれにかかわりを持ちながら、誰かが突出してほかの誰かを支配したり、不利益をもたらしたりせず、お互いが互いの見えない抑止力となり秩序となって、社会経済政治システムを作ってきたということを学びました。
この日本特有のすぐれたしくみを、国家戦略特区の有識者と言われる、日本の構造を壊そうとしてきた人たちは、平成25年のワーキンググループでこう発言しています。
大企業のホワイトカラーなどというのは、大金持ちではないけれども、雇用慣行という既得権によって守られている。これは新規参入もあるし、大金持ちになるわけでもないという洗練された既得権である。
日本の既得権の体系というのは、大きくてかたくて崩しにくいのではない。細かいから崩しにくい。誰かが考えてそうしたのではないと思うが、何となく日本人の国民性にずっと合っているのではないだろうか。だから、崩れない、崩せない。それは、既得権者はみんな悪党ではなく、ごくごく善良な市民だからである。
どういうようにこの種の既得権に御遠慮願っていけばいいのか、・・・
こうも言っています
既得権益者が大金持ちになれるとか、そういう既得権では全然ない。何とか生活が立ちいくという程度の既得権である。この種の既得権というのは実は非常に数多くある。何を言いたいかというと生活がやっと成り立つ程度のいわば零細な既得権である。しかも、それはいろんな法的工夫がされていて、新規参入も全く認めないというわけではないわけである。この種の既得権がそこら中にある。したがって、日本人のほとんどが零細な既得権の主体になっていると思う。
この、いろんな法的工夫がされて、生活がなりたっている公平・平等なしくみを、構造改革が壊し格差をまねいたことが、大田区の税務概要などから見えてきます。
2007年6月に地方分権や三位一体の改革による財源確保の視点から、所得に応じ5%、10%、13%だった住民税が一律10%になりました。
「国は、住民税が増えても所得税が減るため、納税者の負担は変わらない」と説明していましたが、ほぼ同時期に定率減税が廃止になったため、区民の税負担が増えました。定率減税廃止の前年2005年に536億円だった大田区の特別区民税収は、2008年には659億円。123億円と22%も増収です。
当時の衆議院財務金融委員会で、尾身財務大臣が定率減税廃止について「増税といえば確かに増税でありますが、特別の減税をやめたという意味では、純粋な増税ではないと考えております」と答えているように、多くの国民・区民は増税と受け止めたと思います。
どういう所得階層に影響があったのか調べたら、定率減税半減に伴う影響について日本総研が、年収300万円未満では全く影響がないが、年収1,300万円超の世帯では14.5万円の可処分所得減少と、年収が高くなるほど減収額が大きくなる。年収700万円台の平均的なサラリーマン世帯では約5万円の可処分所得減少と試算していました。住民税の定率化と同時期に行われた定率減税廃止の影響は、給与所得の中間所得層より上の所得世帯に大きな影響を及ぼしました。
日本における課税の在り方は、給与所得や不動産所得などへの基本的な課税方法の総合課税と、今回条例改正にもある、特定配当等の配当所得、株式等の譲渡所得など、税率が低く抑えられている分離課税という例外的な課税方法があります。
構造改革のひとつ、アベノミクスは、投資のための経済とで、投資利益を得る方たちの利益=所得が飛躍的に増えて、そうでない給与所得者との格差を拡大させました。
その後、2012年に年少扶養親族に対する扶養控除(38万円)を廃止。2014年に均等割り500円の引き上げ、2018年から所得税の配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われ社会保険料負担にも影響したと思います。
2005年に33万人だった納税義務者数は、結果、2020年には42万人と27%増。特別区民税収は、それを上回り、35%も増えていますが、増えた納税義務者が、女性・高齢者・外国人など比較的低所得の方たちであることを考えれば、所得に対し住民税などの負担感が、非常に大きくなったことがわかります。
加えて、消費税増税。健康保険料、介護、年金保険料の負担増で、区民の可処分所得=手取りは減るばかりです。
大田区の税収が増えたのは、給与はかわらないのに、税制を変えて、課税対象所得を広げてきたからです。
この税制改正により中でも負担を大きくしてきたのが、給与所得の中間所得層から上の世帯です。一方、上場株式の配当や株式の譲渡所得などの収入は分離課税で税率が低く抑えられているため、同じ所得でも税負担に差が生じそれが格差になっています。今回質問に際し、関係部局にこうした問題意識をお伝えしましたが、そこを踏まえて政策をつくり執行していないことに衝撃を受けました。直近の税務概要の対前年比や住民税計算方法を知っていても、区民の生活実感をとらえ、政策立案することはできません。
区民は、税も社会保険料負担も増えているのに、負担に見合った安心を得ることができていません。
たとえば、今の特養の利用料はひと月の年金では支払えない料金設定になっていて、貯金を切り崩さなければ入所できない方が多いと思います。特養に入れない方の負担はさらに大きくなります。金融庁は老後の貯金が2000万円必要と言いいましたが、年金だけでは暮らせない施設や介護保険サービスの利用料を設定しているということも関係します。大田区の特養の利用料は、預貯金があることが前提になっているのです。そこでうかがいます。
②大田区は、区民が貯金できる環境にはあると考え住民福祉サービスを提供しているのでしょうか。利用料負担は、いまの区民の所得から適正といえると考えて設定しているのですか。
区民の貯金を当てにした特養利用料設定ならもはや社会保障ではないと思います。日本の平均貯蓄額は、1000万円を超えていますが、心配が残ります。
それでは、大田区の税収がたりないかと言えば、基金に1000億円ためています。
この基金はどうやってためたかといえば、定率減税廃止、各種の税制改正による特別区民税の増収や、消費税増税、都区財調割合を52%から55%に増やしたことなどによる増収分を余らせ、ためてきたからです。
バラマキ批判で有名になった矢野財務次官の講演を聴いたら、GDPに占める税負担割合を外国と比べ、日本の税負担が低いから、増税すべきだという理論を展開していました。
財務省に確認したら、社会保険料が入っていませんでした。社会保険料は税ではないから、だそうです。
社会保険料は私費扱いか、と驚いたら、社会保険料で提供されている医療、介護、年金は社会保障費負担に含めていて、膨らませていました。
税はこれしか負担していないのに、社会保障サービスはこんなにたくさん受けているという印象操作です。
税で医療介護年金を担うデンマークは税負担割合が一番多い国ですが、税で負担すれば基本、窓口払いはありません。
日本は医療も介護も年金も保険なので税に加え、保険料さらに窓口払いは、いくら負担しているか、示すこともできません。
こうした見えない負担をかくし、税負担が低いと増税の根拠にしようとしています。
国が社会保障として位置付けているのは、
生活保護、
医療・保健、
障害者や母子家庭への支援や保育園や学童などですが、
地方に税負担はありますが国が主な財政負担をしている事業がほとんどです。
医療介護年金は、一般会計からの繰り入れは保険制度の枠組みで決まっています。
この間、国民健康保険の被保険者数が減っているので大田区からの繰り出し金がへり、平成27年と比べ国保、後期高齢、介護への繰り出し金の総額で、13億円も減っています。
保育園待機児童の解消の時、大田区は、民営化して待機児を解消することで大田区の財源を縮減しています。
地方分権で社会保障の責任主体だからと地方に財源が増え、都区財調などでさらに税収が増え、消費税増税を繰り返してきました。しかし、大田区は、増収分で羽田空港跡地を買い165億円国に財源を戻す使い方をしたり、余らせて蒲蒲線の基金に88億円もためるなど、区民の社会保障のために使わず、余らせて国債を買うといっているのです。三位一体改革で税負担が増えましたが、国債を買うためだったのでしょうか。
そこでうかがいます。
③医療、介護など、窓口払いという私費負担も増えています。区民の「私費」や「貯金をあてにした利用料設定」の増収分で国債を買うことが住民福祉のための増税分の使い方ですか。
年金では足りない特養の利用料設定ですが、貯金できる環境を整えているかといえばその逆で、中間所得層は給料も増えず、税や社会保険料の負担が大きくなっています。
そのうえ、雇用規制の緩和で、さらに疲弊縮小しています。そこでうかがいます。
④それでは、大田区は、十分な所得や安定した雇用を増やす努力をしていますか。民営化や民間委託で、また、大田区自ら非常勤職員を増やし、会計年度任用職員などの雇用を増やしてきたのではないでしょうか。
新しい資本主義のためのグランドデザイン
に、
我が国の個人の金融資産2,000兆円の半分以上が預金現金で保有されている。その半分以上をもっている高齢者の70歳までの定年延長を機に個人型確定拠出年金に掛け金を拠出させる
と書かれていました。
構造改革で言っていた、少子化、高齢化、中国等の追い上げに伴う競争力の低下は、解決されず、さらに悪くなりました。
逆に、我が国の良さとしてあげられていた
「基礎学力の高さ」「豊富な個人金融資産」「社会の安定」「豊かな自然」が、逆に構造改革で壊されてきました。
年金だけでは足りず、貯金を繰り崩すのが前提の特養の利用料も高齢者の預金現金約500兆円を確定拠出年金に拠出させるのも、根底には豊富な個人金融資産の存在があり、それが狙われているのではないでしょうか。
そこでうかがいます。
⑤ こうした所得や就労構造などは、なぜできたのですか。
国の構造改革で、大田区は国家戦略特区に真っ先に手を上げ、規制緩和の先鋒をかつぎ、追従してきたのではないですか。
新しいシノン主義に行き過ぎた資本主義への反省はありません。
それどころか、資本主義を超える制度は資本主義でしかありえない。と書かれ、そこに、主権者や議会の存在はありません。
構造改革同様、具体的にどう変わるか、見せずに進む新しい資本主義に警鐘をならし、質問を終わります。