(1)参院選は政権選択の選挙ではないが、衆院審議選択優位の中で法律改正では影響力を持ち、参院通過が必要条件になってくる。近年の政治状況としては安倍元首相が改憲に意欲を示したこともあり、憲法改正が政治課題になっている。
(2)国民にも憲法改正に賛成する比率(世論調査)が増えており、しかしどこをどう変えるのかははっきりしたものがまだ示されずに、憲法改正論議は安倍元首相が主張する現行憲法は戦後米軍の主導する憲法制定であり、主権国家として日本(国民)が自主的に憲法改正(あるいは制定)すべきだという情緒論でしかない。
(3)自民党には第9条を改正して自衛隊を国防軍として明記する草案があるが、これまでは憲法改正の国会発議に必要な衆参議員3分の2以上の賛成が確保できずに安倍元首相もとりあえず各党に同意が得られそうな緊急事態条項(緊急時首相に権限集中)や第9条に国民の支持、理解の高い自衛隊を明記する改正を目指すとしていた。
(4)今回の参院選候補者へのメディアアンケートでは憲法改正に賛成が52%と過半数で、第9条に自衛隊を明記する改正に自民党候補者の87%が賛成し、維新候補者93%、国民候補者59%と改憲勢力では改正賛成が多数を占めた。
第9条に自衛隊を明記する陳腐な改正案で法体系上も自衛隊の役割、機能も明確でないおかしな条文になるが、中国、北朝鮮の軍事的脅威に露のウクライナ軍事侵攻を受けて自衛隊の国民の支持、理解が高まりをみせている中で憲法改正の国民の支持、理解が進む、得やすいと考えてのものだろう。
(5)いずれにしても憲法改正が必要に迫られてのものではなく、根底には前述のように米軍の押し付け憲法からの脱却、主権国家としてのあるべき姿を求めるものであり、政治的保守思想の台頭を印象づけるものだ。
岸田首相も憲法改正には意欲を示しており、今回の参院選で改憲勢力で3分の2以上に迫っている情勢分析もあり、参議院の存在意義(identity)としてのひとつの争点にもなっている。
(6)国民としては防衛力強化、防衛費増額にも支持、理解が進んでおり(世論調査)、参院選での改憲勢力3分の2以上(国会発議権:衆院は改憲勢力3分の2以上確保)にどういった判断、審判を下すのか注目だ。