(1)参院選後の世論調査で安倍元首相の事件が選挙結果に影響したと71%が答えている。しかし自民党にだけ投票が集まったということではなく、弱小野党にも一定の票が出て議席をわずかでも伸ばしたり、かろうじて政党要件を獲得した政党もあり、新しい政党も誕生した。選挙前の政党支持率そのものが反映した選挙結果とみるべきだ。
(2)参院選応援演説中に凶弾に倒れた安倍元首相について、岸田首相は記者会見で国葬(the national funeral)として実施する意向を示した。閣議決定の上、全額国費で執り行う。国葬の規定、基準の明文化はなく、これまで戦後に国葬が実施されたのは吉田茂元首相のみで、安倍元首相が2人目となる。
(3)発表当初は参院選中の凶弾による非業の死を遂げた安倍元首相の無念さを考えて様子見の野党からも、ここにきて安倍元首相の国葬に対する反対、慎重に議論すべきとの声が出始めている。
安倍元首相の国葬は全額国費でまかなうと岸田首相が記者会見で述べており、それなら岸田首相の一存、内閣の意思だけで実施するのがふさわしいのか国民投資(税負担)をともなうものなら国会での同意、決議の手続きが必要だとの意見もある。
(4)また一部には信教の自由から国民全体が国葬として一律に喪に服するのがふさわしいのかの反対意見もある。規定、基準がないことからの問題で、ないのは規定、基準化することのむずかしさを示している。
最低でも岸田首相の一存、内閣決定だけで全額国費で国葬実施を決めるのは理解されにくく、国会同意、承認の手続きを踏んで国民の理解を得ることは必要だろう。
(5)67才で非業の死を遂げた安倍元首相については生前の業績評価をする国民も多くなかなか建前論で示しがたいところもあるが、安倍内閣として戦後最長の期間を記録した功績はあるが近年は独断性、偏向性、わい曲性、説明、解決を回避する疑惑、問題も多く、安倍長期政権への現実的な評価もわかれており、一時の非業の死、お悔やみとして岸田首相が記者会見で国葬実施を表明するだけでは理解を得られないとの意見、見方も増えてきている。
(6)国葬に対する安倍元首相の考え、意向ははかりようもないが、安倍元首相の威光、人気を権威主義で利用することがあってはならずに冷静に判断することが求められ、国民の理解を得られる手続きは必要だ。
安倍家にとってはお別れの会(farewell gathering)の開催が予定されている。