ひびレビ

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相棒-劇場版Ⅲ-

2014-04-29 00:35:45 | 相棒シリーズ
「相棒」の劇場版Ⅲを見てきました。ストーリーの重要な部分に触れているのでご注意を。


太平洋上に浮かぶ鳳凰島。民兵の訓練用の島として活用されていたが、そこで岩代という男性が馬で蹴られて死亡したという事故が発生した。右京とカイトは、峯秋から生物兵器生成の噂もあるその島を調査するようにとの密命を受けた元特命係の神戸を通して、渋々ながらも鳳凰島に向かうことに。そこで調査を進める中で、岩代が死んだ一件は事故ではない可能性が浮上し始めて・・・


といった感じで、今回は孤島をメインに繰り広げられる物語となっています。孤島で訓練を続ける民兵たち、そのリーダーでもある神室の存在、唯一の女性民兵である高野、彼らに支援する企業の社長・若狭、そして防衛省も絡み、今回は右京さんたちもあわやという目に陥ります。特殊作戦隊が現れたシーンはかなり驚きましたし、最初は民兵たちが襲ってきたのかと思ってしまいました。ただ驚かされた一方で、右京さんが突然目を覚まして、「私には効果が薄いようですねぇ」とか言い出したら怖いなぁとか思って見ていました(笑。

孤島でも相変わらずの悪い癖や、米沢さんを呼び出したり、大自然をバックに紅茶を飲んだり、海岸で遊びだすいつも通り冴えてる右京さんですが、一方で現在の相棒であるカイトもなかなか面白い一面を見せてくれました。冒頭から何かしらの用事がある様子ではありましたが、その理由がはっきりするシーンは笑いそうになりました。耳も真っ赤になったっぽいですし、その後の「なんすか!」の連呼には思わず可愛らしさを感じてしまいます(苦笑。
密林を進む際には右京さんの数歩先を行く行動力と若々しさ、納得できないことには冷静さを忘れてぶつかっていく危なっかしさ、ラストの純粋な正義感など、カイトらしさも感じ取れる映画になっていたと思います。

久々の神戸くん復帰!元相棒だけあって特命係にいる姿がしっくりきますが、その横にカイトがいると、やはり今の相棒は彼なんだなという雰囲気も感じました。その他、米沢さんや伊丹などいつものメンバーも・・・三浦さんがいるー!?あぁ、これシーズン12の前の事件なのね・・・


今回のテーマは「国防」とのこと。生物兵器も絡んだ今回の事件の犯人の目的は、その国防に密接に絡んでいることでした。やられたらやりっぱなしではいられない。「友人」が何かをしてくれるとも限らない。自分の身を自分たちで守るためには、それ相応の兵器が必要。だから生物兵器を保有していたと。
生物兵器は禁止されているが、では何故核兵器は保有が認められている国があるのか。核兵器が人道的で、生物兵器が非人道的だとでもいうのか。核兵器が保有できるのであれば、それは最高の平和の担保となる・・・と、まぁ狂ったような突拍子も無い理論に思えますが、それも「国防」という言葉の元に、自分たちは当たり前のことをしているだけだと信じているのが何よりも恐ろしかったです。

自分の身を自分たちで守るしかないというのは確かにその通りだとは思いますが、だからといって相手に何をしても良いというわけではないと思う・・・というと、それはあの人物にしてみれば「平和ボケ」以外の何ものでもないのでしょうね。そんな甘い考えを持っていたら、守れるものも守れなくなってしまうと言い返されそうです。
一方で、「国防」のみならず、自衛隊の「訓練」や、警察の「捜査」も近いものがあるのではと感じました。訓練と称して右京たちを利用した自衛隊はもちろんですが、警察も犯人を暴くためなら何をしても良いというわけではないでしょう。ただ、それぞれがそれぞれの正義に従って行動しているという点において、違いは無いように思えます。正義に対抗するのは別の正義だって誰かが言ってたような。正義ならば何をしても良いわけではない。けれども制限をつけてしまえば守れるものも守れない。どちらも間違いだとは言い切れない、難しい問題です。

犯人の理論にカイトは驚きを隠せないでいたように見えましたが、そこで犯人に対する右京さんの一言が辛らつでした。犯人のいう「平和ボケ」が重い病ならば、犯人がかかっているのは「国防」という流行り病。「国防」という、如何にも「正しさ」を感じる綺麗な言葉だからこそ、魅入ってしまい、感染してしまうのかもしれませんね。

誰かを守るために、多少の犠牲はやむをえない。しかしその犠牲となった人々の関係者が復讐を決意し、また新たな戦いが勃発する。そうして誰かを守るために戦いが始まる。仕掛けて来たのは向こうなのだから、倒してしまっても問題ない。そんな理論が広まって、「守る」という言葉が、誰かを傷つける事を正当化しているように感じます。「守るため」という言葉に正しさが含まれている分、「誰かを傷つけたい」という言葉よりも厄介な動機かもしれませんね。

今回の犯人は「自分から誰かを傷つける気はない」と言う始末。守るための生物兵器であり、核兵器。他の集団と違うのは、それらを用いて事を起こすのではなく、あくまでも守る事を目的としているから。しかし、周りから見れば同じ強大な兵器をもっている集団に過ぎないでしょうし、そんな人々に守られていると言わても良い気はしません。

本作のメッセージに関しては、「国防問題に関して正論など無いかもしれないということかもしれない」とパンフレットにはありました。ただ、正しいか間違いかは言えなくても、「好き」か「嫌い」かで判断することは出来ると思います。たとえ平和ボケと言われようとも、そんな兵器に頼らなければ保てない平和なんて、私は嫌です。もっと他の道があるはず。
いつか、血を吐き続ける悲しいマラソンが終わる日がきっと来る。そう信じて特命係の2人はまた歩き出す・・・


といったところで劇場版Ⅲは終わりでした。ラストの「相棒」の2文字にビクッとしたのは私だけでしょうか(苦笑。なかなかに考えさせられ、面白い映画でもあったのですが、場面切り替わりの写真のフラッシュのような演出に、ちょっとだけ目が疲れました。

ともあれ、新たなシーズンへの期待も寄せつつ、しばらくは再放送の相棒を楽しむとします。
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