1973年頃、JBL社から#4320と云う有名なスタジオモニターSPが出て来た。それ以前はALTEC#612箱(銀箱604E入り)がスタジオモニターSPとして殆どの処で使われていたと云う。
この#4320は「低域」の再現能力で#612を上回っていた。最低再生周波数が40Hz→30Hzぐらいまで下がって来た。#4320SPは#2215ウーハー(LE15A系)と#2420ドライバー(LE85系)の2ウェイで500Hzのクロスで使われていた。後日、ALTEC#612銀箱(604E)を使った事が有るが、#4320の低音を出すのは難しいと感じた。音の傾向も違う。どちらを取るかはユーザーの好みの部分かもしれない。
当時は「プロ用ユニット」は「民生用ユニット」より優れていると雑誌では盛んに紹介されていた。価格も民生用より高く設定されていた。
「本当にそうなのか?」と30年経って、自分で確かめて見た。民生用のLE15Aとプロ用の#2215、2231A、2205を比較すると、プロ用の方は「おいしい音」の部分がざっくりと無くなっていた。測定器が発達して「歪み」として出て来る部分がスパッと切られていた。歪みではなく音の成分の部分までもが削ぎ音されていて、非常にシャープに感じるが、音のうるおいや余韻感に通じる部分が無くなっている。
ドライバーの方も#375(民生用)と#2440、2441、2482、2445等を比較すると、同じ現象を感じた。SS誌の評論家のS氏も#375から#2440に交換して、また直ぐに元の#375に戻している。JBLの1970年以前のSP(民生用)は、周波数特性が表示されていなかったが、プロ用は表示されていた。ただそれだけの事だと私は捉えている。