人の金を預かる怖さ。【投資顧問会社編】 その2

続きます。

投資顧問会社のKMさんに付いては、証券マンの端くれになりたての私でも名前は知っていました。証券界ではチョット名前が知られた人でしたね。

そんな有名人と知り合いのI主任。凄い人だと思いましたよ。支店長なんか出世が早かった事を自慢し威張るだけの人でしたからね。私は絶対の信頼を寄せました。

何たって会社の推奨銘柄は発表と同時に下がりまくるのです。間違って空売り銘柄流しているのかと思うほどです。全然信用できません。
だから自分で株を研究してお客さんに勧めていたんですが、それも限界があります。

実際、私の父は大手証券会社で株の売り買いしていたのですが、そこの証券マンは優秀な方で勧める銘柄も的確に上がります。恥ずかしながら私、彼から客のふりして株の情報聞いて自分の客に勧めていたんです。それだけ私が勤めていた証券会社は駄目だったという事です。

その後、親会社である有名な大手証券会社も潰れましたからね。駄目な会社は駄目って事です。私が勤めていた証券会社も身売りに身売りを重ねて、当時の社員は奴隷状態となり皆辞めてていったようです。

支店長だって遊軍の営業に落されたそうですから、合併される側の金融機関は銀行に限らず悲惨です。私もこの証券会社に残っていたとしても未来は無かったという事ですね。どうもそういう生き方をする星の下に生まれたみたいです。悲しいかな、悲しいかな。

また脱線しちゃいました。話を投資顧問会社経営のKMさんに戻します。

このKMさん、毎日I主任に電話をかけてきました。何度もです。
私は当時新入社員でしたので、電話を取るのは私の仕事です。KMさんの電話を毎日I主任に回していました。

KMさん経営の投資顧問会社はどうも助手と二人で経営している様で、その助手も電話をかけてきます。お二人とも誠実そうな声で対応も丁重です。私もI主任同様、このお二方を信頼するようになってました。
軍隊の連隊長を気取る支店長とはエライ違いでしたからね。尚更そう思っちゃいましたね。

KMさんから伝えられる銘柄は主に仕手株です。仕手株の説明は長くなりますので、ご存知のない方はお手数ですが、ネットでお調べ下さい。

まっ、簡単に言うと、投資顧問会社が仕掛けやすい小さな会社の安定感のない銘柄と言う事です。だから短期で上がるし、あっと言う間に急落する株です。新入社員の私が扱える株ではないと言う事は確かです。それだけ危ない株と言う事ですね。

でもKMさんは毎日の価格を的確に言い当てます。そして確実に利益を出してます。
私は更に陶酔しました。そして私の親にも客にもKMさんの言う株を買わせました。
私も絶対の自信を持って客に勧めていましたので、営業成績も上がりつつありました。

自信が無ければ株なんて勧められません。怖くて勧められませんよ。だから私、客に株を買わせたく無くなっていたのです。

でも今はI主任とKMさんがいる。株の神様が私の味方に付いた。これでもう大丈夫。全て上手く行く。何もかも安心して仕事が出来る。そう思っていました。あの銘柄を買うまでは・・・・・・。


続く。