諦めない奴が一番やっかいだった。
子供の頃にやった喧嘩で、一番記憶に残っているのは、相手をぶちのめした喧嘩でもなく、袋叩きにされた喧嘩でもない。何度唐オても諦めずに立ち上がって向かってくる奴との喧嘩こそが忘れ難い。
なんで喧嘩になったのか分らなかった。最初はふざけていただけだったはずだ。事実互いに笑いながら、パンチを当てあっていた。ところが、何時の間にやら、引き時を失していた。
理由もなく、かなり真面目に殴りあう羽目に陥っていた。戸惑いながらも、身体の痛みが怒りを引き出し、気がつくと本気で殴り合っていた。
理由なくと書いたが、今にして思うと、私の態度に問題があった気がする。子供の頃から小柄で、背の順に並ぶと、だいたい前から5番以内であった。しかし、成長期に入るのがちょっとだけ早く、いつのまにやら中位ぐらいになっていた。その分、態度が大きくなっていたみたいだ。
すぐに追いつかれ、元の順位に落ち着いたが、態度はデカイままだった。しかも自覚していないから始末が悪い。そのせいか、あの頃は妙に喧嘩が多かった。まあ、私も短気で、しかも意気がりたい年頃でもあったのも一因であろう。
基本的には、自分より強そうな奴と喧嘩することを粋に思っていたので、負け喧嘩のほうが多かった。しかし、そのせいで妙に喧嘩馴れというか、喧嘩ずれしてしまい、弱い相手とは本気になれなかった。
弱い相手と見下された奴の気持ちに配慮がなかったことが、その喧嘩の原因だと今にして分る。
ただ、実際に相手は弱かった。子供同士の殴り合いなんて、たいした威力がないので、すぐに組み合って、投げつけ、馬乗りになってボコリ放題。普通はここで負けを認める。
ところが、この相手は諦めない。何度倒れても再挑戦してくる。私に格闘技の技術があれば、落とすなり決めるなりして対応できたのだろうが、その技量はなかった。
繰り返すうちに、私の気持ちが萎えた。私は怒りから殴ることは出来ても、痛めつけ弱らせるために殴り続けることは出来なかった。仕方なく逃げた。勝ち逃げという奴だ。おかげで周囲の評価を下げた。
後日談だが、この相手は高校卒業後にボクサーになり、ランキング入りするほどに強くなったらしい。昔の弱かった頃を知っている私は、ある意味納得している。あの諦めない根性があれば、努力を続けることにより強くなれる。その典型なのだと思う。
私の偏見かもしれないが、ボクサーには2種類いると思う。最初から喧嘩に強くてボクシングに惹かれる奴と、喧嘩には弱いが強くなりたくてボクシングにのめり込む奴だ。
どちらかというと、後者のほうがチャンピオンにはなりやすいようだ。あのマイク・タイソンですら幼少時はいじめられっ子だったらしい。強くなるには動機が必要だ。弱い奴は殴られ虐げられる痛みを知っている。そこから抜け出したいと切望している。だからこそ強さに憧れ、真摯に強くなる努力を続けられる。それが強さの秘訣なのだと思う。
そんな後者の典型が、表題の漫画の主人公だ。喧嘩は好きでないが、強くなりたくて、その想いにかかられて真剣にトレーニングに励み、遂には本当の強さを手に入れる。
70年代は「明日のジョー」80年代が「頑張れ元気」なら、90年代はこの「はじめの一歩」だと思う。時代を代表するボクシング漫画の傑作だ。まだ連載は続く長寿漫画でもある。私が週刊少年マガジンで唯一読み続けている漫画であり、是非とも見事な完結をみせて欲しいものだ。
子供の頃にやった喧嘩で、一番記憶に残っているのは、相手をぶちのめした喧嘩でもなく、袋叩きにされた喧嘩でもない。何度唐オても諦めずに立ち上がって向かってくる奴との喧嘩こそが忘れ難い。
なんで喧嘩になったのか分らなかった。最初はふざけていただけだったはずだ。事実互いに笑いながら、パンチを当てあっていた。ところが、何時の間にやら、引き時を失していた。
理由もなく、かなり真面目に殴りあう羽目に陥っていた。戸惑いながらも、身体の痛みが怒りを引き出し、気がつくと本気で殴り合っていた。
理由なくと書いたが、今にして思うと、私の態度に問題があった気がする。子供の頃から小柄で、背の順に並ぶと、だいたい前から5番以内であった。しかし、成長期に入るのがちょっとだけ早く、いつのまにやら中位ぐらいになっていた。その分、態度が大きくなっていたみたいだ。
すぐに追いつかれ、元の順位に落ち着いたが、態度はデカイままだった。しかも自覚していないから始末が悪い。そのせいか、あの頃は妙に喧嘩が多かった。まあ、私も短気で、しかも意気がりたい年頃でもあったのも一因であろう。
基本的には、自分より強そうな奴と喧嘩することを粋に思っていたので、負け喧嘩のほうが多かった。しかし、そのせいで妙に喧嘩馴れというか、喧嘩ずれしてしまい、弱い相手とは本気になれなかった。
弱い相手と見下された奴の気持ちに配慮がなかったことが、その喧嘩の原因だと今にして分る。
ただ、実際に相手は弱かった。子供同士の殴り合いなんて、たいした威力がないので、すぐに組み合って、投げつけ、馬乗りになってボコリ放題。普通はここで負けを認める。
ところが、この相手は諦めない。何度倒れても再挑戦してくる。私に格闘技の技術があれば、落とすなり決めるなりして対応できたのだろうが、その技量はなかった。
繰り返すうちに、私の気持ちが萎えた。私は怒りから殴ることは出来ても、痛めつけ弱らせるために殴り続けることは出来なかった。仕方なく逃げた。勝ち逃げという奴だ。おかげで周囲の評価を下げた。
後日談だが、この相手は高校卒業後にボクサーになり、ランキング入りするほどに強くなったらしい。昔の弱かった頃を知っている私は、ある意味納得している。あの諦めない根性があれば、努力を続けることにより強くなれる。その典型なのだと思う。
私の偏見かもしれないが、ボクサーには2種類いると思う。最初から喧嘩に強くてボクシングに惹かれる奴と、喧嘩には弱いが強くなりたくてボクシングにのめり込む奴だ。
どちらかというと、後者のほうがチャンピオンにはなりやすいようだ。あのマイク・タイソンですら幼少時はいじめられっ子だったらしい。強くなるには動機が必要だ。弱い奴は殴られ虐げられる痛みを知っている。そこから抜け出したいと切望している。だからこそ強さに憧れ、真摯に強くなる努力を続けられる。それが強さの秘訣なのだと思う。
そんな後者の典型が、表題の漫画の主人公だ。喧嘩は好きでないが、強くなりたくて、その想いにかかられて真剣にトレーニングに励み、遂には本当の強さを手に入れる。
70年代は「明日のジョー」80年代が「頑張れ元気」なら、90年代はこの「はじめの一歩」だと思う。時代を代表するボクシング漫画の傑作だ。まだ連載は続く長寿漫画でもある。私が週刊少年マガジンで唯一読み続けている漫画であり、是非とも見事な完結をみせて欲しいものだ。