ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

現代思想の遭難者たち いしいひさいち

2009-11-04 13:20:00 | 
口に出してしまうと奇異の眼で見られることが多いが、やはり誰でも一度は考えると思う。

人はなんのために生きているのだ?

人智を超えたところに回答を求めると宗教に行き着く。人界にて答を模索すると哲学が待ち受けている。

難病に苦しみぬいた20代の頃、本気で生きることの意義に悩んだ。ただ、十代の頃に宗教団体ともめて以来、神を口にする人間が信用できなくなっていた。だから必然的に哲学の世界を彷徨った。

高校生の頃の倫理社会の授業以来であり、大学では哲学は履修しなかったので、とりあえず著名な哲学者からあたってみた。デカルトに答えはなく、ルソーには胡散臭さを感じ、ホッブスはお門違い。

ここで止めて置けば良かったのだが、なにを思ったのかニーチェに手を出したら、更なる深みにはまり、かえって苦しむことになった。一言助言しておきますが、心が弱っている時には、絶対にニーチェは読まないほうがイイです。

あげくにハイデッガーとかドゥルーズなんぞに手を出したが、難解すぎて訳が分らなくなり、ついに投げ出した。どうも、素人が手を出すべき世界ではないらしい。

ドつぼにはまって、さあタイヘン。いっそ、死ぬのも悪くないなどと思い込んだが、苦しいのは嫌だし、面唐ュさい死に方も嫌だ。後腐れがなく、後始末が簡単そうな死に方はないかしらと図書館で探しているうちに、娯楽系の小説に手を出してしまい、続きが読みたくなって自殺は延期することにした。

こんな私には哲学は似合わないらしい。

私が匙を投げた哲学をギャクの素材にして、しかも四コマ漫画で調理したのが、いしいひさいちだ。こりゃもう、呆れて感服するしかない。

これを読んで哲学の理解の助けになるとは思わないが、或る程度哲学を読破しなければ、これほどの内容の漫画は描けない。いしいひさいち恐るべしである。

しかも謹厳実直な哲学者をギャグのネタにするあたりが、実にいしいひさいちらしい。一筋縄ではいかないギャグ漫画家だと思う。「ののちゃん」しか知らない人は是非とも読んで欲しいです。
コメント (6)
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