いつまでも、あると思うな 親と金。
なんか、妙に記憶に残る言葉だった。この閉塞感漂う世情にあって、親の死による相続財産の存在は、確約された宝くじにも似たものである。
この相続財産をあてにしている人は、かなり多いと思う。ただ、相続に関して妙な誤解をしている人も多く、相続実務に関る身としては、このあたりで少し知識を整理したいと思うので、数回にわけて書いてみようと思います。
相続とは、家族の死によりその財産が無償で遺族に移転することを意味します。ただ、その移転の形には二種類あります。一つは亡くなった人の意思を反映した遺言による相続です。もう一つが、残された家族の話し合いと合意による相続です。
日本ではもっぱら後者の形での相続が一般的です。しかも、その配分は最低限の持分が民法によって決められています。実はこれって世界的にはかなり特殊な相続です。
日本では民法により、相続の権利が保証されています。ただし、その権利を保証しているのは、直系血族を中心とした法定相続人に対してだけです。その背景にあるのが、日本独特の戸籍制度なのです。
私の知る限り、戸籍制度があるのは日本以外では韓国と台湾だけです。つまり、かつての日本の植民地。他の国々では、国家と個人の関係が記録されていますが、国家が家族のあり方を記録したりはしていません。
もちろん、他の国でも家系図はあります。ですが、これはその一族が管理すべきもの、すなわち私的なものであり、家系図を政府が管理している国はほとんどありません。
日本の場合は江戸時代に戸籍による管理が完成していましたから、完全に馴染んだ制度であり、当たり前に思えるかもしれません。しかし、これは世界のほとんどの国々では実施不可能な制度です。
山に分断され、島国として閉鎖された環境にあったからこそ、戸籍制度は実施できたのです。人の移動が激しく、国家自体の存亡も珍しくない大陸では、戸籍制度はやりたくても出来ないのが実情です。
そのため、世界の国々の多くでは遺言による相続が中心です。国家が家族の記録を管理していないので、遺言による以外相続は難しいのです。ただし、部族制度が残っている地域などでは家長や部族の長が相続財産の分配を仕切ることがありますが、これは一部の地域に限られます。
反面、戸籍制度がある日本では、残された遺族を法務局にある戸籍謄本で確認できます。それゆえ、日本の民法は、この戸籍に記載された直近の家族に対して相続財産の移転を保証するかたちになっています。これを法定相続といいます。
一例を上げれば、残された配偶者に相続財産の半分を与え、残り半分を子供たちで均等に配分することになります。離婚により離別した子供がいても、血のつながりがある限り、法定相続分は保証されます。ただし、正式な婚姻によらない子供の場合、仮に認知されたとしてもその相続分は他の子供の半分となります。
次回はこの法定相続分による相続の実情について書く予定です。なお、蛇足ですが私はネット上では仕事をしない主義なので具体的な相談をコメント欄に書かれても、回答は遠慮させていただきます。
なんか、妙に記憶に残る言葉だった。この閉塞感漂う世情にあって、親の死による相続財産の存在は、確約された宝くじにも似たものである。
この相続財産をあてにしている人は、かなり多いと思う。ただ、相続に関して妙な誤解をしている人も多く、相続実務に関る身としては、このあたりで少し知識を整理したいと思うので、数回にわけて書いてみようと思います。
相続とは、家族の死によりその財産が無償で遺族に移転することを意味します。ただ、その移転の形には二種類あります。一つは亡くなった人の意思を反映した遺言による相続です。もう一つが、残された家族の話し合いと合意による相続です。
日本ではもっぱら後者の形での相続が一般的です。しかも、その配分は最低限の持分が民法によって決められています。実はこれって世界的にはかなり特殊な相続です。
日本では民法により、相続の権利が保証されています。ただし、その権利を保証しているのは、直系血族を中心とした法定相続人に対してだけです。その背景にあるのが、日本独特の戸籍制度なのです。
私の知る限り、戸籍制度があるのは日本以外では韓国と台湾だけです。つまり、かつての日本の植民地。他の国々では、国家と個人の関係が記録されていますが、国家が家族のあり方を記録したりはしていません。
もちろん、他の国でも家系図はあります。ですが、これはその一族が管理すべきもの、すなわち私的なものであり、家系図を政府が管理している国はほとんどありません。
日本の場合は江戸時代に戸籍による管理が完成していましたから、完全に馴染んだ制度であり、当たり前に思えるかもしれません。しかし、これは世界のほとんどの国々では実施不可能な制度です。
山に分断され、島国として閉鎖された環境にあったからこそ、戸籍制度は実施できたのです。人の移動が激しく、国家自体の存亡も珍しくない大陸では、戸籍制度はやりたくても出来ないのが実情です。
そのため、世界の国々の多くでは遺言による相続が中心です。国家が家族の記録を管理していないので、遺言による以外相続は難しいのです。ただし、部族制度が残っている地域などでは家長や部族の長が相続財産の分配を仕切ることがありますが、これは一部の地域に限られます。
反面、戸籍制度がある日本では、残された遺族を法務局にある戸籍謄本で確認できます。それゆえ、日本の民法は、この戸籍に記載された直近の家族に対して相続財産の移転を保証するかたちになっています。これを法定相続といいます。
一例を上げれば、残された配偶者に相続財産の半分を与え、残り半分を子供たちで均等に配分することになります。離婚により離別した子供がいても、血のつながりがある限り、法定相続分は保証されます。ただし、正式な婚姻によらない子供の場合、仮に認知されたとしてもその相続分は他の子供の半分となります。
次回はこの法定相続分による相続の実情について書く予定です。なお、蛇足ですが私はネット上では仕事をしない主義なので具体的な相談をコメント欄に書かれても、回答は遠慮させていただきます。