ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

踊る腹のムシ 藤田紘一郎

2009-11-24 17:01:00 | 
分っていても、なかなか出来ないぞ。

近年、寄生虫が見直されている。良くも悪くも見直されている。いや、以前は悪い方だけだった。寄生虫を如何に駆除して、清潔で健康な生活を送ることに重点が置かれていた。

小学生の頃、嫌だった検査の一つにギョウチュウ検査があった。朝、起き抜けにお尻にシールを貼り付け、それを提出するやつだ。一度だけ、ギョウチュウの卵が見つかってしまい、駆除薬を飲んだことがある。その日一日、景色が黄色く思えたもので、嫌な検査だと思っていた。

よく手を洗い、生ものを食べず、十分火を通して食べることが大事だと、保健室の先生に言われたと思う。ただ、よくよく思い出すと、なぜ寄生虫が悪いのかはあまり教わらなかった気がする。

それでも百科事典などに載っている寄生虫の写真は気持ち悪い。こんなのが身体のなかに入っているなんて、とてもじゃないが我慢できない。寄生虫は悪いもんだと信じ込んでいた。

ところが近年、その寄生虫が病気の治療に使われている。花粉症のような軽微なアレルギー疾患を初めとして、難病として知られる潰瘍性大腸炎の治療にもサナダ虫が活用されている。

人間の大腸に寄生したサナダ虫が、自身が寄生しやすいように人間のアレルギー疾患を治癒してしまうのだ。現在その仕組みの解明が医学者によってなされているが、未だ研究途上なのだ。しかし、長年にわたり人類に寄生していたサナダ虫がアレルギー疾患の治療に効果があることは、否定しがたい事実なようだ。

花粉症に悩む私としても、実に興味深い話である。アレルギー疾患だけでなく、ダイエットにも役立つという。大腸に寄生したサナダ虫が栄養を吸い取ってしまうので、努力せずに体重が徐々に減るという。なんと素晴らしい~!しかも、このサナダ虫は寿命が2年半たらず。人体の中では増殖できずに、自然と老衰して死滅する。

この本にも書かれているが、この一見無害なサナダ虫もアフリカなどの貧困国では大問題だ。ただでさえ食糧事情が悪いのに、その上サナダ虫に栄養を取られてしまえば、人間に有害であることは間違いない。

しかし、日本のようにむしろ過食と栄養過多ならば、このサナダ虫の寄生はむしろ有益なのだろう。もっとも、このような安全なサナダ虫は一部の種に限られ、危険な寄生虫のほうが多いのが実情だ。だからこそ、専門家の手を借りて、安全なサナダ虫に寄生してもらいたいではないか。

実際、寄生虫の専門家でもある著者のもとには全国から「サナダ虫を下さい」との要望が相次ぐという。ところが残念なことに、この安全なサナダ虫自体が現在は希少種になりつつあり、滅多に捕獲されないと著者は嘆く。

密かにこのサナダ虫に寄生されることを夢見る、怠け者(努力してダイエットなんかしたくない!)の私にも残念な話である。しかしまあ、寄生虫に寄生されることを夢見るなんて、やっぱり異常だわな。脳に虫でも湧いているのかね?
コメント (10)
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