ヌマンタの書斎

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相続はねぇ その六

2009-11-16 12:32:00 | 経済・金融・税制
本のブログなのに、脱線続きで申し訳ありませんが、もう少しだけ続きます。

相続財産には不動産や預貯金、有価証券、動産などの他に、未払い金やローンといった負債も含まれます。私はマイナスの相続財産と呼んでいます。

注意しなければいけないのは、これらの負債、とりわけ金融機関からの借入は、法定相続人全体が負うべきものとなっています。ですから、誰が借金を負担するのかを協議分割書などに明示しておかないと困ったことになります。

マイナスの相続財産の取得は、債務引受といいます。これには「免責的債務引受」と「重畳的債務引受」の二種類があります。後者は連帯債務の引受になりますから、法定相続人全体で債務を引き受けることを意味します。

たとえば賃貸不動産を建築するために借りたローンがある場合、その賃貸不動産を相続により取得した相続人が、そのローンをも引き受けるのが筋だと思います。このような引受を「免責的債務引受」と言いますが、これには債権者(銀行等貸主)の承認が必要です。

その不動産に担保価値が十分あれば良いのですが、そうでない場合債権者が不安に感じて免責的債務引受を拒否する場合があります。新たな担保を提供するなりして信用力を増さないと、結果的に他の相続人にも債務義務が引き継がれることになるのです。

土地神話が崩壊した今日、遺産よりも負債のほうが巨額な相続もあるのも現実です。

そのような場合に備えて、「相続の放棄」という手段があります。ただし、これは相続の開始を知った日から三ヶ月以内に裁判所に申請しなければなりません。

従いまして、相続が発生した場合には、債務の存在がないかどうかを確認しておく必要があります。多くの場合、ローンを支払っていることを示す証拠書類が残されていますから、領収証や送金記録を探してみることです。

ただ、世の中には性質の悪い連中がいるものです。相続が開始されてから半年以上たって(つまり相続の放棄の期限を過ぎている)から、いきなり現われて借金を返せと喚かれたら、誰でもパニックになろうってものです。

この連中(たいがいが街金や闇金ですね)は交渉を有利に運ぶため、相手を動揺させて自分のペースで進める策を弄します。もう、相続の放棄は出来ないのだから、お前ら相続人が借金を払う義務があると声高に主張してくるのです。

これは嘘ではないので、多くの方がこれに引っかかって泣かされたものでした。しかし、現在は違います。

このような問題に対して裁判所が新しい見解を出し、債務の存在を知った日から三ヶ月以内の相続放棄を認める判決を下しています。ただし、借金がなくなるわけではないく、あくまで相続の放棄ですから、其の点は誤解なきように。

一週間ちかくかけて、長々と相続の話をしてきましたが、次回が最後です。今後の相続についてお話したいと思います。
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