ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

伊豆の踊り子 川端康成

2009-11-02 10:17:00 | 
まずい!電車のなかで欲情してしまった。

しかも、満員の通勤ラッシュの電車のなかだ。折り悪く女性に囲まれている。いくら座っていても、かなり居心地が悪い。なんとかせねば。

こんな時の私の必殺技は「税法暗誦」だ。

「第22条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。第二項 内国法人の各事業年度の所得の・・・」

おかげで気持ちは平静を取り戻した。

厳格なる税法を、このような不埒な手段に使うのは、数多居る税理士のなかでも私だけだろう。

それはともかくも、私をこのような窮地に追いやったのが表題の作品だ。ノーベル文学賞受賞作家たる川端康成の代表作の一つでもある。ほぼ三十数年ぶりの再読なのだが、驚いた。

地面に掘られた穴に向かって叫んでしまうぞ。「川端康成のスケベ~!」

「伊豆の踊り子」だけだと、それほどスケベな印象はない。だが短編集「伊豆の踊り子」の他の作品を読んだ後に、改めて再読すると、スケベな印象が飛躍的に高まる。

初めて読んだのは、中学生の時だと思うが、当時はそれほど扇情的な印象はない。それは、おそらくは私がまだ子供であったのだろう。私は人並みにスケベなつもりだが、いささか晩生であったのは事実なので、当時は川端文学の真骨頂を感じ取れなかったのだろう。

別に川端康成を卑下しているわけではない。性欲が人間の三大本能である以上、その性欲を見事に描き出してることは立派だと思う。

実際、川端先生よく見ている、よく観察している。そしてたっぷりと想像というか妄想をしていると思う。それを平易で簡潔な文章に昇華して書き出す才は凄い。

伊豆での旅行の最中に出会った若い踊り子に欲情をかきたてられた学生が、悶々とした夜を過ごすが、踊り子がまだ子供であることを知った途端に憑き物が落ちたように平静を取り戻す。同時に心の奥底につもり、こびりついた妄執までもが洗い流されてしまう。

その心情、私にも分る。分るが、つくづく思うのは男って単純で、バカだなってこと。いいじゃないか、バカでもさ。そんな愚かさも、人生には必要なのだと、あたしゃ思うね。
コメント (2)
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