ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

世界を見る目が変わる50の事実 ジェシカ・ウィリアムス

2009-11-18 12:11:00 | 
私は知識という名の神の信者だ。

知識は人を変えると信じている。もっとも、その知識は必ずしも人を幸せにするとは限らない。知識というものは、諸刃の刃で使い方次第で、人を傷つけもするし、自分をも傷つける。

また、知識はその量が多いことが有益であるとは限らない。限られた知識を最大限に活用する知恵あっての知識でもある。知識はそれだけでは有用ではなく、その使われ方が問われるものだ。

知識というものは、それを知っているだけでは役に立たないことが多い。だが、知ったことを契機として、人に新たな道を指し示す先導の役割を果たすことは良くある。

知ったが故に心が動かされ、不正を糾す怒りを呼び起こし、社会を変える契機となることは決して珍しくない。その意味で、表題の本は大変に有意義な企画だと思う。

だが、事実誤認というか、認識の底の浅さがあるのが残念だ。またイギリス人が書いた本だけに、イギリスの過去の悪行については、知ってか知らずにか無視していることも、私としては不愉快だ。

困ったことに、この日本版を刊行するにあたって、どうやら日本人編集者の意向が付け加えられたようで、それがまた偏見と自虐が漂うものであることが、どうも鼻につく。

この本のなかで借金のために奴隷化された人々が世界に2000万人いると書かれているが、これを単純に奴隷だと言い切って良いのか疑問だ。騙された借金なら問題だろうが、自ら望んだ借金の返済のため過酷な労働条件を受け入れたケースが相当に含まれていることは、容易に想像がつく。それって奴隷か?

また日本には借金で縛られたフィリピン人女性が売春に従事していると書き記しているが、いったい何時の話だ?過去にいたことは確かだと思うが、今はほとんどいない。借金しても日本で働きたがるフィリピーナなら多数いるが、奴隷とは程遠く、むしろ日本人が振り回されているのが実情だろう。多分、頭でっかちの善良なる日本人の助言によるものだろうが、世間知らずもほどほどにして欲しい。

マスコミの世界には、現場を知らぬ癖に、知ったかぶりをして善意を振りかざす輩が、少なからず横行している事実を図らずも証明している。みっともない!

とはいえ、そのような一方的な善意に基づく事実誤認は一部に留まると思う。現実社会のあり方を、改めて捉えなおす契機には、十分役立つ本だとも思うので、機会がありましたら一読して損はないと思います。
コメント (2)
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