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ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

改革の難しさ

2010-06-24 13:10:00 | 社会・政治・一般
率直に言って不思議でならないのが民主党政権への支持だ。

普天間問題での迷走や母子手当ての財源問題、はたまた高校無償化とやりたい放題だ。私だけでなく、周囲でもこのばら蒔きと迷走には批判が多い。

しかし、だ。にもかかわらず、自民党への支持は増えない。このあたりに民主党支持の秘密があるように思う。

たしかに民主党の政治には信が置けない。しかし、自民党よりはマシではないか。もう二度と自民党政治には戻って欲しくない。そんな庶民感情が民主党支持と自民党への不支持につながっているようだ。

この庶民の反自民党感情を狽チたのが、いわゆる小泉・竹中改革と呼ばれる財務省主導の構造改革だと私は思う。

この改革の背景は、少子高齢化により経済規模が縮小し、これまでよりも政府の収入が減る。その一方で福祉国家への転換を望む声が高まる以上、政府の従来の支出を減らさざる得ないとの財務省の意向を強く反映したものだ。

そうなると必然的に公共工事といった金食い虫の削減につながる。これが長年自民党政権を支えてきた建築土木業界の離反を招いた。私が聞き及ぶ範囲では、彼らこそが最も過激な自民党批判勢力と化している。

竹中がどこまで意図していたのかは不明だが、アメリカ型の経営改革手法の導入は結果的に弱い者を切り捨てることで利益を産みだす仕組みに他ならない。

90年代から始まったグローバリズムとは、アメリカ国内の中産階級から仕事を取り上げて、その仕事を人件費の安い国移転させて、その利益を経営者と株主が山分けする結果となった。必然的にアメリカ企業の株価は上昇したが、経営者を除いた労働者の所得は大幅に減少した。いくら国外から安いアメリカ製品を再輸入したところで、貧困者が増加するのは当然のことだ。

そのやり口を日本でも出来るようにしたのが小泉・竹中改革であり、その結果ワーキング・プアと呼ばれる新たな貧困層を生み出した。小泉氏がそれを意図していたのかは知らないが、改革を下層労働者の切捨てで成し遂げた以上、見かけ上で企業はリストラに成功したとされる。竹中は、それを改革の成果だと賛美する。

たしかにその当時、日本企業の業績は回復の基調にあったことは否定しない。しかし、熟練労働者を切り捨て、使い捨ての派遣労働者に代替したことで、むしろ日本の製造業は弱体化した。日本を経済大国に押し上げた原動力である自動車業界、家電業界は軒並み衰退業種への坂道を転がりだした。

かつてはトップを独走していた日本企業だが、現在は韓国、台湾はもとよりシナにまで脅かされる窮状にある。一方、竹中氏が力を入れていた金融サービスだが、これは製造業以上に内情は悲惨だ。

顧客と接していた女性行員をATMに代替させ、男性銀行員を生命保険と投資信託の営業マンとすることで利益を生み出すことに夢中になった。一方、経済の動脈ともいえる企業融資は減らす一方だ。

融資の判断は、財務分析ソフトに一任させる手法をとったことで、企業と銀行との信頼関係は断絶した。もはやメインバンクなんて言葉は死語と化した。

とりわけ中小企業融資は極端に落ち込んだ。当然である、大企業と異なり中小企業融資は社長個人に融資することに他ならない。つまり人を診る目が銀行に必要とされる。しかし、今の銀行員にそれを求めても無駄だ。もはや、そのような能力はなくなってしまった。

バブルの崩壊で危機的状況に陥った我が国の金融機関を救うはずだった小泉・竹中改革は、たしかにメガバンクを作り出して銀行を救済した。しかし、銀行の能力は結果的に大幅に低くなった。この融資能力が大幅に低下した銀行が、現在の日本経済の足を引っ張っている。

本来、日本企業のレベルを世界水準に引き上げ、21世紀の日本を牽引するような企業を作り上げるはずだった小泉・竹中改革の成果がこれなのだ。

切り捨てられた熟練労働者や、公共事業頼りから転換できずに苦しむ企業が自民党を支持するはずがない。経済の動脈は、銀行の低レベル化により動脈硬化を引き起こして、貸し渋り不況を生み出した。どうして自民党を信じることが出来ようか。

鳩山内閣があれだけ失政を繰り返したにも関らず、自民党への支持は回復しない。これはやはり構造改革路線の失敗に他ならない。

とはいえ、構造改革を必要とする環境に変りはなく、改革が必要であることに変りはない。問題は、改革のやり方に失敗したことだ。

敢えて言いますが、長年日本に慣れ親しんだシステムを変えようとする大改革に乗り出す以上、その言いだしっぺこそが、自ら率先して範を示すべきでした。しかし、しなかった。口先だけで過酷な改革を強要した。だからこそ、改革に抵抗するか、あるいは面従腹背の姿勢で誤魔化された。

結果として小泉・竹中改革は、当初の目論見からは程遠く、反発ばかりが残った。そして、今も自民党はどうしたら良いか分らずにフラフラしている。これでは当面、反日自虐政権が続くのも致し方ない。

夏の参議院選挙は、おそらくは民主は大きく議席数を減らすと思うが、自民もたいして伸びそうもない。自民党は、まず自らの徹底改革をして、改革の範を示すことで有権者の信頼を取り戻すことが必要だと私は思う。
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