本音を隠しての会話は、どこかぎこちない。
8月の夏休みは、ひさびさに沖縄を訪れた。再訪を熱望していた美ら海(ちゅらうみ)水族館に行く途中で、20数年ぶりに警察のネズミ捕りに引っかかった。
50キロの県道を73キロで走ったとのこと。それは事実なのだが、正直言って観光客狙いの警察の小遣い稼ぎの印象は否めない。事実、次々と捕まっているのは、どれも沖縄県外からの観光客のレンタカーばかり。
皆、誰もが憮然としている。かくいう私も、これでゴールド免許ともお別れだと嘆いていた。しかし、まあ、水族館に早く行きたいので、ゴネることなくチャチャとサインして、その場を後にした。
水族館で巨大なジンベイザメや糸巻きエイを眺めながら、カフェで涼んでいると携帯電話に着信がたまっていることに気がついた。私の携帯は常時マナー・モードにしてある上に、鞄の底にほっぽってあるので、気がつくのが遅れた。
しかし、その着信のナンバーは見知らぬ数字。はて、誰だろう?しかも19回着信しているし・・・
留守番電話サービスにも連絡があるようなので、とりあえず録音を聞いてみてビックリ。なんと、さきほど私をスピード違反で捕まえた警察官からで、私の免許証を預かったままなので、取りに来て欲しいとのこと。
完全に失念していた。私は早く済ませて水族館に行きたかったし、警察は警察で沢山捕まえた違反者の処理に追われていたからだと思う。とりあえず、私が名護警察へ伺い受け取る約束だけしておく。
別に慌てることもなく、ゆっくりたっぷり水族館を満喫して、今度は制限速度ギリギリで走って警察へ向かう。ただ、運転しながら、今の私は免許不携帯(道交法違反)だよな?と悩んでいた。
でも、私の免許を預かり、返すのを忘れた警察が悪い。(返還を求めなかった私の過失もあるけどさ)
もし、警察が私の免許不携帯を言い出したら、どう反論してやろうかと頭の中で策を練りながら車を運転する。直に名護警察署へ着き、車を降りて受付に向かう。
事情を説明すると、仏頂面の警官がそこで待つようにと言い放ち、他の部屋へ歩き去った。ところが、なかなか戻ってこない。退屈した私が署内をうろうろとしていると、先ほどの警官が表情を和らげて近寄ってきた。
なんでも私の免許を持っている警官が、今事故現場の応援にいっているので、しばし待って欲しいとのこと。おまけに頼んでもいないのに、冷たいお茶のペットボトルとお菓子まで用意してくれた。
警察で接待を受けるのは、生まれて初めてである。おやおや・・・と思い署内を見渡すと、奥の方で年配の警官たちが集まってなにやら話し合っている。
私は日頃、税務署との付き合いが多く、彼ら役人が規則に囚われる人々であることは知っている。警察もまた役所であることに変りはなく、どうやら私の免許証を返すことを忘れたことは、警察という組織のなかでは、いささか問題があることらしい。
その後、上の階から副署長と呼ばれた人が降りてきて、なにやらヒソヒソと話しているのが見て取れた。この様子からすると、問題を公にするのではなく、内部で穏便に済ませるつもりでいるらしい。
私の目線に気がついたようで、いかにも中間管理職風の警官が私に近寄ってきた。たわいない世間話をしつつ、どうも私の反応を窺っているように思える。
私は私で、免許不携帯で車を走らせたことが問題視されるのかどうかを気にしつつ、気軽に雑談に応じる。お互い腹に含むものがある同志の会話は、どうもぎこちない。
さて、どうしてくれようか。この状況を利用して、なにか有利な条件は引き出せないだろうかとあれこれ悩む。しかし、腹が減った。ここでゴネて、さらに時間をかけるのはあまり得策とは思えない。
第一、バカンスの最中に頭を駆使しての交渉仕事なんかしたくない。スピード違反は事実だし、23キロオーバーはそれほど点数も重くない。もし25キロオーバーだとしたら、点数も罰金もさらにきつい。
実のところ、私は80キロ内外で走っていた。景色がいいので、若干スピードを落としているところを捕まったというのが本当のところだ。むしろ運が良かったと考えるべきだろう。
ゴネるのは止めにして、素直に警官を待つことにした。結局10分ほど待たされて、息弾ませて戻ってきた警官から免許を受け取り、その場を後にする。
この夏の休暇で一番記憶に残ったのは、念願の水族館でもなく、ゴージャスなホテルの食事でもなく、田舎の警察署の受付での十数分であった。もう二度と足を運ぶことはないでしょうがね。
8月の夏休みは、ひさびさに沖縄を訪れた。再訪を熱望していた美ら海(ちゅらうみ)水族館に行く途中で、20数年ぶりに警察のネズミ捕りに引っかかった。
50キロの県道を73キロで走ったとのこと。それは事実なのだが、正直言って観光客狙いの警察の小遣い稼ぎの印象は否めない。事実、次々と捕まっているのは、どれも沖縄県外からの観光客のレンタカーばかり。
皆、誰もが憮然としている。かくいう私も、これでゴールド免許ともお別れだと嘆いていた。しかし、まあ、水族館に早く行きたいので、ゴネることなくチャチャとサインして、その場を後にした。
水族館で巨大なジンベイザメや糸巻きエイを眺めながら、カフェで涼んでいると携帯電話に着信がたまっていることに気がついた。私の携帯は常時マナー・モードにしてある上に、鞄の底にほっぽってあるので、気がつくのが遅れた。
しかし、その着信のナンバーは見知らぬ数字。はて、誰だろう?しかも19回着信しているし・・・
留守番電話サービスにも連絡があるようなので、とりあえず録音を聞いてみてビックリ。なんと、さきほど私をスピード違反で捕まえた警察官からで、私の免許証を預かったままなので、取りに来て欲しいとのこと。
完全に失念していた。私は早く済ませて水族館に行きたかったし、警察は警察で沢山捕まえた違反者の処理に追われていたからだと思う。とりあえず、私が名護警察へ伺い受け取る約束だけしておく。
別に慌てることもなく、ゆっくりたっぷり水族館を満喫して、今度は制限速度ギリギリで走って警察へ向かう。ただ、運転しながら、今の私は免許不携帯(道交法違反)だよな?と悩んでいた。
でも、私の免許を預かり、返すのを忘れた警察が悪い。(返還を求めなかった私の過失もあるけどさ)
もし、警察が私の免許不携帯を言い出したら、どう反論してやろうかと頭の中で策を練りながら車を運転する。直に名護警察署へ着き、車を降りて受付に向かう。
事情を説明すると、仏頂面の警官がそこで待つようにと言い放ち、他の部屋へ歩き去った。ところが、なかなか戻ってこない。退屈した私が署内をうろうろとしていると、先ほどの警官が表情を和らげて近寄ってきた。
なんでも私の免許を持っている警官が、今事故現場の応援にいっているので、しばし待って欲しいとのこと。おまけに頼んでもいないのに、冷たいお茶のペットボトルとお菓子まで用意してくれた。
警察で接待を受けるのは、生まれて初めてである。おやおや・・・と思い署内を見渡すと、奥の方で年配の警官たちが集まってなにやら話し合っている。
私は日頃、税務署との付き合いが多く、彼ら役人が規則に囚われる人々であることは知っている。警察もまた役所であることに変りはなく、どうやら私の免許証を返すことを忘れたことは、警察という組織のなかでは、いささか問題があることらしい。
その後、上の階から副署長と呼ばれた人が降りてきて、なにやらヒソヒソと話しているのが見て取れた。この様子からすると、問題を公にするのではなく、内部で穏便に済ませるつもりでいるらしい。
私の目線に気がついたようで、いかにも中間管理職風の警官が私に近寄ってきた。たわいない世間話をしつつ、どうも私の反応を窺っているように思える。
私は私で、免許不携帯で車を走らせたことが問題視されるのかどうかを気にしつつ、気軽に雑談に応じる。お互い腹に含むものがある同志の会話は、どうもぎこちない。
さて、どうしてくれようか。この状況を利用して、なにか有利な条件は引き出せないだろうかとあれこれ悩む。しかし、腹が減った。ここでゴネて、さらに時間をかけるのはあまり得策とは思えない。
第一、バカンスの最中に頭を駆使しての交渉仕事なんかしたくない。スピード違反は事実だし、23キロオーバーはそれほど点数も重くない。もし25キロオーバーだとしたら、点数も罰金もさらにきつい。
実のところ、私は80キロ内外で走っていた。景色がいいので、若干スピードを落としているところを捕まったというのが本当のところだ。むしろ運が良かったと考えるべきだろう。
ゴネるのは止めにして、素直に警官を待つことにした。結局10分ほど待たされて、息弾ませて戻ってきた警官から免許を受け取り、その場を後にする。
この夏の休暇で一番記憶に残ったのは、念願の水族館でもなく、ゴージャスなホテルの食事でもなく、田舎の警察署の受付での十数分であった。もう二度と足を運ぶことはないでしょうがね。