都会の相続と、田舎の相続は違う。
都会では土地の値段が高いが故に、相続問題は土地問題でもある。土地の評価額があまりに高すぎ、相続税が払えずに止む無く土地を売り払った相続人は少なくない。おかげで、都心の老舗の店舗は激減してしまった。
しかし、地方ではそれほど土地の値段は高くない。だが、地方には創業100年を超すような老舗企業が、今も元気に頑張っている。この会社の株式が相続で問題になる。
証券市場に上場されて市場価格が決まっている企業とは事情が違う。ほとんどの老舗企業は株式を公開していない非上場会社なのだ。
その株式の評価は、財産評価通達に基づいて算定される。しかし、税理士の私が言うのもナンだが、この評価額なんてフィクションに過ぎない。
赤字会社ならともかく、この不況下でも頑張る老舗企業の株価は現実離れして高い。かつて一株5円で設立された某企業が、現在一株100万円を超える高評価になっている場合も珍しくない。
そして、この株を数千、数万株持っている株主が死亡した場合、当然に相続財産として課税対象となる。上場株なら市場に売却して現金化でき、そのお金で相続税を納めることが出来る。
しかし、非上場株式は現金化が出来ない。そのため、相続税が払えず老舗企業の存続が危ぶまれる事態が起きる始末であった。さすがに政府が慌てて株式を発行会社が買い取る(自己株式の取得といいます)ことが商法の改正に織り込まれ、現行の会社法で整備され、とりあえず老舗企業は生き延びることが許された。
ところが、まだまだ問題は終わらない。かつては顔見知りの親族だけが株主であったが、数十年たつと顔も名前も知らない遠い親戚が株主として現われる。そして株主として役員にさせろとか、株を買い取れとか言い出し始める。またしても老舗企業の危機である。
企業経営者にとって最大の悩みは後継者問題であり、同族経営の老舗企業にとって見知らぬ株主の問題は無視できない。だから、なんとしても円滑に株式を後継者に譲りたい。しかし、株価が高すぎて安易に動かせない。
そこで通産省肝煎りで作られたのが事業承継税制だ。なぜに財務省ではなく、通産省なのか疑問に思う向きもあろうかと思うが、要するに役所の縄張り争いの結果だと思って欲しい。まあ、通産省が地方経済を心配し、地方を支える老舗名門企業の存続に配慮したのも事実ではある。
その目的は、老舗企業の存続のため後継者に対し生前の株式の贈与について、一定の制約の下で無税とし、安定した経営が出来るようにするといった措置が講じられている。
ところがだ・・・あまりに煩雑な制約が多すぎる。また不測の事態(親より子が先に死ぬ等)に対する配慮がないなど問題点が多く、私としては首をひねるばかり。
なかでも最大の問題は、この贈与税の納税猶予(条件を満たせば非課税)の正体が生前家督相続、すなわち江戸時代の隠居制度であることです。だから後継者に株を無税で譲りたい経営者は、まだ働けようと、働けまいと引退しなければなりません。まさに戦前の旧・民法752条が復活したといっていい。
私はこの隠居要件に納得ができず、未だこの制度をクライアントに奨める気にはなれません。もしかしたら、贈与税の納税猶予制度を使わせたくない財務省の陰謀ではないかと勘ぐっているぐらいです。
いったい何時から戦前の民法復活を求める声があったのだ?これだから現場を知らぬエリートは度し難いのです。
都会では土地の値段が高いが故に、相続問題は土地問題でもある。土地の評価額があまりに高すぎ、相続税が払えずに止む無く土地を売り払った相続人は少なくない。おかげで、都心の老舗の店舗は激減してしまった。
しかし、地方ではそれほど土地の値段は高くない。だが、地方には創業100年を超すような老舗企業が、今も元気に頑張っている。この会社の株式が相続で問題になる。
証券市場に上場されて市場価格が決まっている企業とは事情が違う。ほとんどの老舗企業は株式を公開していない非上場会社なのだ。
その株式の評価は、財産評価通達に基づいて算定される。しかし、税理士の私が言うのもナンだが、この評価額なんてフィクションに過ぎない。
赤字会社ならともかく、この不況下でも頑張る老舗企業の株価は現実離れして高い。かつて一株5円で設立された某企業が、現在一株100万円を超える高評価になっている場合も珍しくない。
そして、この株を数千、数万株持っている株主が死亡した場合、当然に相続財産として課税対象となる。上場株なら市場に売却して現金化でき、そのお金で相続税を納めることが出来る。
しかし、非上場株式は現金化が出来ない。そのため、相続税が払えず老舗企業の存続が危ぶまれる事態が起きる始末であった。さすがに政府が慌てて株式を発行会社が買い取る(自己株式の取得といいます)ことが商法の改正に織り込まれ、現行の会社法で整備され、とりあえず老舗企業は生き延びることが許された。
ところが、まだまだ問題は終わらない。かつては顔見知りの親族だけが株主であったが、数十年たつと顔も名前も知らない遠い親戚が株主として現われる。そして株主として役員にさせろとか、株を買い取れとか言い出し始める。またしても老舗企業の危機である。
企業経営者にとって最大の悩みは後継者問題であり、同族経営の老舗企業にとって見知らぬ株主の問題は無視できない。だから、なんとしても円滑に株式を後継者に譲りたい。しかし、株価が高すぎて安易に動かせない。
そこで通産省肝煎りで作られたのが事業承継税制だ。なぜに財務省ではなく、通産省なのか疑問に思う向きもあろうかと思うが、要するに役所の縄張り争いの結果だと思って欲しい。まあ、通産省が地方経済を心配し、地方を支える老舗名門企業の存続に配慮したのも事実ではある。
その目的は、老舗企業の存続のため後継者に対し生前の株式の贈与について、一定の制約の下で無税とし、安定した経営が出来るようにするといった措置が講じられている。
ところがだ・・・あまりに煩雑な制約が多すぎる。また不測の事態(親より子が先に死ぬ等)に対する配慮がないなど問題点が多く、私としては首をひねるばかり。
なかでも最大の問題は、この贈与税の納税猶予(条件を満たせば非課税)の正体が生前家督相続、すなわち江戸時代の隠居制度であることです。だから後継者に株を無税で譲りたい経営者は、まだ働けようと、働けまいと引退しなければなりません。まさに戦前の旧・民法752条が復活したといっていい。
私はこの隠居要件に納得ができず、未だこの制度をクライアントに奨める気にはなれません。もしかしたら、贈与税の納税猶予制度を使わせたくない財務省の陰謀ではないかと勘ぐっているぐらいです。
いったい何時から戦前の民法復活を求める声があったのだ?これだから現場を知らぬエリートは度し難いのです。