ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

幽霊世界 PFオルソン他 編

2010-09-06 17:23:00 | 
吸血鬼には大蒜と十字架。

狼男には銀の銃弾。

ゾンビ?撃って撃って撃ちまくれ。こりゃ、ゲームのやりすぎか。でも、とりあえず力づくで倒せるはず。

では幽霊は?

こいつが困る。とりわけ怨念を抱えた幽霊は困る。怨念の原因を解き明かして、その無念を晴らすことだけが、今のところ唯一の解決策だとされている。

怨念はほとんどの場合、人間関係のこじれから生じる。人は愛することを止められないの同様に、憎むことも止められられない。愛憎まみれの人間関係の破綻からこそ、死後にも残る濃厚な怨念が生まれてしまう。

非常に興味深いことに、幽霊に関する話は古今東西を問わず、いかなる人間社会にも存在する。非文明社会だと、その人間的な怨念を悪魔や怪物に転写することで解決を図っている。

一方、文字を使う文明社会では怨念を抱えた幽霊の対処に対する絶対的な処方箋が存在しない。なまじ法律やら制度やらで人間関係を枠にはめているだけに、その枠外のことには対処する方策を持ち合わせていない。

強烈な一神教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教でさえ、幽霊に対する絶対無敵な解決策は持ち得ない。当然だろう、如何なる宗教も人が愛憎塗れて憎しみ合うことを止めることができなかったのだから。

多分、どんなに科学が進んでも幽霊が居なくなることはないと思う。人が人である限り、愛と憎しみを失わない限り、幽霊は不滅なのだろう。

表題の作品は、幽霊を扱ったホラーばかりを集めた短編集だ。17人の作家が紡ぎだす17の幽霊のお話し。暑い夏に背筋を凍らす幽霊の挨拶は如何でしょうか。短編ばかりなので、気軽に読めると思います。

私が気に入ったのは、「兄弟」という一編。なんとなく、優しい気持ちにさせられます。幽霊嫌いな人でも、これだけは読んで欲しいなと思いました。
コメント (1)
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