本能には勝てない。
日本では長いこと映画やTV雑誌や写真のおいて、性器の露出はもちろん、陰毛さえ禁じられていた。私は子供のころから、この制限を馬鹿げたものだと確信していた。
文明人として、性器や性交といったものを隠すことには反対しない。生物の根幹に関ることではあるが、身体や心の成長と成熟に従って知るべきことであり、大人が子供の目から隠すのは生得の智恵だとも思っている。
だが、写真にベタ塗りしたり、フィルムに加工したりするやり方はおかしいと思っていた。制限をかけるなら、販売時の年齢確認を厳格にしたり、入場規制をすればいい。写真や映画そのものに制約をかけるのは、件pに対する侮辱だと思っていた。もっといえば無粋に過ぎる。
なかでも愚かしいと思うのは、性器や陰毛を消せば、淫らな気持ちが起こるのを抑制できると決め付けることだ。バカじゃないかと思う。
露骨に性器を見せ付けられるより、上手に隠されたほうが淫靡であることは少なくない。裸体そのものよりも、仕種や声音、服装のほうが欲情を掻き立てることだって多い。
数年前だが、TVでモーニング娘というアイドルグループに加入した後藤マキとかいう子の色っぽさに驚いた。ダンスの時の手のなまめかしさ、指先の扇情的な動きに見惚れてしまった。
一緒に観ていた大学時代の友人ともども、この娘っ子、なんでこんなに色っぽいのかと盛り上がっていたら、同席していたA嬢から「あんたたち、スケベなオジサンだねぇ」と呆れられた。
そんなこと言ったて、実際色っぽかった。下手なアダルトビデオなんぞよりも、はるかに煽情的だった。ちなみに服装はとりたて色っぽくは無い。あくまでダンスの仕種だけで、あれだけオジサンたちを煽るのだから、たいしたものだ。
性器や陰毛を隠せば、過剰な性的煽情を抑えられると考える安直な官僚的思考が、如何に愚かだか良く分る。私は子供に対して、過剰に性的煽情を抑えたがる大人の事情自体は理解できるが、日本の規制の仕方はあまりに安易過ぎると思う。
日本で子供向け漫画で、スケベな漫画を描き続けてきたのが、表題の作者である永井豪だ。「ハレンチ学園」に始まるHな漫画が子供たちに大人気であったのは確かだ。
そして、PTAをはじめとして健全な青少年育成を願う大人たちから、目の敵にされてきた漫画家の筆頭であるのも確かだ。
だが、永井豪の漫画を子供の時から読み続けてきた私からすると、大人たちの反応はバカらしいの一言に尽きる。そりゃあ、たしかに永井豪の漫画にはHな場面が多く描かれてきた。
でも、その漫画を読んで不健全に性的煽情を受けた子供なんて、私は知らない。どちらかといえば、むしろ馬鹿笑いできるほどのギャグ漫画だと思っていた。
なかでも表題の作品は、ある意味実に辛辣だったとさえ思う。男の本能の強さをこれほど利用した正義のヒロインが他にいようか。男だったら、絶対に目を奪われるぞ。ありゃ、反則攻撃だ!
スケベな漫画だとは思うし、これ読んで馬鹿笑いしていた読者でもあったが、この漫画で過剰に煽情されたことはない。むしろ、男ってバカだよなァとため息ついてしまったぐらいだ。
ちなみに、今でも私はこのバカさ加減が抜けきっていない。だから、久々に再読して、あい変わらすバカ笑いしてしまいました。
やっぱり本能には勝てませんよ。