ここ数年のことだが、クーラーの設定温度は28度にとの宣伝を良く目にする。
率直に言って、室温28度というのは室内だけで仕事する事務系の人たちには適温なのかもしれないが、外回りが多い営業系の仕事をする人たちには迷惑極まりない温度でもある。
ただ、今年は電力不足もあいまって、室温を28度に設定した事業所、家庭は少なくないと思う。この28度の温度を大歓迎している奴等がいる。
それがゴキブリたちだ。
この28度という温度は、彼等ゴキブリ一族にとっては種族繁栄には絶好の適温であるらしい。暑すぎても、寒すぎても良くないらしく、空調機のおかげで28度に保たれた室温は、繁殖には最適の環境だそうだ。
そのせいだろう。私の事務所はビルの5階であり、単なる事務所なので本来、ゴキブリとは無縁のはず。ところが、今年に限っては、事務所のなかでゴキブリを見かけること数度。
おかげでゴキブリ駆除剤を大量に駆使して、排除に手間隙かけねばならなかった。まったくいい迷惑である。ちなみに飲食店は、駆除剤程度では追いつかず、専門の害虫駆除業者に依頼してゴキブリ対策に追われたそうだ。
おかげで、ゴキブリ駆除業者は猫の手もひったくりたいほど多忙を極め、決算ではかなりの黒字を計上しているようだ。まさにゴキブリ様様であるらしい。
ところで、この話を事務所でスタッフにしたところ、クーラーの設定温度は直ちに25度に引き下げられた。彼女たち曰く「たとえ停電になっても、ゴキブリとの共存は嫌です」との旨。
そんな訳で、この暑い夏、私の事務所は25度で過ごさせてもらった。節電意識がないわけではないが、嫌ゴキブリ感情の高まりには抗しきれなかった。
ああ、やっぱり節電は難しい。