白状すると、私には、いわゆる「おたく」の気がある。
もしアニメの「宇宙戦艦ヤマト」に三作目が作られなかったら、私はアニメおたくになっていた可能性は否定できない。ところが2作目で完結したはずなのに、三作目を作りやがった。あまりに商業主義に走ったおかげで、アニメに対して不信感をもち、アニメおたくにはならなかっただけ。
元々、収集癖がある子供だった。いや、子供ならば誰しも昆虫を集めたり、切手を集めたりするものだ。ただ、家が貧しかったので、野山にあるものしか収集できず、また集めても狭い家に置く場所がなかった。
唯一、本というか、読書だけは親公認であったので、文字通り活字中毒の域に達してしまった。おかげで、家は本だらけだ。
今だから分るが、もし家が裕福で、広い部屋があったのなら、多分立派な「おたく」になっていた気がする。元々、興味があることにのみ、異常に集中する性癖があるので、まず「おたく」化は間違いないところだ。
だから、大人になっても子供用玩具などに執着する「おたく」の気持ちが結構理解できる。とはいえ、表題の漫画のなかで活躍している庵野氏には敵わない。上には上がいるものだ。
アニメに興味がない私でも、庵野氏の名前ぐらいは知っていた。しかし、まあ、これほどの「おたく」とは知らなんだ。庵野氏が監督を務めた作品は、ほとんど観てないので適切な評など出来ない。でも、ここまで徹底した「おたく」ならば、相当なものを創るであろうことは容易に想像できる。
バカにするわけではないが、「バカとハサミはつかいよう」であり、「適材適所」なのだろう。そんな立派な「おたく」の方が、美人漫画家として名高い安野モヨコを嫁にしていたとはビックリ。この漫画を読むまで知りませんでした。
読めば思わず吹き出してしまう庵野監督の「おたく」ぶりも笑えますが、それに感化されている作者もなかなかです。転んでもただでは起きないタイプとみた。
自分自身を戯画して漫画を描く漫画家はけっこう多いが、この作品は上手い。けっこう冷静、冷徹に自身を観察しているからこそ、この作品は楽しい。それを受け入れる旦那の懐の深さも好印象ですね。