ヌマンタの書斎

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AE86に思うこと

2014-02-27 15:06:00 | 日記

久しぶりに走っている86を見た。
 
86というのは、トヨタがかつて発売していたスポーツカーでAE86レビン/トレノのことである。1983年に発表された旧車ではあるが、現在もカルト的人気を誇る名車でもある。

1970年代の日本を襲った石油ショックにより、車は大幅な改良を余儀なくされた。エンジンの燃焼効率のアップはもちろん、ダウンサイジング(小型化)による軽量化が進み、少しでも燃費の良い車が求められた。

その改良の一つに前輪駆動タイプの車の普及がある。エンジンを前部に置き、駆動輪を後ろのタイヤとするタイプがそれまで一般的であったが、エンジンを前部に置き、駆動輪を前のタイヤとすることで、車内の広さを実現し、更にエンジンの重さがよりかかる前輪を駆動輪とすることで、より駆動力の伝達を効率化することが可能となり、当然に燃費が良くなった。

ただし、この前輪駆動タイプの車は、多少サスペションンが複雑になり、駆動軸などの構造も複雑化する関係上、車の運転に独特の癖が出てしまう欠点もあった。その点、後輪駆動だとエンジンのパワーを道路に伝えるタイヤと、車の方向性を決めるタイヤを別々にするため、素直な運転が可能になる。それゆえ高級車とスポーツカーは、後輪駆動が求められた。

しかし、ガソリン価格の高騰という現実の前には如何ともし難く、大型の高級車以外の車は、総じて前輪駆動の車とならざるを得なかった。この時代は、スメ[ツカー不遇の時代でもあり、後輪駆動のスポーツカーといえばフェアレディZとRX7くらいであった。いずれも当時で300万円を超える値段であり、若者にはおいそれてと手が出せなかった。

そこへ突如登場したのが、後輪駆動で200万前後で買えたレビン/トレノであった。私の記憶では、発売当初自動車評論家筋の評価は芳しくなかった。実はこの車、ベースとなっていたのはカローラなのだが、前輪駆動となった現行(1983年当時)のカローラではなく、後輪駆動であったひとつ前の世代のカローラのシャシー(車の骨格)を流用していた。

だからその走行性能はあまり芳しいものではないと、多数の自動車評論家は捉えていた。それは間違いではないのだが、安い後輪駆動車を待ち望んでいたユーザーの考えは違った。

彼らは車を自動車工場へ持ち込んで、サスペションやタイヤを交換し、トーションバーやレース用のシートを組み込んで改造を重ねていった。この改造されたAE86は、日本各地の山道、峠道を夜な夜な駆け回り、派手に後輪を滑らせながらコーナリングを楽しむ週末レーサーを急増させた。

以前取り上げた漫画「頭文字D」は、このAE86の人気に火を付けたとされており、それまではレビンが圧涛I人気であったのに、この漫画が出てからはトレノまでもが売れるようになったほどだ。

驚くべきことに、この86人気は海外にも波及していて、カルトな人気を誇っている。しかし、元々既に世代交代した車のシャシーを流用していたため、人気にも関わらず生産期間はあまり長くない。

トヨタはその後、前輪駆動のカローラのシャシーを使った後継のレビン/トレノを発売した。それは確実に性能をアップさせていたが、前輪駆動独特の癖のある操縦性は直せず、前ユーザーからはソッモ?ゥれてしまった。

そんな訳で以来、30年あまりたつが、未だに86の後継車はない。本当のところ、前輪駆動であってもスメ[ツドライブが可能な車は、今ではけっこうある。だが後輪駆動の特徴であったタイヤを滑らせるドリフトを、86ほど簡単に楽しめる車は、ついに発売されることはなかった。

おかげで今や86は幻の名車といっていいほど珍しいものとなってしまった。なにせ、みんなタイヤをドリドリと滑らせる乱暴な運転ばかりしており、しかも危険な走行で事故も少なくないため、現在も普通に走れる86は滅多に見かけなくなってしまった。

私自身、公道を普通に走っている86を見るのは、本当に久しぶりだった。そして気が付いた。

86って、こんなに小さい車だったのか。

私はホンダのFITという小型車に乗っているのだが、目の前を走る86はFITに比べても小さく見えた。これは大切なことだ。小さい車だからこそ、日本の狭い道を自由に駆け抜けることが出来た。小さいからこそ、狭い山道も自在にドリフトが出来た。小型車バンザイである。

実は後輪駆動のスポーツカーならば、現在はマツダのロードスターや、スバルとトヨタの共同開発のBRZなどいくつかある。更には四輪駆動のスバル・インプレッサや三菱のランエボなど獰猛なほど速い車もある。

だが、86ほど気軽に乗れて、お手軽に改良が出来て、楽しめる車はやはりない。カルトな人気はあれども、おそらくトヨタもニッサンもこのような車を販売することはないだろう。なぜなら、今日日の若い人はスポーツカーに対する憧れ以前に、免許さえ持たない人が少なくないからだ。

ホンダ車しか乗らない私でも、ちっとは憧れた名車86は、もう二度と現れないだろうと言わざるを得ないのは、実に残念です。

コメント
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