豪華絢爛にして饒舌、それが希代の漫画家・荒木飛呂彦だと思う。
デビューは私がまだ学生の頃だ。SFとモダンホラーが融合したかのような奇妙な絵柄とストーリーであった「魔少年ビーティ」とそれに続く「バオー来訪者」で、初めて日の目を見た。
当時の週刊少年ジャンプ誌のなかでも、相当に個性的な絵柄で、率直に言って浮いていたと思う。だから「ジョジョの奇妙な冒険」が始まった時も、当初はそれほど人気はなかったと記憶している。
人気が出てきたのは、主人公のジョナサン・ジョースターのライバルのディオが吸血鬼化して超人的な能力を発揮するようになってからだ。このあまりに超絶的な怪物にジョナサンは勝てるのか?
この第一部では、後に話題となった波紋やスタンドといった特殊能力を持たない、ただ単に運動能力に優れただけの普通の人間であるジョナサンに、到底ディオを唐ケるとは思わなかった。
しかし、身体能力以上に諦めない強靭な精神力の持ち主であったジョナサンの爆発的な行動により、奇跡的に勝利する。そして、この戦いから2世紀以上にわたるジョースター家の戦いは始まる。
この作品は、今日に至るまで30年以上にわたって連載が続く。まだか、これほど長く人気が出るとは、まったく予想していなかった。多分、作者本人にもこれほど長く続かせる気はなかったのではないかと思う。
私は第二部が一番好きなのだが、忘れがたいのはやはりこの第一部である。後に「ジョジョ立ち」とまで言われた過剰なポージングはまだなく、説明過剰だとも思える饒舌な科白もそれほどではなく、なにより芸術的とさえ云える過剰な装飾や演出も控えめですらある。
だが、それだけに力強く、雄々しく、野蛮でさえある。にもかかわらず、清々しさや人間の生きることへの賛美に溢れている。ジョジョの奇妙な冒険は、まさにこの第一部からこそ始まった。その意味で原点であり、根幹でもある。
途中からでも読めるマンガではあるが、出来るなら第一部から読んで欲しい。たいへんな大長編ではあるが、読むに値する価値があると思うのです。